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公務災害
市役所窓口での差別発言でPTSD 公務上認定
2011/04/20
◆はじめに
2011
年
1
月
11
日、地方公務員災害補償基金兵庫県支部は、市役所窓口での差別発言と脅迫により
PTSD
を発症したAさんに対し、公務上の災害であると認定したことを通知しました。事務系職員が発症した
PTSD
を、公務上として認定した例は初めてと思われるます。
◆災害発生の状況
2008
(平成
20
)年
8
月
21
日、生活保護を打ち切られた市民B夫妻が、国民健康保険の加入手続きのため来庁しました。窓口の対応に出たAさんが加入手続きについて説明したところ、必要書類への記入の際に、Bは突然「〇〇部落」と書いて差し出したのです。そのためAさんが差別発言について注意すると、Bは怒り出し、Aさんの名札を見て「そんなに反応するんは、あんたも部落やな」「Aは部落とインターネットに載せたるわ。死になさい」などとの差別発言と脅迫の言葉を吐きながら帰って行ったのでした。
Aさんは、その後数日間は勤務していましたが、それ以降はその時の様子がフラッシュバックし、市役所に近づくと恐くなり、胸がどきどきして出勤できなくなったのでした。近医を受診したところ「うつ病」と診断され、更に受診した別の病院では「外傷後ストレス障害」と診断されました。そのため、Aさんは療養を始めることとなり、合わせて
2008
年
9
月
2
日に公務災害の申請を行ったのでした。
◆日常の過重労働
Aさんが当時働いていた職場は、恒常的な業務に加え、国保システムの変更や相次ぐ制度変更により職員は心身ともに疲れ切っている状態でした。さらに、後期高齢者医療制度が新設され、給付担当となったことで、質的にも量的にも過重な業務に従事していたのでした。
そのことは、発症前
6
ヵ月間のAさんの時間外労働数からも明らかで、
1
ヵ月に
100
時間を超える月もあり、いわゆる「過労死」の認定基準をクリアする労働実態でした。Aさんが精神疾患を発症した原因は、窓口の受付業務において、市民から受けた差別発言と脅迫行為を契機とするものですが、発症前
6
ヵ月間においても「通常の日常業務に比較して特に質的に又は量的に過重な業務に従事した」のでした。
◆市役所の対応の問題点
B夫妻は以前からも市役所で差別発言を繰り返していたのです、注意する人は一部で、市役所としての対応がとられていませんでした。本来なら、行政組織・職場組織として差別を指摘し、対応策(マニュアル)についての研修等が行われるべきですが、そうしたことが行われてこなかったため、当日もAさん一人に過重な負担を強いることとなったのです。
さらに市役所は、事件後も加害者に対して何ら対応を取りませんでした。そのためAさんは、「インターネットに書き込みをされたら…」「また加害者が窓口に現れたら…」との不安な気持ちが続いたのでした。
◆異常な出来事に該当
兵庫県支部の相談医は、「単なる苦情処理ではなく、Bの差別発言により大きなストレスを受けた」とし、「広い意味で外傷後ストレス障害と言える」と判断。基金本部専門医も「市民からの差別発言、脅迫もどきの言葉を受けたために何らかのストレス反応を起こしたものと考えられる」と判断。基金支部は、「Bから受けた発言は、単なる暴言というだけでなく、脅迫と捉える内容で、また犯罪に近い」と判断し、本件の出来事は「その他これらに類する異常な状態」に該当するとして、公務災害と認定したのでした。
今回の認定は、Aさんがとった差別を許さない行為が、行政職員としての正当な行為であったと認められたわけです。当たり前の行為が、正当に評価されたわけですが、それだけに今回の認定の意義は大きいと考えます。
◆Aさんの想い
当時の職場は、保険料の問い合わせ、制度改正による市民からの苦情の電話が鳴り止まず、時間外勤務でやっと自分の仕事にとりかかれる状態でした。誰もがストレス一杯の状況で、今回のような突発的なことが発生すれば、誰でも私と同じ状況に追い込まれてもおかしくない環境でした。
今回の事件も市民の差別文書を黙っておけば、私が差別発言や脅迫を受けることはなかったのかもしれません。しかし私がとった行動は、行政職員として当然の行動であり、部落差別をはじめ一切の差別を許さず、市民一人一人の人権を守る義務や公務員としての人権意識の向上は当然の事として課せられており、差別意識や偏見を許さず改めるよう促すことが公務員の職務です。公務員として正当に行った職務で一生忘れることの出来ない心の傷を私は負わされました。今後現場で働く職員に二度と私と同じような事が起こらないよう、安心して働ける職場環境を作って欲しいですし、また私や私の家族が受けた差別の苦しみを二度と誰にもあじあわせることのないよう差別のないまちや社会になる事を心から願っています。
