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過労死・過重労働・脳心臓疾患

2021年度過労死等防止シンポジウム 兵庫会場

2021/11/22
201411月に施行された「過労死等防止対策推進法」に基づき、11月は過労死等防止啓発月間とされ、その一環として厚生労働省の主催によるシンポジウムが、全国48ヵ所で開催されている。兵庫では、1119日に神戸市産業振興センターハーバーホールにて開催された。

最初に、NPO法人POSSE代表理事の今野晴貴氏による「コロナ禍の過重労働について考える」と題した基調講演が行われた。過労死等の労働災害認定状況について触れ、勤務問題が原因で自死をした方が2,000人に近い中で、そのうち過労自死として労災認定されているのは100件にも満たないと説明された。過労死や自死が労働災害であると認定されるためには、遺族が自ら労働時間の証拠を集め、その死と会社の働かせ方の因果関係を証明しなければならない。家族を失い精神的に辛い中、そうした作業を進めることは大きな困難をともなうものであり、加えて、企業の中には自らの責任を認めたくないが故に、長時間労働やパワハラの証拠を隠滅する企業や、元同僚に箝口令を敷き証言させないケースもあり、法的権利行使のハードルの高さを指摘された。

遺族の声として、夫を過労死で亡くされた小池江利さん(大阪過労死を考える家族の会)が報告された。「私はいつも夫が生きていてくれたらどれだけ幸せだろうと考えてしまいます。しかし、一番の犠牲者は人生を奪われた夫であることは言うまでもありません。私はこれからもなぜ夫は死ななければならなかったのかと過労死の問題意識を持ち続けていきます。過労死・過労自死は弱い人間だけに起こることではなく、働き方や職場環境によって誰にでも降りかかる身近な問題です。過労死は人間によって作り出される人災です。働き方や過労死について自身のこととしていま一度考えてほしい」と強く訴えられた。

そのほか、兵庫労働局からは、「過労死等防止のための対策に関する大綱の変更」及び「脳・心臓疾患の労災認定基準の改定」について説明された。また、統計資料を基に労働実態の報告とともに、労使協力の下で働き方を変えていく必要があると訴えられた。また、企業からの報告として、大和美術印刷株式会社から「働きやすい職場のために今できること」と題して、長時間労働対策などの取り組みが紹介された。

今日、企業、産業医、行政による過重労働への対策が急速に進んでいるが、それは自然に実現したことではなく、被害者の訴えが「被害」そのものの存在を社会に問いかけた結果であり、未だに「途上」に過ぎない。これからは、さらに労働組合や市民団体が協力し、過重労働を無くす取り組みを強める必要がある。