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有機溶剤・有害化学物質・感染症記事一覧
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有機溶剤・有害化学物質・感染症
有機溶剤の使用による腸管嚢腫様気腫症
全国2例目の労災認定
2014/11/20
◆はじめに
有機溶剤とは、他の物質を溶かす性質を有する有機化合物をいい、塗装・洗浄・印刷等の幅広い作業で使用されています。その反面、取り扱いを誤ると作業に従事する労働者に障害を与えることがあり、法・規則により厳しい規制が行われています。
今回、第
1
種有機溶剤(
2014
年
11
月
1
日より特定化学物質に格上げ)のトリクロロエチレンを使用し、給油器の部品である銅パイプを洗浄する作業に従事した労働者が発症した「腸管嚢腫様気腫症」という非常に珍しい病気を、加古川労働基準監督署が
10
月
14
日付けで労災と認定しました。トリクロロエチレンによる腸管嚢腫様気腫症の発症は、以前から学会で多く報告されていますが、労災認定は今回の案件が全国で
2
例目です。
◆被災者Aさんについて
被災者の
A
さんは、
2010
年
2
月
1
日より、K産業(明石市二見町)にて働き始めました。担当したのは、給油器の部品である銅パイプを有機溶剤で洗浄する作業でした。勤務形態はフルタイム労働ですが、
6
ヵ月更新の有期雇用で、時給は
850
円です。
A
さんは、
2013
年秋頃から便秘気味になり、ガスがよく出て、トイレが近くなり、粘液も出るようになりました。その為、はりま病院(加古郡播磨町)を受診しましたが原因が分からず、さらにその後も症状が継続するため大腸内視鏡検査を実施したところ、大田博之医師より腸管嚢腫様気腫症(
PCI
)と診断されました。そのため、
6
月
3
日から休職に入り、一旦職場に復帰しましたが、体調が優れず今年
6
月末で会社を自主退職したのでした。
◆Aさんの作業内容について
A
さんの作業担当は、給油器の部品である銅パイプの洗浄作業です。洗浄室(幅
3.5
m×奥行
4.5
m×高さ
3.5
m)に洗浄機が
1
台設置され、
A
さん一人で作業を行っていました。洗浄機は、蒸気洗浄層とトリクロロエチレンが入った浸漬槽に分かれており、直管はトリクロロエチレンの蒸気による洗浄を行い、曲げてあるパイプ等はトリクロロエチレンが入った浸漬槽に漬けて切子を除去した後に蒸気による洗浄を行っていました。
洗浄籠の出し入れは手作業で行い、この際に頭部を洗浄機内に突っ込むことになります。洗浄の数量は、繁忙期(
9
月~
2
・
3
月)は
1
日に
6,000
本~
7,000
本、それ以外に時期は
1
日に
3,000
本~
4,000
本を洗浄していました。
K産業が
PRTR
制度に基づき届け出た資料によると、
2010
年
4
月から
2011
年
3
月までは洗浄剤としてテトラクロロエチレン(第
2
種有機溶剤)を、
2011
年
4
月以降はトリクロロエチレン(第
1
種有機溶剤)を使用していました。
◆作業環境等の問題点について
洗浄槽の上部には、蒸発したテトラクロロエチレンやトリクロロエチレンを冷却して凝縮させる冷却パイプが設置されていたのですが、
A
さんが入社した時から「冷却異常」のランプが点滅し、上司に報告したが改善されないままでした。また、入社後半年間は防毒マスクは支給されず、
A
さんが要求して初めてマスクが支給されるようになりました。ところが、吸収缶の交換は
2
~
3
ヵ月毎という長いスパンでした。さらに、有機溶剤の使用にあたっては発散源対策が必要であり、発散源を密封する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置等を設けなければならないのですが、そうした対策も取られていませんでした。
そのため、有機溶剤健康診断における尿中クロロ酢酸濃度は、
2011
年
9
月は
162
、
2012
年
5
月は
117
、
2012
年
9
月は
450
、
2013
年
5
月は
77
、
2013
年
9
月は
745mg/L
となっており、生物角的許容量
50mg/L
の
1.5
~
1
倍非常に高い数値を示していました。しかし、そのことの重大さについても
A
さんに伝えられていなかったのです。
◆腸管嚢腫様気腫症とトリクロロエチレン
腸管嚢腫様気腫症(
PCI
)は、腸管壁に多数の嚢腫様気腫が発生する大変珍しい病気です。トリクロロエチレンばく露と
PCI
の関連が最初に指摘されたのは
1983
年のこと。その後、学会雑誌に研究結果が報告され、
80
年代からはトリクロロエチレンばく露と
PCI
の間には因果関係があると考えられるようになり、その発症件数は
47
件にものぼっています。
◆労災申請から認定に至る経過について
体調不良は有機溶剤の使用が原因と考えた
A
さんは、
7
月末に個人加盟の労働組合・あかし地域ユニオンに相談。ユニオンと
NPO
ひょうご労働安全衛生センターによるサポートが開始され、合わせて熊谷教授(産業医大)による意見書を加古川署に提出しました。
そして今回、
10
月
14
日付けで、加古川労働基準監督署より、「業務上と判断しました。」との通知が届いたのでした。
◆全国で2例目の労災認定
厚労省の資料によると、トリクロロエチレンによる腸管嚢腫様気腫症の労災認定件数は昭和
53
年~平成
23
年までの間に僅か
1
件(平成
20
年度認定)だけで、今回が
