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労災職業病・安全衛生の取り組み
石綿肺がん 労災不支給処分取消し訴訟 神戸地裁で労災と認定
2012/04/20
◆概要
アスベストにより肺がんを発症したが、国が労災と認めなかったため、労災不支給処分の取り消しを求め争っていた訴訟で、
3
月
22
日、神戸地裁(矢尾和子裁判長)は、「国の不支給処分を取り消す」との原告全面勝訴の判決を言い渡した。
◆事件の経過
H
さんは、港湾荷役において積荷の数量や状態を確認し証明する業務(検数業務)に、約
20
年間従事し、
2006
年
1
月
10
日に肺腺がんで亡くなられた。神戸港は日本でも有数の石綿を荷揚げする港で、日本の石綿輸入量がピークである
1976
年には、全輸入量の約
40
%を神戸港が占めていた。石綿が入った袋は、神戸港に着くまでに手カギをかけて運ばれ、また輸送中の荷崩れによって破損するなど、石綿粉じんが大量に発生し飛散する状態であった。さらに、その袋を荷役作業員が手カギを用いて艀に移す作業を行うのだが、検数作業はその傍らで行うため大量の石綿粉じんをばく露することになった。
H
さんは、ご生前中に神戸東労働基準監督署へ労災申請を行ったが、神戸東署は
2006
年
7
月に不支給処分を決定し、その後の審査請求も、さらに労働保険審査会も請求を棄却した。国側が労災と認めなかった理由は、「肺内に蓄積された石綿小体が
741
本
/
gしかない」ということであった。
◆石綿肺がんの労災認定基準
石綿による肺がんの認定基準(
2006
年
2
月基準)は、①石綿肺、②胸膜プラーク+石綿ばく露作業
10
年以上、③石綿小体又は石綿繊維+石綿ばく露作業
10
年以上、④
10
年未満であっても胸膜プラーク又は一定量以上の石綿小体(
5,000
本以上)、石綿繊維(
1
μ
m500
万本以上、
5
μ
m200
万本以上)が認められるものは本省協議、となっていた。ところが、厚生労働省は、
2007
年
3
月
14
日付で事務通達を発し、「石綿ばく露作業
10
年以上であっても、石綿小体
5,000
本以上なければ不支給」とする運用を始めたのであった。石綿ばく露作業
10
年未満の人を救済する目的で設けられた規定を、
10
年以上の労働者にも求めるようになったため、石綿肺がんの認定基準のハードルが高く引き上げられてしまったのである。
◆裁判で争われたもの
石綿肺がんの労災認定基準は、内外の知見を踏まえ、肺がんの発症リスクを
2
倍以上に高める石綿ばく露量があれば、石綿を原因とみなすとなっている。国は「石綿小体が
741
本
/
gしかない」との理由で、石綿が原因ではないと判断したわけであるが、逆に「石綿小体が
741
本
/
g」なら肺がんの発症リスクが
2
倍以下なのかということが、本裁判で争われたのである。
原告側は、
10
年ばく露が認められれば、発症リスクが
2
倍になるとするのが認定基準の趣旨なので、それを認めるよう主張した。被災者は、検数作業は船内において石綿粉じんが大量に飛散する状態の中での作業であり、約
20
年間のばく露作業は発症リスク
2
倍に十分該当すると主張した。
また、被災者の元同僚のうち
3
名が石綿肺がんと認定されており(被災者よりばく露期間が短い方もおられる)、本件の証人として出廷し「雪が降り注ぐ様な状態で石綿が舞っていた」と証言されたAさんご自身も、証人調べの後で石綿肺がんを発症されたのである(本年
2
月に労災認定)。さらに、元同僚
8
名についても石綿による胸膜プラークの所見が認められるなど、いかに大量の石綿粉じんを吸引する作業環境であったかを立証した。
アスベストは、角閃石系石綿(青石綿・茶石綿等)と蛇紋岩系石綿(白石綿)に大別される。アスベストの特徴として、角閃石系石綿に比べ白石綿は、石綿小体を形成しにくく、時間の経過とともに肺外へと排出される。こうした点からも、原告は、被災者がばく露した石綿は白石綿が中心であり、本数のみで正確な判断はできないと主張した。そして、医学的検討会を経ずに発出された「裏通達」の不当性を訴えたのである。
◆東京裁判も処分取消し(2月23日)
現在、国による石綿肺がんの不支給処分取り消しを求め、全国で
7
件(東京
3
件、神戸
4
件)の訴訟が行われている。その内の
1
件の判決が、
2
月
23
日に東京地裁で言い渡された。原告は、新日本製鉄の技術者で、
11
年
5
ヵ月間石綿ばく露作業に従事し、肺がんを発症された方である。石綿小体が
1,230
本であったために、労災と認められなかった案件である。
東京地裁は、
10
年ばく露で肺がん発症リスク
2
倍とするのが認定基準の趣旨であり合理的であるとし、職病性石綿ばく露の可能性が高い石綿小体が認められ、喫煙・遺伝などの他の原因の関与も認められないことから、業務に起因すると認めたのである。
