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アスベストユニオン 広島・呉でアスベスト相談会

2015/01/20
◆企業補償制度の充実に向け

2005年のクボタショックを契機に、アスベストによる健康被害者が日本国内各地で顕在化し、これまで泣き寝入りしていた被害者・遺族が企業に対して補償を求める動きも広がりました。そうした中、200612月、アスベスト製品を製造・販売・使用するあらゆる産業で働く労働者、アスベストを原因として亡くなった労働者の遺族で、アスベストユニオンが結成されました。

組合結成以来これまでに約70社の企業に対して団体交渉を申し入れ、そのほとんどの企業は話し合いに応じ、話し合いを通じて問題の解決が図られてきました。その結果、退職労働者に対するアスベスト健診の実施や、アスベスト被害者に対する企業補償制度の設立・充実が実現しています。


◆被害者の掘り起しと救済は急務

アスベストユニオンは、毎年年明けに定期大会を開催し、合わせてアスベスト健康被害相談会を行ってきした(2014年富山市、2013年富士市、2012年岐阜羽島市…)。今回、アスベスト被害者の掘り起しと救済に向け、117日に広島県呉市において相談会を開催しました。

アスベスト特有のガンである中皮腫は、年々増加傾向にあり、2013年度の全国の死亡者数は1,410人で、これまでの死亡者数の総数がついに2万人を超えました。それに肺がんを初めとする石綿関連疾患を加えると、全国で1年間に約4,000人が亡くなっており、静かな時限爆弾と言われるアスベストが大量に牙を剥むく時期を迎えているといえます。

広島県における中皮腫による死亡者数は、死亡個票における中皮腫の分類が設けられた1995年から最新の2013年までのデーターによると、674人で全国9番目に死亡者が多い県となっています。一方、中皮腫を発症し労災等で補償を受けられた方の総数は514人で、救済率は76.3%(全国センター情報より)となっています。

石綿による肺がんは、中皮腫の2倍というのが医学界では世界的なコンセンサスとなっており、広島県における石綿肺がん死亡者数は1,348人と想定されます。ところが労災等で補償を受けられた方の総数は247人で、救済率は18.3%(全国センター情報より)とかなり低率となっています。


◆短期間でのばく露でも発症、労災認定

この間支援したケースでは、呉の造船所で約4年間働き、船内において電気配線や機器の取り付け作業に従事し、肺がんを発症された方が、昨年秋に呉労働基準監督署から労災と認定されました。短期間でも肺がんを発症し、労災と認められたケースであり、アスベストを取り扱う作業、またその近辺で作業に従事された方でも注意が必要です。

また、福山の鉄工所で約3年間働き、胸膜中皮腫を発症された方が、昨年秋に福山労働基準監督署から労災と認定されました。山陰地方の出身で、学校を卒業後に福山で働き始め、それ以降は全くアスベスト関係ない仕事に従事され、地元に帰り60歳で発症したのでした。若い時期に瀬戸内の重工業に勤務し、年を重ね地元に戻ってから発症するケースも増えています。短期間のアスベスにばく露にも注意が必要なのです。

こうした状況を受け、「広島アスベスト被害対策弁護団」と「働く者の相談室くれ」にもご協力いただき、広まちづくりセンターにおいてアスベスト健康被害相談会を開催することとなりました。


◆補償の隙間救済されない被災者の存在

今回の相談会は、面談と電話による受付を行いました。会場には朝から次々と相談者が来られ、面談者は13組(ご家族で来られる方も複数居られました)、電話による相談は7件(事前、事後を含む)でした。相談会の特徴は、中皮腫を発症されている方2名、肺がんを発症されている方4名からの相談が有り(他にも円型無気肺、びまん性胸膜肥厚の方からの相談あり)、具体的な対応を求められる案件が多かったことです。

また、石綿健康管理手帳を既に取得されている方から、今後の補償問題や健康不安に関する相談が多かったことも特徴です。そうした相談の中で、全く補償されない被災者の存在が明らかとなりました。被災された方は肺炎で入院中のため、奥様と娘さんが相談会に来られました。被災者は、造船所で働き、平成14年に原発性肺がんを発症し、片肺の3分の2を切除する手術を行ったことにより5年後に治癒と診断されました。その後は、石綿健康管理手帳を交付され健康診断を受診されているのですが、「現在入院中であり、何か補償はないのか」という相談でした。

色々とお持ちの資料を拝見すると、石綿小体の計測が行われ25,000 本が検出された記録が出て来たのでした。原発性肺がんで石綿小体が有り、労災認定基準をクリアすることができる案件だったのです。しかし残念なことに、治癒と時効の壁が大きく立ちふさがり、現状では何も補償を受けることができないのです。もっと早く相談会を行っていればと、悔やまれて仕方ありません。

他にも継続してフォローが必要な案件もあり、弁護団と協力しながら補償・救済に全力を上げます。

 

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