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シンポジウム・集会とも、石綿対策全国連絡会議の古谷事務局長が基調報告をおこなった。古谷氏は「『アスベスト問題に関する関係閣僚会合』は2006年9月以降開催されていない。小泉内閣から安倍内閣への引き継ぎらしきものは何もなく、公約であった『隙間のない補償』は誰が検証するのか?アスベスト肺は救済対象から外されている」と政府の無責任ぶりを指摘した。そして、「ベルギーでは2007年4月から石綿肺及び中皮腫の全ての被害者に補償金が支払われることになった。イギリスでも中皮腫患者への補償の支払いを早めることが検討されている」とヨーロッパでは被害者補償が進みつつある点を述べた。
また、来賓として韓国からイ・サンユン労働健康連帯政策局長(産業医)が駆けつけ、「韓国でも1970年代頃からアスベストを大量に扱った。日本の経験に学びたい。5月18日~19日には韓国で日韓共同シンポジウムをおこなう」と連帯のあいさつをした。
シンポジウム・集会では、各地の患者会の代表者、家族会の代表者が次々と登壇し、「国の対応は冷たい、あまりに不誠実」と肉親失った無念さを訴えた。集会後は、参加者全員で国会への請願デモ行進を行った。
アスベスト被害者は、救済法が施行されて以降、それまでの労災補償件数の2~3倍で労災保険や救済法による「補償・救済」を受けている。これは、被害者の声や国民的な運動の結果といえる。しかしながら、中皮腫の2倍と言われる石綿関連肺がんの認定率は4.5%という状態であり、石綿肺などの疾病が救済法から外されるなど「隙間なく救済」されていないのが現状である。しかも、労災補償と救済法による補償内容には大きな格差があり、「公正な救済」を求める被害者の声は高まるばかりである。
クボタショックが全国に広がったのは、アスベスト被害が工場や鉱山等の周辺住民の健康や命を奪う「アスベスト公害」を引き起こしている事実であった。しかし、わが国における石綿被害の実態の解明も残されたままであり、例えば学校等における吹きつけアスベスト等にばく露した可能性のある児童・学生等の健康管理対策については、検討すらされていない状況である。
アスベスト問題は終わっていないどころか、被害の拡大はまさにこれからなのであり、小手先の対策でもって幕引きにさせてはならない。