しかも、
2007
年通達は、「救済範囲を狭める」として「救済既定の趣旨に反する」と判断したのであった。
◆神戸地裁の判断
神戸地裁は、本件の争点を、①業務起因性の判断基準及び②石綿ばく露状況の
2
点であるとして判断を行った。
まず、①に関しては、「リスクを
2
倍以上に高める石綿ばく露の指針として、石綿ばく露作業に
10
年以上従事した場合については、石綿ばく露があったことの所見として肺組織内に石綿小体又は石綿繊維が存在すれば足り、その数量については要件としない」と判断し、
2007
年通達について「救済範囲を狭めることとなる内容」との見解を示し、さらに
2006
年認定基準の趣旨に反すると断じた。
また、「石綿小体数は業務起因性の判断基準ではなく、また仮に、石綿小体数を判断基準において考慮するとしても、クリソタイル(白石綿)ばく露では妥当しないと解されている」との見解も示された。
次に、②に関しても、認定基準が定める石綿ばく露作業に該当し、
10
年以上に渡り従事していることが認められると判断。そして、「石綿ばく露作業に
10
年以上従事しており、その肺組織内に石綿小体の存在が認められるから、本件疾病の発症について、平成
18
年認定基準による本件要件を充足するものと認めるのが相当である」とし、「本件処分は違法であり、取り消しを免れない」と判断したのであった。
◆国は判決を真摯に受け止めよ
裁判長が判決を朗読し始めると、「勝った?」「勝った!」の声が法廷内に拡がった。そして、「よかった!」の声と手を握り合い、喜び合う姿が法廷内で繰り返された。
その後、会場を婦人会館へと移し、マスコミへの記者会見と支援者への報告集会が同時に行われた。原告からは、「ありがたい判決。主人が助けてくれたのだと思う」と感想がのべられた。ちなみに、判決日の
3
月
22
日は則雄さんの誕生日であった。
東京地裁判決と今回の判決を、国は真摯に受け止め、石綿肺がんの認定基準の改正に反映させるべきであった。ところが、こうした判決を無視するかの如く、
3
月
29
日付けで認定基準の変更を行った。しかも、これまでの認定基準に定められていた「石綿小体又は石綿繊維+石綿ばく露作業
10
年以上」の項目を無くすという改悪を行ったのである。
国側は争う姿勢を崩しておらず、東京裁判に続き、英さんの件についても
4
月
4
日に控訴した。石綿肺がんを巡る問題は、これから東京高裁と大阪高裁での争いとなる。しかし、
2
件の勝利判決は、係争中の裁判に大きな影響を与えることは間違いない。石綿肺がんの被災者を救済するために、さらなるご支援とご協力を引き続きお願いしたい。
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アスベストにより肺がんを発症したが、国が労災と認めなかったため、労災不支給処分の取り消しを求め争っていた訴訟で、3月22日、神戸地裁(矢尾和子裁判長)は、「国の不支給処分を取り消す」との原告全面勝訴の判決を言い渡した。
◆事件の経過
Hさんは、港湾荷役において積荷の数量や状態を確認し証明する業務(検数業務)に、約20年間従事し、2006年1月10日に肺腺がんで亡くなられた。神戸港は日本でも有数の石綿を荷揚げする港で、日本の石綿輸入量がピークである1976年には、全輸入量の約40%を神戸港が占めていた。石綿が入った袋は、神戸港に着くまでに手カギをかけて運ばれ、また輸送中の荷崩れによって破損するなど、石綿粉じんが大量に発生し飛散する状態であった。さらに、その袋を荷役作業員が手カギを用いて艀に移す作業を行うのだが、検数作業はその傍らで行うため大量の石綿粉じんをばく露することになった。
Hさんは、ご生前中に神戸東労働基準監督署へ労災申請を行ったが、神戸東署は2006年7月に不支給処分を決定し、その後の審査請求も、さらに労働保険審査会も請求を棄却した。国側が労災と認めなかった理由は、「肺内に蓄積された石綿小体が741本/gしかない」ということであった。
◆石綿肺がんの労災認定基準
石綿による肺がんの認定基準(2006年2月基準)は、①石綿肺、②胸膜プラーク+石綿ばく露作業10年以上、③石綿小体又は石綿繊維+石綿ばく露作業10年以上、④10年未満であっても胸膜プラーク又は一定量以上の石綿小体(5,000本以上)、石綿繊維(1μm500万本以上、5μm200万本以上)が認められるものは本省協議、となっていた。ところが、厚生労働省は、2007年3月14日付で事務通達を発し、「石綿ばく露作業10年以上であっても、石綿小体5,000本以上なければ不支給」とする運用を始めたのであった。石綿ばく露作業10年未満の人を救済する目的で設けられた規定を、10年以上の労働者にも求めるようになったため、石綿肺がんの認定基準のハードルが高く引き上げられてしまったのである。
◆裁判で争われたもの
