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有機溶剤・有害化学物質・感染症
胆管ガンで労災認定 60歳以上では全国初
2014/04/20
◆はじめに
明石市在住の
M
さん(
65
歳)が、東大阪労基署に胆管がんの労災申請を行っていた件で、正式な決定が出ました。
3
月
4
日に開催された厚生厚労省の胆管がん業務上外に関する検討会において、約
8
年間にわたり、
400ppm
を超える塩素系有機溶剤ジクロロメタン単独ばく露が原因で胆管がんを発症したとして、「労災認定すべき」と判断されました。その後、
3
月
11
日付けで東大阪労基署より労災認定となりました。兵庫県在住者では初の認定者になります。
また、胆管がんは高齢者の発症が多いため、
60
歳代以上で労災となったケースは全国で初めてです。
◆きっかけ
2012
年
7
月、「最近、胆管がん発症のニュースをよく聞くが、私も東大阪市内の印刷会社に勤め、昨年、胆管がんの手術をしました。因果関係はあるのでしょうか?」と、センターに相談の電話がありました。問題とされている校正印刷会社
SANYO-CYP
社とは別の印刷会社で、しかもオフセット印刷作業で、胆管がんを発症されたという相談であり、胆管がんの広がりを感じた瞬間でした。
M
さんは、学校卒業後、
1968
年から短期間、大阪のオフセット印刷会社に勤務しましたが、
40
年以上も前のことであり使用していた化学物質についてはわかっていません。その後は、長年、別の職種に就かれていました。再び、印刷業務に就かれたのは
2001
年で、定年までの
8
年間、東大阪市内の印刷会社に勤務されていました。
◆印刷作業内容
勤務は昼夜の
2
交替勤務でした。主な印刷はチラシやカタログで、
1
台の輪転機で
1
勤務あたり最高
15
万枚くらいの印刷業務にあたっていました。工場内には
2
つの建屋があり、それぞれ1階作業場に両面4色刷のオフセット輪転印刷機が各
2
台ずつ設置されていました。
1
台の輪転機は、バトラー
(
フォークリフトでロール紙をセットする紙装着担当
)
、オペレーター、スタバン
(
折り機、製本機担当)の
3
名で作業を行っていました。版換え時にはインキローラーとプランケットを洗浄する必要があり、
3
名の作業者全員で担当していた。また、通常運転時にも印刷機を止めるとトラブルになることが多いので、
1
時間に
1
回程度
1
分間ほど低速回転で自動的にブランケットの洗浄を行っていました。低速で印刷機が稼働して間にブランケットに付いた洗浄剤が紙に付着するため、そこからも洗浄剤が蒸発していました。勤務日により機械のトラブル発生回数に違いはありますが、発生するたびに印刷を中断して手動でブランケットの洗浄を行っていました。長時間印刷機を止めなければならないようなトラブルの際も、メーカーを呼べば費用がかかるため、極力社員で修理するようにと指示され、時間がかかっても修理を行っていました。
◆ブランケットの手動洗浄の溶剤「SSクリーナー」
ブランケットの手動洗浄の溶剤「
SS
クリーナー」にジクロロメタンが含有されていました。使用量は、
2
台の印刷機で
1
週間あたり
1
斗缶
5
~
6
缶も使用していました。
SS
クリーナーは、刷機の横のブランケット手動洗浄剤置場に並べ、作業しやすいように
1
斗缶から蓋のついていない
5
L缶に移し替えていました。作業は、水の入ったバケツに雑巾をつけるように、
5
L缶に入っている
SS
クリーナーにウエスをつけてぼたぼたの状態でインキ汚れを拭き取ります。軍手や素手で作業を行うために手にインキがつきます。汚れた手も
SS
クリーナーで拭き取っていました。通常のブランケットの手動洗浄は、印刷機をゆっくり回転させながら、
SS
クリーナーに浸したウエスでインキをふき取っていました。
さらに、整備、色替え、紙巻き、トラブル発生の時はインキローラーを外して、インキローラーとブランケットの洗浄を行います。一日にトラブルが何度も頻繁に起こることがあり、1勤務で
SS
クリーナー
1
斗缶を使い切ることもありました。
SS
クリーナーに浸したウエスでインキをふき取る際などでは、頭がクラクラしたり、眩暈を感じたりしたそうです。同僚同士で「倒れるな」と声を掛けながら作業を行っていました。
◆最後に
労災申請から1年半以上掛かって、やっと労災認定となりました。この間、厚労省から東大阪監督署に対して何度も資料提供が求められ、その都度、
M
さんに対しては事細かい業務内容まで何度も聞き取りがありました。それだけ困難事例だと言えます。監督署の調査で業者の資材納入伝票が残っており
SS
クリーナーの記載があったこと、産業医大の熊谷先生、関西安全センターの協力、また同僚の証言があったからこそ認定に繋がりました。
M
さんは「臭いのきつい職場だったけれど生活のため家族のために働くしかなかった。この病気とは一生付き合っていくしかない」とやりきれない思いでおられます。「作業されていた人は、正式な有機溶剤名を知らずにいるはず。私と同様の作業に携わって胆管がんを発症された方も労災として認めて欲しい」と、検討会で審査中とされている方を気遣われています。また、さらに疫学調査を進めてほしいとご自身の医学的資料を厚労省に提供されました。
