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労災職業病・安全衛生の取り組み
職場のハラスメント対策連続講座を開催
2023/10/20
NPO法人ひょうご労働安全衛生センターは、職場のハラスメント対策連続講座を第1回「ハラスメント問題が起きた時の対応」(9月25日)、第2回「ハラスメント規制と職場の環境改善対策」(10月2日)をテーマに開催し、ハラスメント問題の基礎を学びあった。
第1回 「ハラスメント問題が起きた時の対応」
9月25日、神戸市中央区文化センターで開催し、いじめメンタルヘルス労働者支援センターの千葉茂所長が講演した。
♦ハラスメント対応はなぜ困難なのか
千葉さんはまず「パワハラ防止法」に至る流れを説明した。2002年に出された人権擁護 法案に「労働者への不当な差別的取り扱い禁止」が盛り込まれたが、廃案になった。しかし、EU等で職場のハラスメントの問題の議論が開始され、日本でも2011年、「職場のいじめ問題」対策の議論を開始。2012年、「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」が作られた。パワハラの定義として、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」とされたが、「精神的苦痛」が含まれたことは画期的だった。
2017年、政府の「働き方改革実行計画」に「職場のパワーハラスメント防止を強化するため、政府は労使関係者を交えた場で対策の検討を行う」と盛り込まれたことを受け、厚労省は検討会を開催。2019年5月、労働施策総合推進法30条の2を新たに設け、「パワハラ防止法」が成立した(2020年6月1日施行)。防止法には「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう・・・・・・」 とあり、これらの3つの要素を満たす行為がパワハラ、とされた。
「提言」と比べるとハードルが高くなったと千葉さんは指摘する。
また、罰則規定がないことも問題だという。 2019年6月、 I L0第108回総会は「仕事の世界における暴力とハラスメント」に関する条約を採決。批准のためには「パワハラ防止法」に罰則規定等が必要になる。
厚労省発表の「(個別労働紛争解決制度の)紛争当事者双方のあっせん参加率、合意率の推移」では、あっせん参加率は19年度までは 56%台だが20年度は48.4%、合意率は40%近くから20年度は32.4%に低下している。制度の使い勝手の悪さだけでなく、「パワハラ防止法」が実効性を持っていないことの現れではないかと千葉さんは指摘した。
♦ハラスメント相談の傾向
労働相談の中でパワハラの相談は多いという。社会状況が労働環境を悪化させ、成果主義、競争の中で、労働者の分断、孤立が進み日常的に抱えるストレスが増大している。
これまで労働基準法をベースに闘いをやってきたが、労働契約法を盾に使用者の側に都合のいい契約がおこなわれており、今一度きちんと学ぶ必要があると千葉さんは指摘する。最近の相談の特徴として、開ロ一番「パワハラにあった」と言うが、それ以外の表現や職 場の状況を説明できない相談者が増えている。そもそも労働法、権利について知らないし、職場で人間関係が希薄になっていて困りごとを相談できない状況があるのでは、という。
また、「代わりに“お仕置き”をしてくれる」ウルトラマンを期待しているような相談も多い一方、まったくゆとりがない労働者も増えている。公助が機能していない中で、自助、共助が限界になっており、民間の支援団体やユニオンも疲弊しているという。
♦相談を受けた時の注意点
「労働相談の原則は、職場で起きている問題はすべて労働問題である」と千葉さんは言う。そして、加害・被害の白黒をつけることが解決ではなく、根本的な問題のとらえかえしが必要だと指摘する。
団体交渉の項目としては、「使用者の環境整備義務」(労働安全衛生法)、「使用者の安全配慮義務」 (労働契約法)、「合理的配慮の提供義務」(障碍者差別解消法)、「善管注意義務」(民法644条善良な管理者の注意義務)。「違反」の追及ではなく「義務」の遂行状況の監視、点検が必要である。
