6月27日、発症した肺がんを労災と認めなかった国の処分の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が東京高裁で言い渡され、東京地裁に続き労災であると認定されました。同種の裁判では、今年2月に大阪高裁が国側敗訴の判断し示しており、訴訟においてはこの流れがほぼ確定したといえます。
厚生労働省が定める石綿肺がんの労災認定基準は、従事期間が10年以上で、肺内に石綿小体(たくぱく質で包まれた石綿)の本数が1gあたり5000本以上必要とされています。2月の大阪高裁の案件は石綿小体が700本台、今回の東京高裁の案件は1000本台で、国は石綿小体の本数が少ないことを理由に、労災と認めなかったのでした。
奥田隆文裁判長は、「時間の経過で肺内の石綿小体が消失することなどから合理性に問題がある」と指摘したうえで、「肺がん発症は業務に起因し、労災と認められる」と判断しました。同種の事案は、神戸・東京・大阪で4件が係争中ですが、大きな影響を与えることは間違いありません。
アスベストによる中皮腫の死亡者数は毎年1000人を超え、増え続けています。石綿肺がんの患者は中皮腫の2倍ということが知られていますが、石綿肺がんの労災認定者数はここ数年400人前後で推移しています。石綿肺がんの患者が救済されない大きな原因に、現在の労災認定基準が影響しているといえます。国は、大阪高裁・東京高裁の判決を重く受け止め、認定基準の改正に着手すべきだと考えます。
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