2011年11月10日、最高裁は、アスベストにより被害を受けた
退職労働者の団体交渉権を認めるとの判断を示しました。
住友ゴムを退職した労働者が労働組合
「ひょうごユニオン」に加入し、アスベストによる健康被害問題に関して
団体交渉を申し入れましたが、
住友ゴム側が交渉を拒否。
労働組合は、会社の団体交渉拒否は不当労働行為にあたるとして
兵庫県労働委員会に救済申し立てを行いました。
しかし、兵庫県労働委員会は、不当労働行為にあたらないとして請求を棄却。
労働組合は兵庫県労働委員会の命令の取り消しを求めて提訴し、
神戸地裁と大阪高裁において団体交渉権を認める判決が行われていました。
兵庫県労働委員会が上告したため、
司法の場における争いが続いてきましたが、この度の最高裁判決により、
救済申立から5年を経て、ようやく退職者の団体交渉権が認められました。
アスベスト被害者の圧倒的多くは労働者です。
アスベストによる疾病は30年から50年といわれる
長い潜伏期間を経て発症するため、仕事中に吸い込んだアスベストにより
病気を発症した際にはすでに退職していることが多いのです。
これまで一部の会社は、
退職した労働者が団体交渉による問題の解決を求めても、
「雇用関係がない」等を理由に交渉に応じない事案がありました。
そのため訴訟となり問題の解決に長期間を要し、
予後の悪いアスベスト疾患の患者・家族にとって
二重三重の負担が強いられることがありました。
今回の最高裁判決により、会社側は、退職労働者との団体交渉を応諾する義務があること、
退職後であることをもって団体交渉を拒否することは認められないということが
明らかとなったのです。
それは、退職した労働者であっても労働組合に結集し、
団体交渉を通じて問題の解決を行うことが可能であることが明確となったのです。
アスベスト被害者、遺族、元従業員にとって待ち続けた勝利判決です。
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