千葉さんは、相談を受ける側に必要な心構えとしては「相談者は嘘をつかない。しかし言いたくないことはある。気がついてないこともある」で、そのまま受け止めることが必要だという。そして、信頼関係の構築、どうしたいのか一緒に考えることが大事で、相手が選ばない方法を押し付けるのは「支配」だと指摘する。交渉の目的は、勝敗ではなく、権利の回復、働きやすい環境整備であり、再発防止である。
相談者の傾向として、メンタルヘルス罹患の人、体調不良のまま働いている人が多い。さらに経済的問題が重なると複雑になるので、それらを踏まえた上で、解決に向けて「順序」をつけることが大事だという。
♦労働組合としての取り組み
労働組合の守備範囲は法律の違法・合法ではない、労働者の権利、処遇改善、職場改善のために交渉できることが強みだと千葉さんは言う。厚労省は、パワハラは個人の問題と言いたがるが、「個人的問題は社会的問題」。社員の行動は会社・社会を反映しているものであり、労働組合は広い視野をもって課題に挑戦しなければならないと強調した。
相談活動でのストレス対処法については、後で誰かに感情を含めて聞いてもらう、終了したら安全なところで休息をとる、などが必要とのアドバイスがあった。
最後に、紛争の解決とは、自立した生活を取り戻すこと、職業生活を培っていける自信をつけること、自分らしい納得した生活を送ること。仲間がいることのすばらしさ、大切さを確信することである。「人は人によって傷つき、人によって癒される」。かつて傷ついた、病んだ労働者が、同じような仲間が飛び立てるように翼を直す場と機会を提供する場が労働組合・ユニオンである、と締めくくつた。
第2回 「ハラスメント規制と職場環境改善」
10月2日、神戸市中央区文化センターで開催し、特定社会保険労務士の有田成子さんが講演し様々な事例について学んだ。
♦ハラスメント規制の法的制度を学ぶ
有田さんは、 「職場で様々なハラスメント(嫌がらせ)が発生していますが、それが法的にどのように定義されているのか知ることが大事です」とパワーハラスメントやセクシャルハラスメント、マタニティハラスメント等の違いとその法的な定義について詳しく説明され、「22年6月から全面的に施行された労働政策総合推進法(パワハラ防止法)では、①暴行など身体的な攻撃、②名誉棄損、暴言などの精神的な攻撃、③職場の人間関係の切り離し、④業務上明らかに遂行不可能な過大な要求、⑤逆に経験とかけ離れた程度の低い業務を命じる過小な要求、⑥私的なことに立ち入る個の侵害の6つがパワハラの代表的な言動の類型とされました。
業務の内容やその頻度、継続性、労働者の心身の状況を考慮しながら該当するか否かを判断する必要があります。また『職場』とは、単に就業場所のみを指すのではなく、出張先や取引先、宴席など『業務の遂行性』が認められる場の全すべてを指し、正社員のみならずパート、アルバイト、派遣労働者も含め、すべての労働者に対してハラスメントの防止が事業主に義務付けられています」と話された。事業主は、労働者にハラスメント問題について周知・啓発しなければならず、労働者もまた積極的に研修等に参加してハラスメント間題に対する理解と関心を深めていくことが義務づけられていると指摘した。
♦相談できる労働組合、NPOは重要
「しかし、実際に職場でパワハラが発生しても、『パワハラ罪』があるわけではありません。パワハラ防止法は、客観的に見て①優越的な関係を背景にした言動であり、②上記の6類型の言動が社会通念上明らかに業務上の範囲を超えたものであり、③労働者の就業環境が看過できないほど害される、の3つが揃っていないとパワハラに『該当』しない、ときていされているのです」と指摘した。
今回の改正で、法的には事業主などに様々な義務が発生しましたが、パワハラとして認定を受けるにはハードルが高いようです。「だからと言って、事業主が何もする必要は無いと考えるのは誤りであり、民法上の損害賠償や労働契約法の安全配慮義務に違反し、また会社代表者が不作為の責任などを問われる裁判 も実際発生しているため、対策はしておかなければなりません」と有田さんは指摘された。
