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港湾荷役において積荷の数量や状態を確認し証明する業務(検数業務)に、36年間従事(1965年~2001年)したK(54歳)さんは、2001(平成13)年07月11日に肺がんで亡くなられました。
神戸港は日本でも有数の石綿を荷揚げする港でした。日本の石綿輸入量は、1976年の32万5千トン(年間)が最大でしたが、その内、神戸港に荷揚げされた石綿は12万8千トンでした。実に、日本の全輸入量の約40%を神戸港が占めていました。
石綿が入った袋は、神戸港に着くまでに手カギをかけて運ばれ、また輸送中の荷崩れによって破損するなど、石綿粉じんが大量に発生し飛散する状態でした。さらに、その袋を荷役作業員が手カギを用いて艀に移す作業を行うのですが、検数作業はその傍らで行うため大量の石綿粉じんをばく露することになりました。
◆完全時効の隙間から、やっと申請へ
Kさんのご遺族が、センターに相談を寄せられた2006年夏には、すでに完全時効を迎えていました。石綿新法が制定されたのは2006年3月末であり、新法における救済対象者は、それ以前に亡くなられた方でした。Kさんの場合は、2006年の7月まで労災保険の請求権があったのですが、検数業務において石綿にばく露することを知らされなかったために、完全時効を迎えてしまったのでした。その後、国会での議論を経て新法が改正され、石綿に関して当面時効が撤廃されることとなりました。そこで、新法改正の受付日である2008年12月1日に、ご遺族は神戸東労働基準監督署へ特別遺族年金の申請を行ったのでした。
ところが、神戸東署は2010(平成22)年1月7日に不支給処分を決定し、処分の不服を申し立てましたが兵庫労働者災害補償保険審査官は本年4月27日に審査請求を棄却しました。そのため、本年6月10日付けで労働保険審査会に対して再審査請求を行ったのですが、3ヵ月が経過しても裁決がなされないため、神戸地裁へ処分の取り消しを求め提訴することとなったのです。
◆石綿小体2,551本で不支給
神戸東署が請求を棄却した理由は、「肺内に蓄積された石綿小体が2,551本/gしかない」ということです。石綿による肺がんの認定基準は、①第1型以上の石綿肺、②胸膜プラーク+石綿ばく露作業10年以上、③石綿小体又は石綿繊維+石綿ばく露作業10年以上、となっています。厚生労働省の事務通達では、「作業内容、ばく露形態、石綿の種類…等を勘案し、総合的に判断する」としているのですが、実際には石綿小体が5,000本/g以下の場合はほぼ不支給とされています(401本や334本で労災と認定された事例もある)。
世界の医学会では、石綿による中皮腫1に対して石綿による肺がんはその2倍であるというのがコンセンサスとなっています。アスベスト問題が社会問題化する中で、中皮腫の患者・家族への救済は進んでいますが、日本における石綿肺がんの患者・家族の救済は中皮腫の半分以下というのが現状です。それは、労災の認定基準が大きく影響しており、その一つである石綿小体の本数について、数字のみで判断しばく露状況等を総合的に判断していない事によると考えます。
◆10年ばく露で石綿肺がんの認定を
すでに、神戸地裁においては、肺がん不支給事件で、胸膜プラークの有無を争う丸本裁判と石綿小体741本の評価をめぐるH裁判が行われています。また、東京地裁においては、石綿小体1,230本の評価をめぐるK裁判が行われています。K裁判は年明けから証人調べが始まることとなっており、裁判そのものが大詰めを迎えています。すでに進められている3件の裁判と北村裁判は、石綿肺がんの認定基準と運用方法について問うものであり、石綿肺がんの救済に大きな影響を与えることとなります。
それに、KさんとHさんが働いていた検数業務の職場では、すでに3名の方が石綿による肺がんであるとして労災認定されています。なかには、従事期間が約11年の方もあり、如何に高濃度の石綿ばく露であったかがうかがわれます。つまり、ばく露実態や扱った石綿の種類、また石綿小体を採取した部位等を総合的に判断するのではなく、本数のみで判断する傾向にあるため、石綿肺がんの不支給事案が続出しているのです。
今回のK裁判も、アスベスト訴訟弁護団の位田弁護士、波多野弁護士、三上弁護士、そして神奈川の古川弁護士に担当していただくことになりました。