アスベストにより肺がんを発症したが、国が労災と認めなかったため、労災不支給処分の取り消しを求め争っていた訴訟で、
3月22日、神戸地裁(矢尾和子裁判長)は、「国の不支給処分を取り消す」との原告全面勝訴の判決を言い渡しました。
原告は、港湾において積荷の数量や状態を確認し証明する業務(検数業務)に約20年間従事し、
2006年1月に肺がんで亡くなられたた英さん(神戸市)のご遺族。国側が労災と認めなかった理由は、
「肺内に蓄積された石綿小体が741本しかない」ということでした。
判決では、「石綿曝露作業に10年以上従事しており、
肺組織内に石綿小体が認められるから、認定基準による要件を充足すると認められる」と判断、
「石綿小体数は業務起因性の判断基準ではなく、また仮に、石綿小体数を判断基準において考慮するとしても、
クリソタイル(白石綿)ばく露では妥当しないと解されている」との見解が示されました。
同種の裁判で、本年2月23日に東京地裁は、「ばく露作業10年で肺がんの発症リスク2倍」と判断し、
労災の不支給処分を取り消す判決を出しました。
本来、石綿ばく露作業10年未満の人を救済する目的で設けられた規定を、
10年以上の労働者にも国が求めるようになったため、石綿肺がんの認定基準のハードルが高く引き上げられてしまったのです。
現在、石綿肺がんの労災認定基準の見直しが進められていますが、国は東京地裁判決と神戸地裁判決を真摯に受け止め、
石綿肺がんの被災者をより救済する方向で改正すべきです。
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