しかし、職場におけるパワハラ間題の現状は厳しく、法令で定められた措置すら行われていなかったり、例え研修を行っても形骸化してしまう例などが見受けられる。「相談窓 口が人事部だから、上司や社長に内容がバレてしまうので誰も足を運ばない」といった声も上がっている。また、加害者となってしまった上司にしても、指導とハラスメントの線引きができず、部下との関係構築に悩んでいたり、被害者となった労働者も自分が必要以上に悪いと感じてしまうこと多いのが実態である。そのため、「会社で嫌なことがあっても、趣味などで発散し、また明日から頑張ろうという気になれるセルフケアを講じたり、部下を持ったら、自分の言動が相手にどう受け止められるか想像することなどが日常的に必要です」とアドバイスがあった。
事業主は、パワハラのみならず全てのハラスメントに対する相談窓口を一元化したり、業務体制を整備して特定の労働者に過度な負担がかからないように日々注意していかなければいけない。
「上司や部下を含め、全ての労働者の心身への負荷を軽減するためにも、アンケートなどで意見を集約していく必要があります。また、ともすれば不作為になりがちな事業主に対して、労働組合やNPOが粘り強く働きかけることが大切です」と有田さんは訴えた。講座のラストは、グループでそれぞれが職場での取り組みや実態について話し、また相談を受けた場合の対応策等についてディスカッションを行った。
♦ハラスメント対策は粘り強く
私たちは、この9月から改正された「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」を含め、ハラスメントに対する法的な理解を深めるとともに、万が一精神疾患を発症し休職に追い込まれた場合等の補償制度について整理しておく必要がある。労働組合として、職場におけるあらゆるハラスメント行為を防止し、不幸にも被害に遭って心身の健康を損ねた労働者に対して寄り添っていくことが大切である。
有田さんは、「すべての社員は、その家族にとって、自慢の娘や息子であったり、尊敬されるお父さんやお母さんであったりする。そんな人たちを、職場のパワーハラスメントで苦しめることがあってはいけない」と話され、セミナーを締めくくられた。
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第1回 「ハラスメント問題が起きた時の対応」
9月25日、神戸市中央区文化センターで開催し、いじめメンタルヘルス労働者支援センターの千葉茂所長が講演した。
♦ハラスメント対応はなぜ困難なのか
千葉さんはまず「パワハラ防止法」に至る流れを説明した。2002年に出された人権擁護 法案に「労働者への不当な差別的取り扱い禁止」が盛り込まれたが、廃案になった。しかし、EU等で職場のハラスメントの問題の議論が開始され、日本でも2011年、「職場のいじめ問題」対策の議論を開始。2012年、「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」が作られた。パワハラの定義として、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」とされたが、「精神的苦痛」が含まれたことは画期的だった。
2017年、政府の「働き方改革実行計画」に「職場のパワーハラスメント防止を強化するため、政府は労使関係者を交えた場で対策の検討を行う」と盛り込まれたことを受け、厚労省は検討会を開催。2019年5月、労働施策総合推進法30条の2を新たに設け、「パワハラ防止法」が成立した(2020年6月1日施行)。防止法には「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう・・・・・・」 とあり、これらの3つの要素を満たす行為がパワハラ、とされた。
「提言」と比べるとハードルが高くなったと千葉さんは指摘する。
また、罰則規定がないことも問題だという。 2019年6月、 I L0第108回総会は「仕事の世界における暴力とハラスメント」に関する条約を採決。批准のためには「パワハラ防止法」に罰則規定等が必要になる。
