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精神障害の労災認定基準 約12年ぶりに改正
2023/10/20
♦はじめに
9月1日、厚生労働省は精神障害の労災認定基準を約12年ぶりに改正しました。職場のストレスを例示した「業務による心理的負荷評価表」を拡充したもので、カスタマーハラスメント、性的指向などの差別が加えられたことは、以前から報道されています。実は、この間の労災判例(労基署が業務外としたが裁判所は労災と認めた)等を参考にしたもので、画期的な大改正です。労災認定は難しいと、請求そのものを諦めてしまっている被災者は少なくありません。あるいは労災が不支給になってしまい、裁判はおろか審査請求すらしない人も多いでしょう。
「働き方改革」関連法が施行されてから数年が経過しています。人手不足もあって、一部の企業では働きやすい職場づくりが進められています。一方で、相変わらず職場のハラスメント相談は後を絶ちません。そして、被害者が相談しても全く改善しなかった、相談することもなく退職を余儀なくされたといった実態は、自衛隊のセクハラ問題に限りません。やはり一般的な相談ではなくて、労働組合に加入して、会社の責任で対応・再発防止を要求していく必要があります。労災請求するにしても、労働時間やハラスメントの事実関係の認定については、労働基準監督署に任せるのではなく、職場の同僚などの協力が非常に重要です。
♦どこが画期的な大改正なのか?
①ハラスメントが「強」に位置付けられた!
これまでは、職場でハラスメントに遭ったとして労災請求しても、「パワーハラスメント」の内容が限定的で、「ひどいいじめ・嫌がらせを受けた」と同じような、暴行や人格否定発言がなければ、むしろ「上司とのトラブル」と決めつけられることが多いのが実態です。そして、「ひどいいじめ・嫌がらせ」の基本的な評価は「強」なのですが、「上司とのトラブル」は「中」です。つまり労災になる可能性は非常に低くなります。厚労省が毎年発表している、出来事別の請求と支給決定件数を比較すれば明らかです。
改正された認定基準では、心理的負荷評価表の「パワーハラスメントを受けた」という項目で、ハラスメントの6類型(人格否定発言、強い叱責、仲間外れ、過大な要求、過小な要求、プライバシー侵害)や性的指向・性自認に関する精神的攻撃が心理的負荷評価表に加わりました。労働基準監督署は、トラブルではなく、あくまでもハラスメントとして調査をすることになります。
②既往症があってもOK =発症後の出来事も調査対象に!
これまでは精神障害の既往症があった場合には、悪化する6ヵ月以内に「特別な出来事」(生死にかかわる労災、レイプ、1ヵ月に16 0時間を超えるような長時間労働)がなければ、労災認定されませんでした。
ところが、今回の改正で、「業務による強い心理的負荷」があれば、「悪化した部分について」労災認定することになったのです。
つまり治療しながら働いていた被災者が、職場のストレス等で働けなくなってしまった場合、働けるようになるまでは労災として認めるということです。
この改正の影響は既往症があった場合に限りません。精神障害を発症して、ただちに医療機関にかかる人は多くありません。職場のストレスでしんどい思いをしながらも、生活のため、会社のために、休まないで必死で働<労働者がほとんどです。病識のないことも少なくありません。そうした被災者が、上司からの退職勧奨やハラスメントを受けて、いよいよ働けなくなってから、初めて医療機関にかかるのです。それで労災請求すると、労働基準監督署は、発症時期を特定することになります。本人は当然正直に、実は半年ほど前から眠れなくて大変で時々遅刻してしまって叱責されて・・・などと、主治医や監督署の調査で言うと、発症は半年前となってしまい、その後の6ヶ月間に起きたこと、多くの場合最後のダメ押しとなった出来事すら、全く調査の対象にならないのです。
今回の改正で、発症は6ヶ月前としても、それが悪化したという視点から、休業前6ヶ月の出来事が調査対象となり、休業が必要な期間だけは支給される可能性が大きくなりました。
③新型コロナなど感染症等のリスクを心理的負荷として明記
心理的負荷評価表に「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した」という出来事が加わりました。
「強」となる例としては、「新興感染症の感染の危険性が高い業務等に急逮従事することとなり、防護対策も試行錯誤しながら実施する中で、施設内における感染等の被害拡大も生じ、死の恐怖等も感じつつ業務を継続した」と記されています。実際新型コロナ感染症の拡大に伴って、多くの医療・福祉労働者が大きなストレスにさらされたことは周知の事実です。
