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登録日雇港湾労働者の石綿損害賠償訴訟
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登録日雇港湾労働者の二遺族が当時従事させていた二企業を相手に全国初の損害賠償訴訟を神戸地方裁判所におこなったのは 2017年9月12日でした。
原告から、同僚証言や当時の就労状況点検簿により、各企業の毎月の港職業安定所への求人総数の提出などを行ってきました。この間の準備書面でのやり取りで、被告ら企業は「登録日雇が自社で働いた記録がない、確認できない。石綿荷役は自社の社員にさせていた」と頑なに日雇の就労事実を否定してきました。
しかし、原告の本人たちは死亡していますが当時の同僚証言や、多くの資料に基づき登録日雇が石綿荷役に従事した事実が明らかにしてきました。
◆二人の石綿ばく露作業は7日と14日
2020年8月5日、神戸地裁の泉 薫裁判長は「石綿関連疾患を発症させるだけの石綿ばく露を認めるのは困難」として請求を棄却しました。
死亡した二人が、石綿荷役に従事した直接的な証拠がないとし、「石綿荷役を行った日数を推認するのが相当」と荷役会社の求人数や石綿取扱量などの各種統計資料から日数を試算しました。その結果、港湾荷役での石綿従事期間をKさんは7日、Yさんは18日と不当認定したのです。そして「労災認定基準にある1年に届かない」として企業責任を認めるには期間が足りないと結論付け、「不法行為又は安全配慮義務違反が成立する前提を欠く」「請求理由がない」と判断したのです。
◆否定のための作文だ
裁判長は、独自の計算方法で、二人の石綿ばく露期間は数日であったと過少に判断。これはあまりにも事実とかけ離れた不当な判断内容と言えます。
登録日雇港湾労働者は、輪番回転紹介での登録番号順に基づいた紹介方法が取られました。これは機械的に1人づつ当日の仕事が割り与えられるのではなく、自分の番号に当たった時に自由に好きな貨物、仕事を選ぶことができたのです。石綿を危険とも知らされず、すすんで50キロの石綿袋を競い合うように選択していったのです。
原告の二名も、港湾労働法に基づいて国の出先機関である神戸港労働公共職業安定所の登録日雇港湾労働者として日々職業紹介を受け、被告ら港湾運送事業者の指揮命令のもとで神戸港に輸入された石綿の荷役に従事しました。その就労先において、石綿ばく露作業に従事した期間が、石綿関連疾患の中皮腫や肺がんを発病し死に至るものであったとして労災認定がされているのです。
◆労災認定が多いのは登録日雇労働者
神戸港において登録日雇港湾労働者は、現行の労災保険で20名、石綿新法の時効救済で1名、合計21人が石綿による疾病で労災認定を受けています。
相手企業では各々一人の労災認定者が公表されています。なぜ、企業常用に労災認定者が少なく、登録日雇に労災認定者が多いのでしょうか。企業常用が何日の石綿荷役をして、登録日雇は数日の石綿ばく露の結果ということでしょうか?裁判長は、この事実をどう判断するのでしょうか?
◆あまりにも実態とかけ離れた判断
これまで企業は、登録日雇港湾労働者に、とりわけ3K職場での嫌われ作業を押し付けてきました。今回の判決は、今後の日雇港湾労働者のアスベスト被害補償問題において、多くの被災者に影響を与えると考えられます。
港湾労働法という法律に基づき、国の出先機関である公共職業安定所に登録をし、職業紹介を受けて、港湾労働に従事したのが登録日雇港湾労働者です。就労先は港湾作業の事業所だけであり、その労働者に仕事をした証明を出せ、出せないから訴えを認めないとは本末転倒。雇用主や職安に立証責任があるのであって、法律と制度の不備が問われなければなりません。
「就労したかどうか分からない」という判決は、企業擁護の判断です。この国は、法治国家であります。法制度の不備を労働者に求めるのは間違いです。
今後、原告は高裁へと場所を移し、控訴審闘争を展開していきます。引き続き、ご支援をお願いします。
*登録日雇港湾労働者とは
昭和41年(66)7月1日施行の「港湾労働法」により、労働力の確保、雇用の安定、福祉の増進を目的に、企業常用、日雇問わず港労働公共職業安定所に登録が義務付けられました。当時の神戸港職安に登録された日雇港湾労働者は3.549人(41年12月末)、企業常用労働者は12.657人(41年7月末)でした。登録した者だけが港湾労働に就くことができる仕組みでした。