厚労省発表の「(個別労働紛争解決制度の)紛争当事者双方のあっせん参加率、合意率の推移」では、あっせん参加率は19年度までは 56%台だが20年度は48.4%、合意率は40%近くから20年度は32.4%に低下している。制度の使い勝手の悪さだけでなく、「パワハラ防止法」が実効性を持っていないことの現れではないかと千葉さんは指摘した。
♦ハラスメント相談の傾向
労働相談の中でパワハラの相談は多いという。社会状況が労働環境を悪化させ、成果主義、競争の中で、労働者の分断、孤立が進み日常的に抱えるストレスが増大している。
これまで労働基準法をベースに闘いをやってきたが、労働契約法を盾に使用者の側に都合のいい契約がおこなわれており、今一度きちんと学ぶ必要があると千葉さんは指摘する。最近の相談の特徴として、開ロ一番「パワハラにあった」と言うが、それ以外の表現や職 場の状況を説明できない相談者が増えている。そもそも労働法、権利について知らないし、職場で人間関係が希薄になっていて困りごとを相談できない状況があるのでは、という。
また、「代わりに“お仕置き”をしてくれる」ウルトラマンを期待しているような相談も多い一方、まったくゆとりがない労働者も増えている。公助が機能していない中で、自助、共助が限界になっており、民間の支援団体やユニオンも疲弊しているという。
♦相談を受けた時の注意点
「労働相談の原則は、職場で起きている問題はすべて労働問題である」と千葉さんは言う。そして、加害・被害の白黒をつけることが解決ではなく、根本的な問題のとらえかえしが必要だと指摘する。
団体交渉の項目としては、「使用者の環境整備義務」(労働安全衛生法)、「使用者の安全配慮義務」 (労働契約法)、「合理的配慮の提供義務」(障碍者差別解消法)、「善管注意義務」(民法644条善良な管理者の注意義務)。「違反」の追及ではなく「義務」の遂行状況の監視、点検が必要である。
千葉さんは、相談を受ける側に必要な心構えとしては「相談者は嘘をつかない。しかし言いたくないことはある。気がついてないこともある」で、そのまま受け止めることが必要だという。そして、信頼関係の構築、どうしたいのか一緒に考えることが大事で、相手が選ばない方法を押し付けるのは「支配」だと指摘する。交渉の目的は、勝敗ではなく、権利の回復、働きやすい環境整備であり、再発防止である。
相談者の傾向として、メンタルヘルス罹患の人、体調不良のまま働いている人が多い。さらに経済的問題が重なると複雑になるので、それらを踏まえた上で、解決に向けて「順序」をつけることが大事だという。
♦労働組合としての取り組み
労働組合の守備範囲は法律の違法・合法ではない、労働者の権利、処遇改善、職場改善のために交渉できることが強みだと千葉さんは言う。厚労省は、パワハラは個人の問題と言いたがるが、「個人的問題は社会的問題」。社員の行動は会社・社会を反映しているものであり、労働組合は広い視野をもって課題に挑戦しなければならないと強調した。
相談活動でのストレス対処法については、後で誰かに感情を含めて聞いてもらう、終了したら安全なところで休息をとる、などが必要とのアドバイスがあった。
最後に、紛争の解決とは、自立した生活を取り戻すこと、職業生活を培っていける自信をつけること、自分らしい納得した生活を送ること。仲間がいることのすばらしさ、大切さを確信することである。「人は人によって傷つき、人によって癒される」。かつて傷ついた、病んだ労働者が、同じような仲間が飛び立てるように翼を直す場と機会を提供する場が労働組合・ユニオンである、と締めくくつた。
第2回 「ハラスメント規制と職場環境改善」
10月2日、神戸市中央区文化センターで開催し、特定社会保険労務士の有田成子さんが講演し様々な事例について学んだ。
♦ハラスメント規制の法的制度を学ぶ
