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1995年の肺がん死亡 ―石綿が原因であると労災認定
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1995年7月に肺がんを発症し、同年12月に死亡されたAさんの遺族から相談がありました。2020年12月のことでした。Aさんは1945(昭和20)年から1986(昭和61)年まで神戸市内にある鉄道車輌製造工場に勤務され、ご遺族はAさんが車輌の製造作業に従事していたことを聞かされていました。クボタ・ショック後の2007(平成19)年7月に勤務先から送られてきた「退職者の石綿健康診断」に関するハガキを大切に保管し、死亡原因の肺がんは石綿によるものではないかと永年考えておられました。
相談を受け、Aさんが受診されていた病院に問い合わせましたが、既に25年が経過しており、カルテも画像も残っていませんでした。そこで会社に連絡を入れ職歴を調べてもらったところ、艤装職として内装工事に従事していたことがわかりました。鉄道車輌を運行させるために必要な装置や設備を車輌内部に取り付ける作業です。会社からは「アスベストにかかる業務に従事していたかどうかは不明。会社としては昭和63年頃迄は車輌内の断熱材や保温剤他として石綿製品を使用していた。」との証明を受けました。
死亡後5年が経過し労災保険の請求ができない場合は、救済法により特別遺族年金を請求することができます。特別遺族年金を請求しようとしても、診療記録等の医証が全く存在しない場合があります。その場合の監督署の調査については、「過去に同一事業場で、同一時期に同一作業に従事した同僚労働者が労災認定されている場合や、相当高濃度の石綿ばく露作業が認められる場合には、本省に相談されたい。」とされています。
Aさんが勤務していた工場では鉄道車輌を製造しているのですが、これまでの約80名の方が石綿による労災(救済法を含む)認定を受けています。つまりAさんの事例は、医療記録がなくても直ちに不支給決定とはならず、本省協議となる案件なのです。
2021年2月に神戸西労働基準監督署に申請を行なったのですが、本省協議に時間を要しましたが、2022年1月7日付で特別遺族年金の支給が決定しました。Aさんが亡くなられてから26年後の労災認定です。Aさんのご遺族と同じように、『死亡原因は石綿では…』と考えながら請求をしていない事例は多く存在すると思います。実際に、全国労働安全衛生センターの調査によると、中皮腫の救済立は65.6%で、肺がんの救済率は22.2%と報告されています。
救済法の請求期限を延長する法改正は、これまで2008年と2011年に行なわれました。しかし、労災保険の時効救済は2016年3月27日以降に死亡した事例には適用されないため、死亡から5年が経過すると労災保険も労災時効救済も請求できなくなっています。2021年3月27日以降に亡くなった方で、全く補償を受けられない事例が既に発生しているのです。
救済法の請求権延長問題は待ったなしの課題です。