2
例目です。
「作業環境の問題点」で指摘したとおり、
A
さんが作業環境の改善を求めても、十分な対策を取らず放置した責任は重い。
A
さんと同じ作業に従事した労働者(既に退職)や現在同じ作業に従事している労働者、そして全国で有機溶剤・特定化学物質を取り扱う作業に従事する労働者に注意を呼びかけたい。
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有機溶剤とは、他の物質を溶かす性質を有する有機化合物をいい、塗装・洗浄・印刷等の幅広い作業で使用されています。その反面、取り扱いを誤ると作業に従事する労働者に障害を与えることがあり、法・規則により厳しい規制が行われています。
今回、第1種有機溶剤(2014年11月1日より特定化学物質に格上げ)のトリクロロエチレンを使用し、給油器の部品である銅パイプを洗浄する作業に従事した労働者が発症した「腸管嚢腫様気腫症」という非常に珍しい病気を、加古川労働基準監督署が10月14日付けで労災と認定しました。トリクロロエチレンによる腸管嚢腫様気腫症の発症は、以前から学会で多く報告されていますが、労災認定は今回の案件が全国で2例目です。
◆被災者Aさんについて
被災者のAさんは、2010年2月1日より、K産業(明石市二見町)にて働き始めました。担当したのは、給油器の部品である銅パイプを有機溶剤で洗浄する作業でした。勤務形態はフルタイム労働ですが、6ヵ月更新の有期雇用で、時給は850円です。
Aさんは、2013年秋頃から便秘気味になり、ガスがよく出て、トイレが近くなり、粘液も出るようになりました。その為、はりま病院(加古郡播磨町)を受診しましたが原因が分からず、さらにその後も症状が継続するため大腸内視鏡検査を実施したところ、大田博之医師より腸管嚢腫様気腫症(PCI)と診断されました。そのため、6月3日から休職に入り、一旦職場に復帰しましたが、体調が優れず今年6月末で会社を自主退職したのでした。
◆Aさんの作業内容について
Aさんの作業担当は、給油器の部品である銅パイプの洗浄作業です。洗浄室(幅3.5m×奥行4.5m×高さ3.5m)に洗浄機が1台設置され、Aさん一人で作業を行っていました。洗浄機は、蒸気洗浄層とトリクロロエチレンが入った浸漬槽に分かれており、直管はトリクロロエチレンの蒸気による洗浄を行い、曲げてあるパイプ等はトリクロロエチレンが入った浸漬槽に漬けて切子を除去した後に蒸気による洗浄を行っていました。
洗浄籠の出し入れは手作業で行い、この際に頭部を洗浄機内に突っ込むことになります。洗浄の数量は、繁忙期(9月~2・3月)は1日に6,000本~7,000本、それ以外に時期は1日に3,000本~4,000本を洗浄していました。
K産業がPRTR制度に基づき届け出た資料によると、2010年4月から2011年3月までは洗浄剤としてテトラクロロエチレン(第2種有機溶剤)を、2011年4月以降はトリクロロエチレン(第1種有機溶剤)を使用していました。
◆作業環境等の問題点について
洗浄槽の上部には、蒸発したテトラクロロエチレンやトリクロロエチレンを冷却して凝縮させる冷却パイプが設置されていたのですが、Aさんが入社した時から「冷却異常」のランプが点滅し、上司に報告したが改善されないままでした。また、入社後半年間は防毒マスクは支給されず、Aさんが要求して初めてマスクが支給されるようになりました。ところが、吸収缶の交換は2~3ヵ月毎という長いスパンでした。さらに、有機溶剤の使用にあたっては発散源対策が必要であり、発散源を密封する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置等を設けなければならないのですが、そうした対策も取られていませんでした。
そのため、有機溶剤健康診断における尿中クロロ酢酸濃度は、2011年9月は162、2012年5月は117、2012年9月は450、2013年5月は77、2013年9月は745mg/Lとなっており、生物角的許容量50mg/Lの1.5~1倍非常に高い数値を示していました。しかし、そのことの重大さについてもAさんに伝えられていなかったのです。
◆腸管嚢腫様気腫症とトリクロロエチレン
腸管嚢腫様気腫症(PCI)は、腸管壁に多数の嚢腫様気腫が発生する大変珍しい病気です。トリクロロエチレンばく露とPCIの関連が最初に指摘されたのは1983年のこと。その後、学会雑誌に研究結果が報告され、80年代からはトリクロロエチレンばく露とPCIの間には因果関係があると考えられるようになり、その発症件数は47件にものぼっています。
◆労災申請から認定に至る経過について
体調不良は有機溶剤の使用が原因と考えたAさんは、7月末に個人加盟の労働組合・あかし地域ユニオンに相談。ユニオンとNPOひょうご労働安全衛生センターによるサポートが開始され、合わせて熊谷教授(産業医大)による意見書を加古川署に提出しました。
そして今回、10月14日付けで、加古川労働基準監督署より、「業務上と判断しました。」との通知が届いたのでした。
◆全国で2例目の労災認定
厚労省の資料によると、トリクロロエチレンによる腸管嚢腫様気腫症の労災認定件数は昭和53年~平成23年までの間に僅か1件(平成20年度認定)だけで、今回が2例目です。
「作業環境の問題点」で指摘したとおり、Aさんが作業環境の改善を求めても、十分な対策を取らず放置した責任は重い。Aさんと同じ作業に従事した労働者(既に退職)や現在同じ作業に従事している労働者、そして全国で有機溶剤・特定化学物質を取り扱う作業に従事する労働者に注意を呼びかけたい。