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パワハラ・うつ病・精神疾患
JR脱線事故の救護 PTSDを発症した看護師の労災請求を棄却
2011/08/20
◆概要
2005
年に起きた福知山線車両脱線事故で、多数の負傷者が搬送された病院において救急救命活動に携わり、PTSDを発症したとして看護師のMさんが労災認定を求めた訴訟の判決が、
7
月
2
日に神戸地裁であった。矢尾和子裁判長は、「事故現場に赴いておらず、救急医療で一般に生じる体験しかしていない」として、請求を棄却した。
◆現場の外にも被害者はいる
2005
年
4
月
25
日に発生したJR福知山線列車脱線事故は、多くの死傷者を出す大惨事であった。乗客
580
人、負傷者
461
人のうち救急搬送を受けた者は約
400
人に上り、そのうち最多の
113
人を兵庫医科大学病院が受け入れた。その兵庫医大において救急救命業務に従事し、搬送された多数の患者の看護にあたり、報道される映像や患者の事故体験を聞くことにより、MさんはJR事故の疑似体験をし、
PTSD
を発症した。
救命業務に従事した看護師の中にもJR事故の被害者が居ることを知って欲しく、Mさんは西宮監督署に労災申請を行った。しかし、監督署は、「事故を直接目撃したわけでなく、極度の長時間労働も認められない」「搬送患者の看護にあたる作業は、看護師として本来業務である」と心理的負荷強度は「Ⅰ」と判断し、総合評価も「弱」であると、
07
年
3
月に業務外の決定が出された。不服を申立てた審査請求についても
08
年
6
月に棄却の決定が出された。そのため、不支給処分の取り消しを求め、
08
年
11
月
18
日に神戸地裁に提訴したのであった。
◆野戦病院のような状況での発症
争点の一つは、Mさんが発症した精神障害は
PTSD
であるか、という点であった(Mさんが適応障害を発症した点については、争いはなかった)。兵庫医大の救急診察室は、普段は重症患者の受け入れは
2
名までとし、
3
人目の受け入れは断っていた。しかし、事故当日はトリアージによって重症と判断された
12
人もの重症患者を受け入れることとなった。室内は、負傷者を搬送するために使用されたと思われる列車の優先座先が置かれて、多くの医師や看護師が処置にあたっていたため騒然とした状態となり、まさに「野戦病院」のような状況であった。
Mさんは、事故の最後の救出者である女性患者を担当した。筋挫滅症候群等により、下肢を切断する手術が行われたにもかかわらず、救命することができず非常に残念であるという感情を抱いた。
また、親子で事故に巻き込まれた若い女性患者から、車両内で母親が患者の下敷きとなり、途中で母親との話ができなくなったことなどの沈痛な訴えを聞いた。他にも、傷ついた患者や家族の話を聞き、身体的・精神的な痛みに強く共感したのであった。
Mさんは、事故後の野戦病院のように混乱した状態で看護業務に従事したことにより外傷性ストレスを、そして負傷した人たちと接することにより二次的外傷性ストレスを受けたのであった。
◆「PTSDではなく適応障害である」
判決では、「搬送されて来る負傷者に対して処置等を行っていたのであり、……事故現場そのものや事故現場における凄惨な状態の負傷者を目撃するわけではないから、……
PTSD
を発症させるような外傷体験に遭遇したとまでは認められない。」とし、「確かに、本件脱線事故当日は、通常時よりも多数の患者を受け入れており、……原告が本件センターで経験していた勤務状況とは異なっていたことが認められる。」としながらも、「
ICD
-
10
の
PTSD
診断基準である『ほとんど誰にでも大きな苦悩を引き起こすような、例外的に著しく脅威的な、あるいは破局的な性質をもった、ストレスの多い出来事あるいは状況』であったとはいえない」と判断した。
そして、Mさんが発症した精神障害は、
PTSD
ではなく、適応障害であるとしたのであった。
◆「強度はⅡ、総合評価は中」
争点の二つ目は、Mさんが発症した精神障害は、業務に起因するものであるか否かという点であった。
判決では、精神障害等の労災認定についての「判断指針」を持ち出し、「その内容も合理性を有するものと認められる」として、「判断指針に則して、原告の適応障害発症前の業務による心理的負荷の強度について判断する」とした。まず、Mさんが看護リーダーになった点を、「身分の昇格・昇進があった」に該当するとして強度「Ⅰ」。事故当日におけるMさんの勤務を、「仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった」及び「勤務・拘束時間が長時間化する出来事が生じた」に該当するとして強度「Ⅱ」と判断した。そして、「仮に、『悲惨な事故や災害の体験(目撃)をした』に該当すると考えた場合、その心理的負荷の強度は『Ⅱ』である。」との見解を示した。ちなみに、原処分庁の判断は「Ⅰ」であった。