石綿肺がんの労災認定基準は、内外の知見を踏まえ、肺がんの発症リスクを2倍以上に高める石綿ばく露量があれば、石綿を原因とみなすとなっている。国は「石綿小体が741本/gしかない」との理由で、石綿が原因ではないと判断したわけであるが、逆に「石綿小体が741本/g」なら肺がんの発症リスクが2倍以下なのかということが、本裁判で争われたのである。
原告側は、10年ばく露が認められれば、発症リスクが2倍になるとするのが認定基準の趣旨なので、それを認めるよう主張した。被災者は、検数作業は船内において石綿粉じんが大量に飛散する状態の中での作業であり、約20年間のばく露作業は発症リスク2倍に十分該当すると主張した。
また、被災者の元同僚のうち3名が石綿肺がんと認定されており(被災者よりばく露期間が短い方もおられる)、本件の証人として出廷し「雪が降り注ぐ様な状態で石綿が舞っていた」と証言されたAさんご自身も、証人調べの後で石綿肺がんを発症されたのである(本年2月に労災認定)。さらに、元同僚8名についても石綿による胸膜プラークの所見が認められるなど、いかに大量の石綿粉じんを吸引する作業環境であったかを立証した。
アスベストは、角閃石系石綿(青石綿・茶石綿等)と蛇紋岩系石綿(白石綿)に大別される。アスベストの特徴として、角閃石系石綿に比べ白石綿は、石綿小体を形成しにくく、時間の経過とともに肺外へと排出される。こうした点からも、原告は、被災者がばく露した石綿は白石綿が中心であり、本数のみで正確な判断はできないと主張した。そして、医学的検討会を経ずに発出された「裏通達」の不当性を訴えたのである。
◆東京裁判も処分取消し(2月23日)
現在、国による石綿肺がんの不支給処分取り消しを求め、全国で7件(東京3件、神戸4件)の訴訟が行われている。その内の1件の判決が、2月23日に東京地裁で言い渡された。原告は、新日本製鉄の技術者で、11年5ヵ月間石綿ばく露作業に従事し、肺がんを発症された方である。石綿小体が1,230本であったために、労災と認められなかった案件である。
東京地裁は、10年ばく露で肺がん発症リスク2倍とするのが認定基準の趣旨であり合理的であるとし、職病性石綿ばく露の可能性が高い石綿小体が認められ、喫煙・遺伝などの他の原因の関与も認められないことから、業務に起因すると認めたのである。
しかも、2007年通達は、「救済範囲を狭める」として「救済既定の趣旨に反する」と判断したのであった。
◆神戸地裁の判断
神戸地裁は、本件の争点を、①業務起因性の判断基準及び②石綿ばく露状況の2点であるとして判断を行った。
まず、①に関しては、「リスクを2倍以上に高める石綿ばく露の指針として、石綿ばく露作業に10年以上従事した場合については、石綿ばく露があったことの所見として肺組織内に石綿小体又は石綿繊維が存在すれば足り、その数量については要件としない」と判断し、2007年通達について「救済範囲を狭めることとなる内容」との見解を示し、さらに2006年認定基準の趣旨に反すると断じた。
また、「石綿小体数は業務起因性の判断基準ではなく、また仮に、石綿小体数を判断基準において考慮するとしても、クリソタイル(白石綿)ばく露では妥当しないと解されている」との見解も示された。
次に、②に関しても、認定基準が定める石綿ばく露作業に該当し、10年以上に渡り従事していることが認められると判断。そして、「石綿ばく露作業に10年以上従事しており、その肺組織内に石綿小体の存在が認められるから、本件疾病の発症について、平成18年認定基準による本件要件を充足するものと認めるのが相当である」とし、「本件処分は違法であり、取り消しを免れない」と判断したのであった。
◆国は判決を真摯に受け止めよ
裁判長が判決を朗読し始めると、「勝った?」「勝った!」の声が法廷内に拡がった。そして、「よかった!」の声と手を握り合い、喜び合う姿が法廷内で繰り返された。
その後、会場を婦人会館へと移し、マスコミへの記者会見と支援者への報告集会が同時に行われた。原告からは、「ありがたい判決。主人が助けてくれたのだと思う」と感想がのべられた。ちなみに、判決日の3月22日は則雄さんの誕生日であった。
東京地裁判決と今回の判決を、国は真摯に受け止め、石綿肺がんの認定基準の改正に反映させるべきであった。ところが、こうした判決を無視するかの如く、3月29日付けで認定基準の変更を行った。しかも、これまでの認定基準に定められていた「石綿小体又は石綿繊維+石綿ばく露作業10年以上」の項目を無くすという改悪を行ったのである。
国側は争う姿勢を崩しておらず、東京裁判に続き、英さんの件についても4月4日に控訴した。石綿肺がんを巡る問題は、これから東京高裁と大阪高裁での争いとなる。しかし、2件の勝利判決は、係争中の裁判に大きな影響を与えることは間違いない。石綿肺がんの被災者を救済するために、さらなるご支援とご協力を引き続きお願いしたい。