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アスベスト特有のガンである中皮腫は、年々増加傾向にあり、2013年の全国の死亡者数は1,410人となっています。1979(昭和54)年から1994(平成6)年までの間に中皮腫で亡くなられた方は全国2,074人で、1995(平成7)年から2013(平成25)年までの間に亡くなられた方は17,645人、合わせると現時点では日本における中皮腫死亡者数はすでに2万人を超えていると推測できます。
さらに、石綿肺がんを初めとする石綿関連疾患を加えると、全国で1年間に約4,000人以上がアスベストにより亡くなっていると推定され、減少傾向が続く交通事故による全国の死亡者数に迫っています。静かな時限爆弾と言われるアスベストが大量に牙を剥むく時期を迎えているのです。
山陰(鳥取・島根)における中皮腫の死亡者数は、1995(H7)年時点では両県で4名(鳥取3名、島根1名)でしたが、それ以降の2013(H25)年までの死亡者数の合計は鳥取県72名、島根72名となっています。
◆補償されていない被災者・遺族
2005年のクボタショックを契機に補償救済制度が新設され、労災時効の方も補償されるようになりましたが、全国労働安全衛生センター連絡会議の調査によると中皮腫の救済率は72.3%にとどまっています。鳥取県の場合、中皮腫の死亡者数合計72人に対して、救済は49名で救済率は68.1%。島根県の場合は、中皮腫の死亡者数合計72人に対して、救済は18名で救済率は66.7%です。
また、世界の医学界においては、「石綿肺がんは中皮腫の2倍」とのコンセンサスが確立していますが、石綿肺がんの救済率は鳥取県が2.8%(144名に対して4名)で島根県も18.1%(144名に対して26名)という低水準となっています。この間の電話相談を通じて山陰地域の方からの相談にも対応してきましたし、一昨年12月(松江)、昨年7月(倉吉・松江)と12月(米子・出雲)に相談会を開催してきました。山陰地域の特徴は、出稼ぎという形で地元を離れ、大阪・神戸等の工業地帯で働いた際にアスベストにばく露し、再び地元に戻った際に発症するケースです。
冬期間に出稼ぎとして、数ヵ月間だけクボタ神崎工場の構内下請けとして働いた方が、中皮腫を発症し労災認定されたケースや現在肺がんの治療を行っておられるケースも相談から明らかとなっています。他にも、学校を出て数年間だけ広島の大手鉄鋼会社で勤務された方は、地元に帰り調理の仕事をしている際に中皮腫を発症。関東の建築会社で働いていた方が、地元に戻り40台で中皮腫を発症されたケース等の相談も寄せられています。
◆山陰支部設立準備会の開催
こうした状況の中で、患者さんとご家族は孤立しがちとなり、得たい情報もなかなか入手することができずに居られます。この間、山陰(鳥取・島根)地域におけるアスベスト被害者からの相談活動を行ってきましたが、定期的に集まり、情報交換し、相談できる場の必要性について、改めて痛感しているところです。そこで、多くの方からの要望をいただき、全国で16番目となる支部結成へと動き出すこととなりました。
4月4日(土)、米子市文化センターにおいて、山陰支部設立準備会を行いました。すでに広島・山口支部や岡山支部の会員として活動されている方や、これまでの相談会を通じで知り合った方を含め、20名の集まりでした。
「家族の会10年の歩み」をテーマに、パワーポイントを使用したお話があり、その後、鳥取・島根の両県から参加された方々の一人一人の自己紹介を兼ねた発言がありました。島根県から参加された方は、車で3時間30分もかけて来られたとのこと。石綿手帳を取得されている方、これから手帳交付を希望されている方、中皮腫で治療中の患者さん、肺がんを発症し労災申請中の患者さん、ご主人を肺がんで亡くされ労災認定されたご家族…、様々な思いが今回の準備会に寄せられました。
こうした想いをつなげるため、7月には正式に支部発足を目指すことにしています。山陰支部の事務局については、昨年夏の相談会以降ご協力をいただいている「労安センターとっとり」の笠見さんに引き受けていただくことになっています。当センターも全面的にバックアップしていきます。