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アスベスト・中皮腫・肺がん・じん肺

ばく露作業4年弱で石綿小体32万本 石綿肺がんを発症し労災認定

2011/03/20
◆概要

岡山県玉野市にある山陽断熱(株)は、クラレの岡山・倉敷・玉島・西条工場における断熱工事をほぼ独占的に請け負い、従業員が配管の新設・点検・修理を行う際にアスベストにばく露する作業を行わせてきた。そのため、石綿肺や石綿肺がんとして労災認定される元従業員や、石綿健康管理手帳を取得する方が増え続けている。その内、4人の遺族が山陽断熱とクラレを被告とし、岡山地裁で損害賠償訴訟が行われている。


◆認定基準の64倍の石綿小体

訴訟準備のため、元従業員の方々から作業状況を聞き取る作業を行っている際に、肺がんと診断され手術を行ったAさんに出会うこととなった。Aさんは、1966(昭和41)年7月から山陽断熱に勤め始めたのだが、3年半が経った頃、高所作業中に足場が崩れ、足の骨を骨折する事故にあったのだった。作業中の事故であるにもかかわらず会社は労災扱いとせず、おまけにボーナスが減額されたことが重なり、Aさんは会社を辞めたのであった。
その後、2005年の年末に病院で肺がんと診断されたのだが、すぐに手術を行ったことにより順調に回復されていたのだった。作業期間は短かったが、主治医と面談したところ、多数の胸膜プラークが確認されることと、手術の際に切除した組織が残っていることが判明した。そこで、さっそく石綿小体の計測を依頼したところ、切除した肺上葉から322,516本の石綿小体が認められたのであった。石綿ばく露作業への従事期間が10年未満の方の肺がん認定基準は石綿小体が5,000本以上とされているが、その64倍という驚くべき本数が計測されたのだった昨年5月に労災申請を行ったところ、岡山署から今年の年明け早々に業務上の決定が出たのであった。


◆石綿肺管理区分4で認定

もうお一人の原告は、1965(昭和40)年から、愛媛県の西条事業場で働き、2010(平成22)年1月に石綿肺により亡くなられたBさんのご遺族である。Bさんは、約37年間という長期にわたりアスベストばく露作業に従事し、2002(平成14)年に石綿肺管理区分2の決定を受け、2003(平成15)年に労災申請を行ったところ、管理区分4に相当する呼吸障害があると認められたのであった。Bさんの労災申請に関しては、愛媛センターのサポートにより、認定を得たのであった。

AさんとBさんのご遺族は、山陽断熱とクラレに対して損害賠償を求め、22日に岡山地裁に提訴した。原告側は、すでに先行している4遺族の裁判への併合を求めており、4月に行われる次回の裁判期日において裁判所の見解が示されることとなっている。今回追加提訴した原告の労災認定状況からも、いかに高濃度の石綿ばく露作業であったかは明白である。被告の責任は免れない。