そして、強度の修正については、「原告が本件脱線事故当日に行った処置自体は今までに経験したものと同内容のものであったと認められる」「勤務時間の長時間化の出来事は脱線事故の当日
1
日限りである」として、修正すべき要因は認められないとした。
総合評価についても「中」であると判断し、「原告の適応障害の発症は、原告の業務に起因するものとは認められない」として、棄却としたのであった。
◆惨事ストレスの救済の為に
裁判においてMさんは、事故当時の状況を証言した。車両のシートに乗せられ運ばれてくる患者さん、普段受け入れている人数を大幅に超えて運ばれてくる患者さん、しかも経験したこともない重症の患者さんたちの姿。傍聴席の誰もが想像できるほどの生々しく、そして詳細な証言であり、まさに野戦病院といっていい状態であった。裁判長は厚生労働省の認定基準に該当しないとして棄却したが、認定基準に該当するかどうかは労働基準監督署の仕事である。現在の労災認定基準にも様々な問題があり、改正にむけての検討会が開かれている最中だけに、現行の労災認定基準が「その内容も合理性を有するものと認められる」として判決が言い渡されてことは残念で仕方ない。
JR福知山線列車脱線事故をめぐり医療関係者が労災認定を求めた初めての裁判であり、東日本大震災でも負傷者を救護する側の心のケアが課題となる中での判決であり、注目されていた。Mさんは現在、オーストラリアで療養中であり、松丸弁護士が電話で判決内容を伝えると「東日本大震災において救護・救命活動にあたる人たちの中で、同じような体験をした人たちの状況や待遇の改善につながるのではとの思いで判決を待っていました。国はこの判決によらず、救護にあたる人の心のケアに対応して欲しい」との思いを語った。労災震災の際から協力いただいた兵庫教育大学の岩井圭司教授は、マスコミの取材に「精神障害の原因が事故だったのは明らかで惨事ストレスの典型例。判決は
PTSD
の医学的定説からも逸脱している。労災認定基準を見直す必要がある」とのコメントを寄せられた。まさに、認定基準の見直しが必要なのである。今回の裁判は、松丸弁護士と生越弁護士に協力いただいた。お二人の先生は、体調が戻らないMさんに寄り添っていただき、日本とオーストラリアという距離をも克服し、この約
3
年間弁護していただいた。本当にありがとうございました。
次は大阪高裁へと場所を移すが、救命・救護のあたる人たちのためにも、引き続き皆さんのご協力をお願いしたい。
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2005年に起きた福知山線車両脱線事故で、多数の負傷者が搬送された病院において救急救命活動に携わり、PTSDを発症したとして看護師のMさんが労災認定を求めた訴訟の判決が、7月2日に神戸地裁であった。矢尾和子裁判長は、「事故現場に赴いておらず、救急医療で一般に生じる体験しかしていない」として、請求を棄却した。
◆現場の外にも被害者はいる
2005年4月25日に発生したJR福知山線列車脱線事故は、多くの死傷者を出す大惨事であった。乗客580人、負傷者461人のうち救急搬送を受けた者は約400人に上り、そのうち最多の113人を兵庫医科大学病院が受け入れた。その兵庫医大において救急救命業務に従事し、搬送された多数の患者の看護にあたり、報道される映像や患者の事故体験を聞くことにより、MさんはJR事故の疑似体験をし、PTSDを発症した。
救命業務に従事した看護師の中にもJR事故の被害者が居ることを知って欲しく、Mさんは西宮監督署に労災申請を行った。しかし、監督署は、「事故を直接目撃したわけでなく、極度の長時間労働も認められない」「搬送患者の看護にあたる作業は、看護師として本来業務である」と心理的負荷強度は「Ⅰ」と判断し、総合評価も「弱」であると、07年3月に業務外の決定が出された。不服を申立てた審査請求についても08年6月に棄却の決定が出された。そのため、不支給処分の取り消しを求め、08年11月18日に神戸地裁に提訴したのであった。
◆野戦病院のような状況での発症
争点の一つは、Mさんが発症した精神障害はPTSDであるか、という点であった(Mさんが適応障害を発症した点については、争いはなかった)。兵庫医大の救急診察室は、普段は重症患者の受け入れは2名までとし、3人目の受け入れは断っていた。しかし、事故当日はトリアージによって重症と判断された12人もの重症患者を受け入れることとなった。室内は、負傷者を搬送するために使用されたと思われる列車の優先座先が置かれて、多くの医師や看護師が処置にあたっていたため騒然とした状態となり、まさに「野戦病院」のような状況であった。
