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Aさんとの出会いは、ホットラインにかかってきた1本の電話からでした。「肺がんです。手術が出来ない部位に腫瘍があると言われている。仕事でアメリカから輸入されたカレドリアという白い粉を使っていたが、その袋に石綿100%と書いているので、肺がんは石綿が原因なのかもしれない」と言った内容でした。
Aさんは、1998年から5年間、自動車のボンネットやバンパーに使用している強化プラスチック(FRPカーボンファイバー)のエアロパーツの製造の仕事に従事されていました。パーツ同士を貼り合わせる接着パテを作る際には、石綿含有100%の粉末「カレドリア」を素手でわしづかみにして計量カップに入れていました。攪拌する際にもマスクの使用はなく、作業台上だけでなく床一面にも「カレドリア」が飛散している状態でした。
また、張り合わせたエアロパーツの研磨作業の時も防じんマスクもつけずに作業を行っていました。「合わせ物」の担当で、ほぼ一人で、1ヵ月に5kg~10kgのカレドリアを使用していたのでした。これだけを見てもかなりの高濃度の石綿ばく露と言えるはずです。
しかし、労基署は「高濃度ばく露は認めるが、石綿肺や胸膜プラークが確認できない。ばく露暦が10年未満であり認定基準に達していない」との判断を下しました。しかし、高濃度ばく露だから潜伏期間が短くて肺がんが発症したと考えらます。また、胸膜プラークは、おおむね15年以上経て出現すると言われており、Aさん場合はプラークがなくても当然と言えます。ばく露暦が10年未満の場合は、石綿小体又は、石綿繊維量が一定量以上認められれば認定となりますが、体力的に測定できない場合はどうすべきと考えているのでしょうか。
Aさんは、「作業の時、カレドリアは容器に入っており石綿100%の製品であるとは気づかずにいました。素手で使用していたがそんなに危険物とは知らなかった」と話されました。また、「使用量は減ったが、05年春ごろまで使っていた」との話を聞き、使用禁止後も白石綿が流通していたことに驚きました。
体力的に働くことができず、多額の治療費が生活費を圧迫しています。安心して治療に専念できるように、今、労働局に審査請求を行っている最中です。