有田さんは、 「職場で様々なハラスメント(嫌がらせ)が発生していますが、それが法的にどのように定義されているのか知ることが大事です」とパワーハラスメントやセクシャルハラスメント、マタニティハラスメント等の違いとその法的な定義について詳しく説明され、「22年6月から全面的に施行された労働政策総合推進法(パワハラ防止法)では、①暴行など身体的な攻撃、②名誉棄損、暴言などの精神的な攻撃、③職場の人間関係の切り離し、④業務上明らかに遂行不可能な過大な要求、⑤逆に経験とかけ離れた程度の低い業務を命じる過小な要求、⑥私的なことに立ち入る個の侵害の6つがパワハラの代表的な言動の類型とされました。
業務の内容やその頻度、継続性、労働者の心身の状況を考慮しながら該当するか否かを判断する必要があります。また『職場』とは、単に就業場所のみを指すのではなく、出張先や取引先、宴席など『業務の遂行性』が認められる場の全すべてを指し、正社員のみならずパート、アルバイト、派遣労働者も含め、すべての労働者に対してハラスメントの防止が事業主に義務付けられています」と話された。事業主は、労働者にハラスメント問題について周知・啓発しなければならず、労働者もまた積極的に研修等に参加してハラスメント間題に対する理解と関心を深めていくことが義務づけられていると指摘した。
♦相談できる労働組合、NPOは重要
「しかし、実際に職場でパワハラが発生しても、『パワハラ罪』があるわけではありません。パワハラ防止法は、客観的に見て①優越的な関係を背景にした言動であり、②上記の6類型の言動が社会通念上明らかに業務上の範囲を超えたものであり、③労働者の就業環境が看過できないほど害される、の3つが揃っていないとパワハラに『該当』しない、ときていされているのです」と指摘した。
今回の改正で、法的には事業主などに様々な義務が発生しましたが、パワハラとして認定を受けるにはハードルが高いようです。「だからと言って、事業主が何もする必要は無いと考えるのは誤りであり、民法上の損害賠償や労働契約法の安全配慮義務に違反し、また会社代表者が不作為の責任などを問われる裁判 も実際発生しているため、対策はしておかなければなりません」と有田さんは指摘された。
しかし、職場におけるパワハラ間題の現状は厳しく、法令で定められた措置すら行われていなかったり、例え研修を行っても形骸化してしまう例などが見受けられる。「相談窓 口が人事部だから、上司や社長に内容がバレてしまうので誰も足を運ばない」といった声も上がっている。また、加害者となってしまった上司にしても、指導とハラスメントの線引きができず、部下との関係構築に悩んでいたり、被害者となった労働者も自分が必要以上に悪いと感じてしまうこと多いのが実態である。そのため、「会社で嫌なことがあっても、趣味などで発散し、また明日から頑張ろうという気になれるセルフケアを講じたり、部下を持ったら、自分の言動が相手にどう受け止められるか想像することなどが日常的に必要です」とアドバイスがあった。
事業主は、パワハラのみならず全てのハラスメントに対する相談窓口を一元化したり、業務体制を整備して特定の労働者に過度な負担がかからないように日々注意していかなければいけない。
「上司や部下を含め、全ての労働者の心身への負荷を軽減するためにも、アンケートなどで意見を集約していく必要があります。また、ともすれば不作為になりがちな事業主に対して、労働組合やNPOが粘り強く働きかけることが大切です」と有田さんは訴えた。講座のラストは、グループでそれぞれが職場での取り組みや実態について話し、また相談を受けた場合の対応策等についてディスカッションを行った。
♦ハラスメント対策は粘り強く
私たちは、この9月から改正された「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」を含め、ハラスメントに対する法的な理解を深めるとともに、万が一精神疾患を発症し休職に追い込まれた場合等の補償制度について整理しておく必要がある。労働組合として、職場におけるあらゆるハラスメント行為を防止し、不幸にも被害に遭って心身の健康を損ねた労働者に対して寄り添っていくことが大切である。
有田さんは、「すべての社員は、その家族にとって、自慢の娘や息子であったり、尊敬されるお父さんやお母さんであったりする。そんな人たちを、職場のパワーハラスメントで苦しめることがあってはいけない」と話され、セミナーを締めくくられた。