Mさんは、事故の最後の救出者である女性患者を担当した。筋挫滅症候群等により、下肢を切断する手術が行われたにもかかわらず、救命することができず非常に残念であるという感情を抱いた。
また、親子で事故に巻き込まれた若い女性患者から、車両内で母親が患者の下敷きとなり、途中で母親との話ができなくなったことなどの沈痛な訴えを聞いた。他にも、傷ついた患者や家族の話を聞き、身体的・精神的な痛みに強く共感したのであった。
Mさんは、事故後の野戦病院のように混乱した状態で看護業務に従事したことにより外傷性ストレスを、そして負傷した人たちと接することにより二次的外傷性ストレスを受けたのであった。
◆「PTSDではなく適応障害である」
判決では、「搬送されて来る負傷者に対して処置等を行っていたのであり、……事故現場そのものや事故現場における凄惨な状態の負傷者を目撃するわけではないから、……PTSDを発症させるような外傷体験に遭遇したとまでは認められない。」とし、「確かに、本件脱線事故当日は、通常時よりも多数の患者を受け入れており、……原告が本件センターで経験していた勤務状況とは異なっていたことが認められる。」としながらも、「ICD-10のPTSD診断基準である『ほとんど誰にでも大きな苦悩を引き起こすような、例外的に著しく脅威的な、あるいは破局的な性質をもった、ストレスの多い出来事あるいは状況』であったとはいえない」と判断した。
そして、Mさんが発症した精神障害は、PTSDではなく、適応障害であるとしたのであった。
◆「強度はⅡ、総合評価は中」
争点の二つ目は、Mさんが発症した精神障害は、業務に起因するものであるか否かという点であった。
判決では、精神障害等の労災認定についての「判断指針」を持ち出し、「その内容も合理性を有するものと認められる」として、「判断指針に則して、原告の適応障害発症前の業務による心理的負荷の強度について判断する」とした。まず、Mさんが看護リーダーになった点を、「身分の昇格・昇進があった」に該当するとして強度「Ⅰ」。事故当日におけるMさんの勤務を、「仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった」及び「勤務・拘束時間が長時間化する出来事が生じた」に該当するとして強度「Ⅱ」と判断した。そして、「仮に、『悲惨な事故や災害の体験(目撃)をした』に該当すると考えた場合、その心理的負荷の強度は『Ⅱ』である。」との見解を示した。ちなみに、原処分庁の判断は「Ⅰ」であった。
そして、強度の修正については、「原告が本件脱線事故当日に行った処置自体は今までに経験したものと同内容のものであったと認められる」「勤務時間の長時間化の出来事は脱線事故の当日1日限りである」として、修正すべき要因は認められないとした。
総合評価についても「中」であると判断し、「原告の適応障害の発症は、原告の業務に起因するものとは認められない」として、棄却としたのであった。
◆惨事ストレスの救済の為に
裁判においてMさんは、事故当時の状況を証言した。車両のシートに乗せられ運ばれてくる患者さん、普段受け入れている人数を大幅に超えて運ばれてくる患者さん、しかも経験したこともない重症の患者さんたちの姿。傍聴席の誰もが想像できるほどの生々しく、そして詳細な証言であり、まさに野戦病院といっていい状態であった。裁判長は厚生労働省の認定基準に該当しないとして棄却したが、認定基準に該当するかどうかは労働基準監督署の仕事である。現在の労災認定基準にも様々な問題があり、改正にむけての検討会が開かれている最中だけに、現行の労災認定基準が「その内容も合理性を有するものと認められる」として判決が言い渡されてことは残念で仕方ない。
JR福知山線列車脱線事故をめぐり医療関係者が労災認定を求めた初めての裁判であり、東日本大震災でも負傷者を救護する側の心のケアが課題となる中での判決であり、注目されていた。Mさんは現在、オーストラリアで療養中であり、松丸弁護士が電話で判決内容を伝えると「東日本大震災において救護・救命活動にあたる人たちの中で、同じような体験をした人たちの状況や待遇の改善につながるのではとの思いで判決を待っていました。国はこの判決によらず、救護にあたる人の心のケアに対応して欲しい」との思いを語った。労災震災の際から協力いただいた兵庫教育大学の岩井圭司教授は、マスコミの取材に「精神障害の原因が事故だったのは明らかで惨事ストレスの典型例。判決はPTSDの医学的定説からも逸脱している。労災認定基準を見直す必要がある」とのコメントを寄せられた。まさに、認定基準の見直しが必要なのである。今回の裁判は、松丸弁護士と生越弁護士に協力いただいた。お二人の先生は、体調が戻らないMさんに寄り添っていただき、日本とオーストラリアという距離をも克服し、この約3年間弁護していただいた。本当にありがとうございました。
次は大阪高裁へと場所を移すが、救命・救護のあたる人たちのためにも、引き続き皆さんのご協力をお願いしたい。