アスベストにより肺がんを発症したとして労災申請を行ったが、労働基準監督署が労災と認めなかったため、労災不支給処分の取り消しを求め争っていた訴訟の判決が、11月5日に神戸地裁で言い渡されました。
今回の裁判は、石綿肺がんの労災認定要件とされている胸膜プラークの有無が争点となっていました。アスベスト特有の肺内変化である胸膜プラークの有無を、司法がどのように評価するのか大いに注目されていましたが、工藤涼二裁判長は「胸膜プラークを認めることはできない」との理由で、請求を棄却しました。
世界の医学界においては、「石綿肺がんは中皮腫の2倍」とのコンセンサスが確立しています。しかし、日本では労災として認められている人数は中皮腫より少ないという傾向が続いているのが現状です。私たちはその大きな原因として認定基準のハードルの高さにあると考え、裁判を支援してきました。
胸膜プラークは画像での診断が難しく、画像に写っていない場合でも手術や解剖において確認される事もあります。そのため、石綿に曝露する作業内容を重視し認定するようにと訴えていた訳ですが、裁判長は「国の基準は合理性が認められる」と結論付けました。
原告は「泣き寝入りしている被害者のためにも控訴する」と決意を語っており、石綿肺がんの被災者の救済に向け、私たちも引き続き支援を行ってきます。
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