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シンポジウムは、毎年11月の「過労死防止啓発月間」に合わせて、過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会を目指し、各都道府県で開催されています。
◆パワーハラスメント防止措置
最初に上出恭子弁護士より、「パワハラ防止法を含めたハラスメント一般について」と題した基調講演がありました。講演では、上出弁護士が労働相談を受ける中で、ハラスメント被害を訴える事案、うつ病等の精神疾患に罹患している事案、精神障害に関する労災請求件数が増加傾向にあると報告されました。
ハラスメント防止法が成立し、労働施策総合推進法の改正が行われ、2020年6月1日から施行されました(ただし中小企業は2020年4月1日以降の施行)。この改正によって、パワーハラスメントを初めて法律で定義したことは意義があり、行為者への措置や被害者への措置は指針ができたことで具体的に取り組めると評価。その一方で、あくまで企業(事業主)を対象にパワハラ防止措置を義務づけるにとどまり、端的にパワハラ行為を禁止していないこと、労働者の権利としてパワハラのない職場で働く権利を定めていないこと、パワハラに関する定義についても不十分であるなど、新たな課題についても訴えられました。
また、「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討報告書」を元に、パワーハラスメントの具体的な内容に関する判例や、パワーハラスメントに該当する行為と判断された判例が紹介されました。ただ、被害を受けた労働者が、裁判をとおして救済を求めるにはハードルが高いと話されました。
「ハラスメントが起きた後にそれがパワハラかどうかというより、ハラスメントというもの自体が起きてはならない。ハラスメントの言動は労働者にとっても、直接言われていない労働者にとっても職場環境を害するという意味ではあってはならない。事業主も労働者も国も防止に向けた取り組みを具体的に進めていく必要がある」とまとめられました。
◆なぜ夫は死ななければならなかったのか
遺族の声として、兵庫過労死を考える家族の会からお二人の話がありました。夫を過労死で亡くした方からは、ご本人の声で強い思いが寄せられましたのでご紹介します。
2017年の朝、ご主人は自宅で眠ったまま亡くなり、死因は心臓性突然死だったそうです。営業職に従事されていたご主人は、「平日休日関係なく働き、帰宅時間は深夜、持ち帰り残業もあり、睡眠時間を削ずりながら働き続けていました。亡くなる最後の1年は周りが話しかけるのも躊躇われる程余裕がなく疲れ果て、亡くなった当日は、仕事道具に囲まれ、死の直前まで仕事をしていたとわかる様子だった」と話されました。
2020年に労災認定され、ご主人は過労死で亡くなったと認められました。その結果、判明したことは、就労中の車での移動時間も労働時間と認められ、多い月で200時間に迫るほどの残業をしていたことでした。あまりにひどい労働時間に愕然とし、「会社が過重労働の認識がありながら働かせていたと知ったときは悔しさで胸がつぶれそうになった」と話されました。
最後に次の言葉で強い思いを訴えられました。
「夫を亡くし3年経ってもどんどん増えていく悲しみに耐えるばかりの日々なのです。本当ならもっと家族の幸せな時間があったはずなのに、どうして息子が友達のパパをうらやましそうに遠くから見ないといけないのか。どうして娘が嬉しかったことの報告を返事のないパパの遺影にしかできないのか。こんな思いをする人がこれ以上増えてほしくありません。過労死防止法ができても残念ながら過重労働で会社から酷使されている人はまだまだ数多く存在しています。労働者は使い捨てではありません。一人ひとりが誰かの大切な家族なのです。どうか近い未来労働者が過労死から守られるような世の中になって欲しい。そして国や経営者は、どんな小さな声も真摯に受け止め過労死の悲惨さを知る努力をして欲しい。適正な労働時間と健全な働き方ができるよう尽力して欲しい」
このほか、兵庫労働局労働基準部監督課長・本田真由美さんから「兵庫県の労働現場の実態」について報告を受け、企業からの事例報告として伊福精密株式会社から「心のバランス・安心できるワークスタイルマインドチェンジで未来のかたちへ」と題して、仕事と生活の調和を可能にする働き方への取り組みなどの報告がありました。