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明石市在住のMさん(65歳)が、東大阪労基署に胆管がんの労災申請を行っていた件で、正式な決定が出ました。3月4日に開催された厚生厚労省の胆管がん業務上外に関する検討会において、約8年間にわたり、400ppmを超える塩素系有機溶剤ジクロロメタン単独ばく露が原因で胆管がんを発症したとして、「労災認定すべき」と判断されました。その後、3月11日付けで東大阪労基署より労災認定となりました。兵庫県在住者では初の認定者になります。
また、胆管がんは高齢者の発症が多いため、60歳代以上で労災となったケースは全国で初めてです。
◆きっかけ
2012年7月、「最近、胆管がん発症のニュースをよく聞くが、私も東大阪市内の印刷会社に勤め、昨年、胆管がんの手術をしました。因果関係はあるのでしょうか?」と、センターに相談の電話がありました。問題とされている校正印刷会社SANYO-CYP社とは別の印刷会社で、しかもオフセット印刷作業で、胆管がんを発症されたという相談であり、胆管がんの広がりを感じた瞬間でした。
Mさんは、学校卒業後、1968年から短期間、大阪のオフセット印刷会社に勤務しましたが、40年以上も前のことであり使用していた化学物質についてはわかっていません。その後は、長年、別の職種に就かれていました。再び、印刷業務に就かれたのは2001年で、定年までの8年間、東大阪市内の印刷会社に勤務されていました。
◆印刷作業内容
勤務は昼夜の2交替勤務でした。主な印刷はチラシやカタログで、1台の輪転機で1勤務あたり最高15万枚くらいの印刷業務にあたっていました。工場内には2つの建屋があり、それぞれ1階作業場に両面4色刷のオフセット輪転印刷機が各2台ずつ設置されていました。
1台の輪転機は、バトラー(フォークリフトでロール紙をセットする紙装着担当)、オペレーター、スタバン(折り機、製本機担当)の3名で作業を行っていました。版換え時にはインキローラーとプランケットを洗浄する必要があり、3名の作業者全員で担当していた。また、通常運転時にも印刷機を止めるとトラブルになることが多いので、1時間に1回程度1分間ほど低速回転で自動的にブランケットの洗浄を行っていました。低速で印刷機が稼働して間にブランケットに付いた洗浄剤が紙に付着するため、そこからも洗浄剤が蒸発していました。勤務日により機械のトラブル発生回数に違いはありますが、発生するたびに印刷を中断して手動でブランケットの洗浄を行っていました。長時間印刷機を止めなければならないようなトラブルの際も、メーカーを呼べば費用がかかるため、極力社員で修理するようにと指示され、時間がかかっても修理を行っていました。
◆ブランケットの手動洗浄の溶剤「SSクリーナー」
ブランケットの手動洗浄の溶剤「SSクリーナー」にジクロロメタンが含有されていました。使用量は、2台の印刷機で1週間あたり1斗缶5~6缶も使用していました。
SSクリーナーは、刷機の横のブランケット手動洗浄剤置場に並べ、作業しやすいように1斗缶から蓋のついていない5L缶に移し替えていました。作業は、水の入ったバケツに雑巾をつけるように、5L缶に入っているSSクリーナーにウエスをつけてぼたぼたの状態でインキ汚れを拭き取ります。軍手や素手で作業を行うために手にインキがつきます。汚れた手もSSクリーナーで拭き取っていました。通常のブランケットの手動洗浄は、印刷機をゆっくり回転させながら、SSクリーナーに浸したウエスでインキをふき取っていました。
さらに、整備、色替え、紙巻き、トラブル発生の時はインキローラーを外して、インキローラーとブランケットの洗浄を行います。一日にトラブルが何度も頻繁に起こることがあり、1勤務でSSクリーナー1斗缶を使い切ることもありました。SSクリーナーに浸したウエスでインキをふき取る際などでは、頭がクラクラしたり、眩暈を感じたりしたそうです。同僚同士で「倒れるな」と声を掛けながら作業を行っていました。
◆最後に
労災申請から1年半以上掛かって、やっと労災認定となりました。この間、厚労省から東大阪監督署に対して何度も資料提供が求められ、その都度、Mさんに対しては事細かい業務内容まで何度も聞き取りがありました。それだけ困難事例だと言えます。監督署の調査で業者の資材納入伝票が残っておりSSクリーナーの記載があったこと、産業医大の熊谷先生、関西安全センターの協力、また同僚の証言があったからこそ認定に繋がりました。
Mさんは「臭いのきつい職場だったけれど生活のため家族のために働くしかなかった。この病気とは一生付き合っていくしかない」とやりきれない思いでおられます。「作業されていた人は、正式な有機溶剤名を知らずにいるはず。私と同様の作業に携わって胆管がんを発症された方も労災として認めて欲しい」と、検討会で審査中とされている方を気遣われています。また、さらに疫学調査を進めてほしいとご自身の医学的資料を厚労省に提供されました。