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石綿肺がん 労災不支給後に新たな証拠を提出 自庁取り消しで認定に

2011/06/20
Nさん(79歳)は、20049月に肺がんのため右下葉の切除手術をし、2006313日に石綿肺がんの労災申請を神戸東署にしました。しかし、不支給決定となり、さらに審査請求も棄却されました。2回目の労災申請をおこなったのが201075日でした。しかしまたもや、認定基準の胸膜プラーク、石綿小体が確認できないことを理由に、1130日に不支給決定となりました。

しかし、20年間にも及ぶ港湾での石綿荷役への従事歴があり、不支給決定にどうしても納得することが出来ませんでした。

2011126日に審査請求をしましたが、このままでは同じような結果を招くと考えられたため、神戸労災病院へ石綿小体の計測依頼をおこないました。すると、石綿小体の計測検査結果で乾燥肺1g当たり5,748本が確認され、318日に審査官あてに石綿小体計測検査報告書を添えて「認定基準の石綿ばく露作業の従事期間が10年未満の者への救済をも満たすものであり、当然業務上の労災認定がなされるものである」との申立書を提出しました。

すると、77日に審査官より「監督署に戻したい」と本人に連絡が入り、512日に労災認定調査官より「不支給決定を取り消し、支給決定とする」との報告を聞きました。しかし組合は、「納得いかない。今までの石綿認定闘争の経緯もあり、これでは決定書は受け取れない」「組合としての見解を出す」との申し入れをおこない当日は退席しました。

520日、担当官が同席するなか労災課長に対して、組合としての要請書を提出しました。組合からは、今回の事案は、肺がんの摘出手術が行われ、組織が保存されていながら肺組織の検査結果も出されていない。主治医の「石綿小体なし」の結果だけを採用した。国が定めた認定基準で石綿小体の有無を問題にしながら、「生体検査に基づくものか」「それは検査を行ったうえでの『なし』なのか。検査を行わずの『なし』なのか」。さらに「肺組織が摘出されながら生体検査をしないで決定を下すのは、過去に重篤な人にまで生体検査を求めた経緯からも、行政の認定作業からしてもおかしい」「港湾石綿被害の甚大さに対して、過去の経緯も踏まえ慎重に取り扱いをするように」と、強く要請しました。労災課長からは、「そちらの主張通りです。申し訳ありませんでした」とのコメントがなされ、511日付支給決定書を受理することになりました。療養開始日は原発性肺がんの確定日である2004810日からとなりました。

523日に審査官との話し合いが行われ、「自庁取り消しとさせていただきたい」「審査請求はあったが、審査はしなかったものとなる」と言うものでした。労災管理調整官も同席し、「不手際に謝罪する」とのことで審査請求の取り下げに署名し終結しました。