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中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会

患者と家族の会ひょうご支部結成1周年の集い

2006/09/20
人一倍身体が健康で、現場で汗を流し、身体を張って働いていることを誇りにしていた夫。その夫が急に胸を患い、咳き込んで寝たきりになり、帰らぬ人となる。あるいは重い障害を抱え、苦しい生活を余儀なくされる。また、平凡な主婦に過ぎず、人一倍タバコの煙を嫌うような人だったのに、肺がんを患い、突然命を奪われる。今まで普通の生活をしていた人たちが急に病に倒れるなど、ともに生活をしている家族にとっては耐えられぬ思いである。そんなときにクボタの問題が大きく取り上げられ、アスベストの問題が洪水のようにマスコミにあふれ出した。そして、今までは亡くなった家族の位牌に手を合わせながら、たった一人で悩んできた人たちが気づき始めた。報道で流れるアスベスト作業の現場や病状に思い当たる節がある、今まではつらくてじっくりと見ることの出来なかった診断書を開いてみる、もしかすると、これなのか。

手探りのままおそるおそるアスベスト問題の集いに参加し、ホットラインに思い切って電話をしてみる。すると、この問題で悩んでいたのは私一人じゃなく、大勢いることが分かったのである。もちろん、それが分かっただけでは解決にはならないことは承知している。相手は国や大企業、そして複雑極まりない社会保障制度だ。しかし、それが分かっただけでも大きな前進なのも事実だ。とにかく集まってみよう。そんな思いで昨年827日、43名の患者と家族が集まり、「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会ひょうご支部」が結成されたのである。

99日、結成集会を行った同じ場所である私学会館で1周年の集いが開催された。冒頭あいさつを述べたのは、世話人の西本妙子さん。腕のいいケーキ職人であった夫は、オーブンに使われていたアスベストが原因で中皮腫を患い、2年前にお亡くなりになった。「産まれたばかりの組織で、よちよち歩きの状態でしたが、全国の皆さん、特に関西支部のみなさんに支えられて今日までやってきました。個人では本当に骨の折れる申請書類も、安全センターの皆さんに助けてもらっています。本当にありがとうございました」と感謝の辞を述べた。しかし患者と家族の会のこれまでの闘いは、決して西本さんの言うような「よちよち歩き」ではなかった。活動報告を見ても分かるように、むしろアスベスト問題の先頭に立って周囲をけん引してきたのである。吹雪の中での街頭署名活動や東京での国民決起集会への参加、集団申請やマスコミへの記者会見など、常にメンバーたちが最前線で闘っていた。連帯のあいさつを述べた安全センターの神田雅之代表も、「運動の原点を見る思いであり、これが国を動かしたのだと実感している」と語った。

2部では、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会副会長の古川和子さんからタイで行われた「2006アジア・アスベスト会議」の報告がされ、日本での取り組みを、英語を駆使して紹介したことなどが話された。また、記念講演では「患者会活動と心のケア」と題して大阪産業大学人間環境学部の中川晶教授からスピーチを頂いた。被害者の家族の心の傷は大きい。国や企業の儲け主義のために犠牲になったのは分かっているものの、いちばん近くにいた者として、「あの時無理にでも医者に見せておけば・・・」と後悔し、自分を責めてしまうのである。そんな家族の心のケアが患者の会としても課題となっている。精神面で苦しい思いを続けている多くの患者と接してきた中川先生は、「精神的な治療に携わる者として、それは○○という病気だよと一方的に押し付けるのではなく、とにかく話を聞く。患者がなぜそのような状態になったのかを語ってもらう治療をしています。ふつう医者は合理性、科学性を求めますが、多少話しが突飛でも、まず患者の物語を聞かなければならない。それをナレーション、ナラティヴ・セラピーと言います」と、海外での報告や担当した患者の実例を交えて話された。

3部はグループディスカッションとアスベスト相談が行われた。新聞をみて参加したと言う女性は、自分の母親が中皮腫で亡くなったが、若いときに神戸港の倉庫で清掃作業をしていたのが原因かもしれないと話した。しかし、震災などの影響で当時の資料は殆ど紛失し、どのような会社に勤めていたのかも分からないという。相談員は、「当時、港で臨時的な仕事に就いていた人への救済措置はほとんどされていません。それでも調べてみることが大切です。声を上げなくては何も動かないですから」と語っていた。

患者と家族の会は今後も全国の仲間と力をあわせ、患者家族の心のケアや交流活動を続けていく方針である。
 

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