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石綿労災認定事業所公開ホットライン
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2020年12月16日、厚生労働省は石綿関連疾患により2019年度に労災認定された事業場名を公表した。992の事業場名が公表されたが、そのうち749の事業場は今回新規に公表された。建設業以外は393事業場で、建設業は599事業場となっており、建設関係において石綿関連疾患による労災認定が多い傾向が続いている。
労災認定事業場の公表は、同一事業場や類似事業場に働いていた被害者、遺族に、労災申請など補償、救済の大きなきっかけとなる。また、事業場の周辺に居住、通勤、通学していた人、労働者の家族に、自分や家族の病気の原因がアスベストによるものではないかを知る契機となり、重要な情報提供となっている。
事業場公表はクボタショック直後の2005年7月から始まり、今回で16回目となる。厚労省は公表を中止しようとしたこともあったが、国民の声と運動団体の要請により毎年12月中旬の公表が続いている。これまでに公表された事業場は、総数で15,123件となっている。
◇全国一斉ホットラインを実施
私たちは、毎年、厚労省の労災認定事業場情報公表の時期に合わせ、全国一斉アスベスト被害ホットラインを実施してきた。昨年は、2日間で約200件の相談が寄せられ、その後のフォローで多くの労災認定や、救済認定(労災以外)が実現した。
今回、12月17日~18日の二日間、「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」の主催で、全国労働安全衛生センター連絡会議と中皮腫・じん肺・アスベストセンターが支援し、全国5か所(札幌・東京・名古屋・大阪・福岡)に受付ポイントを設け電話対応をおこなった。
各受付ポイントの相談件数は札幌30件、東京60件、名古屋63件、大阪75件、福岡71件で、合計299件であった。そしてホットラインの2日間以降も相談が続いている状況である。
◇アスベスト被害の拡がりを実感
当センターのスタッフは、大阪と福岡の受付ポイントにおいて相談対応をおこなった。大阪ポイントは、近畿・中国地方から発信された相談電話に対応したが、大阪府24件と兵庫県16件からの相談が全体の半数を超える状況であった。福岡ポイントは、四国・九州地方から発信された相談電話に対応したが、全ての県から相談があり、特に福岡県からの相談は23件で全体の3分の1を占めた。
大阪ポイントの相談内容では、中皮腫の患者(家族)さんから12件、肺がんの患者(家族)さんから16件の電話があり、石綿肺(疑いを含む)の相談も9件あった。福岡ポイントの相談内容では、中皮腫の患者(家族)さんから5件、肺がんの患者(家族)さんから14件の電話があり、びまん性胸膜肥厚1件、石綿肺(疑いを含む)3件の相談があった。
改めて、アスベスト被害の拡がりとともに、コロナ禍であっても相談を求めている患者さんご家族の存在を実感した。ホットライン後には、それぞれの相談ポイント毎に総括会議を実施し、相談者への担当を決め、労災申請に向けて早速対応を開始している。
◇隙間のない補償・救済を
全国労働安全衛生センター連絡会議が、関係機関が公表しているデーターを基に、アスベスト被害の補償・救済状況を経年的に検証している。それによると、2018年度までの死亡者では中皮腫で65.5%、石綿肺がん(国際的なコンセンサスが得られている中皮腫の2倍発生と推計)で11.1%の被害者しか公的制度による補償を受けていない。
アスベスト特有のがんである「中皮腫」は、特に予後が悪く、死亡者数はこの数年、約1,500人で推移している。悪性胸膜中皮腫による死亡者数は、2040年までに10万人に及ぶという予測もあり、今後さらに中皮腫等の石綿関連疾患の増加が予想される。
隙間なく、全てのアスベスト被害者が補償を受けられるよう取り組みを強める必要がある。コロナ禍において、相談者との面談にも制約がかかるが、一人でも多くの方の補償・救済につながるように取り組みを進めていく。