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ノン・アスベスト社会に向けて

2008/11/14
1114日、神戸大学倫理創成プロジェクト主催の第24回倫理創成研究会「ノン・アスベスト社会のために()リスク・コミュニケーションの課題と実践」が開催され、アスベスト問題における被害者の掘り起こしや今後のばく露予防の対策に向けた話し合いがなされた。研究者以外にも、学生、NPO、報道関係者など約40名が参加。

同研究会は二部構成で行われた。第一部では、講演者が各自の専門分野から見たアスベスト問題についての研究内容を報告。続く第二部では、アスベスト問題への予防対策の取り組みの一環として「マスク・プロジェクト」が参席者の前で紹介、広報された。

第一部では、まず最初に、倫理創成プロジェクトに参加する若手研究者がこれまでの研究成果を「アスベスト問題における聞き取り調査の意義―一人称的視点からのリスク評価―」のタイトルで発表した。アスベスト被害者への聞き取り調査を通じて得られた情報をもとに、「これからのリスク評価には被害者視点の意見が考慮に入れられるべき」と述べた。

続くパリ・ディドロ大学(フランス)のポール・ジョバン氏は、フランスにおけるアスベスト被害とその補償に関して、現地制作のドキュメンタリーとマンガを用いて解説した。

最後に、聖路加看護大学の長松康子氏が、子どものアスベストリスクについて講演を行った。長松氏は、1999年に東京都文京区の保育園で、園舎の改修工事中に子どもたちが石綿にばく露した事例をもとに、子どもが石綿を吸い込む危険性について講演。当時、長松氏は一歳になる子どもを同園に預けていたが、そうした当事者の視点を交えながら、看護学の専門家と親の両面の立場から、子どもをアスベストばく露から守ることの重要性について説いた。

第二部では、国連ハビタット親善大使のマリ・クリスティーヌ氏と中皮腫・じん肺・アスベストセンターの永倉冬史事務局長の両氏が、阪神淡路大震災や新潟中越沖地震などの被災地で、アスベスト被害予防のためのマスクを配布した経験をもとに、緊急時にアスベスト飛散への予防対策を取ることの重要性について強調。具体案として、地方自治体にマスクを備蓄し、緊急時の迅速な配布態勢を整備するという「マスクプロジェクト」を発表したところ、会場から多くの質問が飛び、同プロジェクトへの関心の高さが伺われた。
 

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