阪神・淡路大震災から20年を迎えました。
1995年1月17日に発生した震度7の大きな揺れは、一瞬にして建築物に吹き付けられ建材に含有していたアスベストを大気中に飛散させました。また、その後の倒壊建物の解体・撤去作業においてもアスベストは飛散し、環境庁(当時)の観測データでも、平時よりも高い値が記録されています。
近年、解体や復興作業に従事した労働者が、アスベスト疾患のひとつ、中皮腫を発症した事例が5例明らかになっています。震災だけが原因なのか、異論のある事例もありますが、2ヶ月だけ被災建物の復旧作業に携わった男性が発症した事例があり、震災アスベストによる健康被害は否定できません。
アスベストによる疾病は潜伏期間が長いため、震災から20年を超えた今後、健康被害が広がる懸念があります。また、東日本大震災の被災地ではこれから被災建物の解体が本格化するため、阪神・淡路の教訓を伝え、解体に携わった労働者や近隣住民がアスベストにさらされないようにしていかなければなりません。
阪神淡路大震災から20年を迎えるにあたり、「ひょうご安全の日推進県民会議」の助成をうけ、神戸大学人文学研究科倫理創成プロジェクト・立命館大学アスベスト研究プロジェクト・NPO法人ひょうご労働安全衛生センターなどで「震災アスベスト研究会」を立ち上げ、昨春より震災時に飛散したアスベストによる健康被害の予防や情報発信の取り組みを始めました。
その調査活動の報告を兼ね、1月12日、神戸市勤労会館大ホールにおいて、「震災とアスベストリスクを考えるシンポジウム」を開催しました。当日は、県内はもとより近府県より200名の参加がありました。シンポジウムは第2部構成で、第1部は広瀬弘忠氏(東京女子大名誉教授)の基調講演と南慎一郎氏(立命館大学非常勤講師)の基調報告、そして第2部は伊藤明子弁護士をコーディネーターに、大西一男氏(大西内科クリニック院長)、永倉冬史氏(中皮腫じん肺アスベストセンター事務局長)、広瀬氏、南氏をパネリストとして、アスベスト飛散防止と健康管理対策についてパネルディスカッションを行いました。
今後、昨年からの活動を「アスベストリスク 阪神・淡路大震災から20年」としてまとめ、公表する予定です。
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