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2011年1月11日、地方公務員災害補償基金兵庫県支部は、市役所窓口での差別発言と脅迫によりPTSDを発症したAさんに対し、公務上の災害であると認定したことを通知しました。事務系職員が発症したPTSDを、公務上として認定した例は初めてと思われるます。
◆災害発生の状況
2008(平成20)年8月21日、生活保護を打ち切られた市民B夫妻が、国民健康保険の加入手続きのため来庁しました。窓口の対応に出たAさんが加入手続きについて説明したところ、必要書類への記入の際に、Bは突然「〇〇部落」と書いて差し出したのです。そのためAさんが差別発言について注意すると、Bは怒り出し、Aさんの名札を見て「そんなに反応するんは、あんたも部落やな」「Aは部落とインターネットに載せたるわ。死になさい」などとの差別発言と脅迫の言葉を吐きながら帰って行ったのでした。
Aさんは、その後数日間は勤務していましたが、それ以降はその時の様子がフラッシュバックし、市役所に近づくと恐くなり、胸がどきどきして出勤できなくなったのでした。近医を受診したところ「うつ病」と診断され、更に受診した別の病院では「外傷後ストレス障害」と診断されました。そのため、Aさんは療養を始めることとなり、合わせて2008年9月2日に公務災害の申請を行ったのでした。
◆日常の過重労働
Aさんが当時働いていた職場は、恒常的な業務に加え、国保システムの変更や相次ぐ制度変更により職員は心身ともに疲れ切っている状態でした。さらに、後期高齢者医療制度が新設され、給付担当となったことで、質的にも量的にも過重な業務に従事していたのでした。
そのことは、発症前6ヵ月間のAさんの時間外労働数からも明らかで、1ヵ月に100時間を超える月もあり、いわゆる「過労死」の認定基準をクリアする労働実態でした。Aさんが精神疾患を発症した原因は、窓口の受付業務において、市民から受けた差別発言と脅迫行為を契機とするものですが、発症前6ヵ月間においても「通常の日常業務に比較して特に質的に又は量的に過重な業務に従事した」のでした。
◆市役所の対応の問題点
B夫妻は以前からも市役所で差別発言を繰り返していたのです、注意する人は一部で、市役所としての対応がとられていませんでした。本来なら、行政組織・職場組織として差別を指摘し、対応策(マニュアル)についての研修等が行われるべきですが、そうしたことが行われてこなかったため、当日もAさん一人に過重な負担を強いることとなったのです。
さらに市役所は、事件後も加害者に対して何ら対応を取りませんでした。そのためAさんは、「インターネットに書き込みをされたら…」「また加害者が窓口に現れたら…」との不安な気持ちが続いたのでした。
◆異常な出来事に該当
兵庫県支部の相談医は、「単なる苦情処理ではなく、Bの差別発言により大きなストレスを受けた」とし、「広い意味で外傷後ストレス障害と言える」と判断。基金本部専門医も「市民からの差別発言、脅迫もどきの言葉を受けたために何らかのストレス反応を起こしたものと考えられる」と判断。基金支部は、「Bから受けた発言は、単なる暴言というだけでなく、脅迫と捉える内容で、また犯罪に近い」と判断し、本件の出来事は「その他これらに類する異常な状態」に該当するとして、公務災害と認定したのでした。
今回の認定は、Aさんがとった差別を許さない行為が、行政職員としての正当な行為であったと認められたわけです。当たり前の行為が、正当に評価されたわけですが、それだけに今回の認定の意義は大きいと考えます。
◆Aさんの想い
当時の職場は、保険料の問い合わせ、制度改正による市民からの苦情の電話が鳴り止まず、時間外勤務でやっと自分の仕事にとりかかれる状態でした。誰もがストレス一杯の状況で、今回のような突発的なことが発生すれば、誰でも私と同じ状況に追い込まれてもおかしくない環境でした。
今回の事件も市民の差別文書を黙っておけば、私が差別発言や脅迫を受けることはなかったのかもしれません。しかし私がとった行動は、行政職員として当然の行動であり、部落差別をはじめ一切の差別を許さず、市民一人一人の人権を守る義務や公務員としての人権意識の向上は当然の事として課せられており、差別意識や偏見を許さず改めるよう促すことが公務員の職務です。公務員として正当に行った職務で一生忘れることの出来ない心の傷を私は負わされました。今後現場で働く職員に二度と私と同じような事が起こらないよう、安心して働ける職場環境を作って欲しいですし、また私や私の家族が受けた差別の苦しみを二度と誰にもあじあわせることのないよう差別のないまちや社会になる事を心から願っています。