厚生労働省が毎年発表している精神障害の労災認定件数を見ると、元々医療・福祉労働者の請求件数は多かったのですが、明らかに新型コロナ感染症の感染拡大以降、少なくとも請求件数が急増しています。2018年度(平成30年度)の請求件数が320件で支給決定件数が70件、2019年度(令和元年度)の請求が426件で、支給決定件数は78件でした。2020年度(令和2年度)には請求件数が488件で、支給決定件数が148件となりました。その後も2021年度(令和3年度)は請求件数577件で、支給決定件数142件、2022年度(令和4年度)は請求件数624件で支給決定件数164件です。必ずしも業務上認定されるとは限らないようですが、多くの医療・福祉労働者の精神的負担が大きくなっていることは間違いないでしょう。
④安易な労災打ち切りを否定職場・社会復帰の促進
改正通達では、「第7療養及び治ゆ」について、「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会報告書(令和5年7月)」の「療養及び治癒について」(33~34ページ)を大幅にそのまま引用しています。その中で、全国労働安全センターが徹底的に批判した部分が、通達には引用されませんでした。
それは「・・・職場復帰が可能とならない場合も含め、医学的知見を踏まえ、療養開始から1年6ヵ月~3年経過した時点で、主治医の意見を踏まえつつ、専門医にも症状固定の有無等に係る医学的判断を求め、個別にその状況を確認していくことも重要である。」という部分です。
実際には1年程度で突然補償を打ち切られる被災者もいれば、5年、10年以上と、療養 が長期にわたっている被災者がいます。必要なのは上記のようなスクーリングではなくて、職場ないし社会への復帰を促進することです。治療が長くなって苦しいのは、労災保険財政や医師ではなくて、本人や家族です。「専門医」は医師である以上、症状固定の判断ではなくて、むしろ必要な治療的アドバイスをするべきです。
そして上記報告書では、「在職中の労働者の円滑な職場復帰については、これを支援する事業主の取組も極めて重要である。療養を継続しながら就労することが可能と医師が認める被災労働者の社会復帰を促進する体制整備が重要であり、今後、医療機関及び関係行政機関等との連携等、被災労働者の社会復帰支援に関する取組を引き続き検討していくことが必要と考える」(報告書34ページ)、としています。労災認定基準=補償に関する専門検討会が、社会復帰支援の重要性を指摘していることは、注目すべきことです。
♦ハラスメント相談、職場復帰・改善は一人でも入れる労働組合へ
職場のハラスメント相談は高止まり状態です。厚生労働省が行っている総合労働相談で、「民事上の個別労働紛争」の27万2185件のうち、「いじめ・嫌がらせ」が6万9932件(21.1%)と、この間ずっと第1位です。他の行政機関や当センターやユニオンの相談でも、同じような傾向が続いています。
加害者に責任があることは言うまでもありません。しかしながらそれを放置、時には助長するような職場環境、労働条件そのものを原因があることも少なくありません。ハラスメントについては、相談体制の整備しか法的な義務がありませんし、それが十分に機能していないからこそ、行政機関等への相談件数が減らないのです。やはり解決にはきちんとした労使交渉が必要であり有効です。
♦相談すれば道は開ける!事例紹介
①労災認定で不当解雇を撤回、9年ぶりの職場復帰を実現
大手電機メーカーの研究所で働いていたAさん。上司から長時間叱責を受けたり、夜中にもメールが来て、なぜ返事をしないのかなど間い詰められるなど、過重労働が続きました。産業医の勧めもあって精神科に受診したところ、うつ病と診断され休業を余儀なくされました。労災請求中に、会社は休職期間満了で解雇を予告。
「規則だから仕方がない」という労働組合を脱退して、ユニオンに加入しました。会社は労災と認めず、いったんは解雇されましたが、労災認定を勝ち取り、ただちに撤回させました。
それでも会社は、ハラスメントは確認できなかった、職場にいるのは事実だが、あくまでも自己啓発時間であるなどと主張。代理人弁護士は、「これからは成果で賃金を払う時代だ」、「本当に病気なのか」などの暴言を吐くなどしました。しかしながら粘り強い交渉を重ねた結果、労働時間管理のあり方の改善やハラスメント事案の全社への通知などを実現しました。そしていよいよ今年の4月、 9年ぶりに職場復帰。今のところ、主にオンラインによる遠隔地勤務ですが、元気に働いています。なお、会社には損害賠償も請求中です。
②上司のパワハラで休業した営業職員が早期職場復帰
大手生命保険会社で働く営業職のBさん。出産、育休も経て10年余り働いてきました。ところが営業所の上司からハラスメントを受けるようになりました。支社の上司に相談をしたのですが、何もしてくれません。精神的にまいってしまい休業を余儀なくされました。 Bさんはインターネットでいろいろ調べて、 安全センターに相談。医療機関を受診し、病気休職に入りました。幸い症状は軽かったため、事実関係の調査や上司の処分も含む一日も早い職場復帰を目指す交渉を開始しました。会社の調査の結果ハラスメントが明らかになったため、上司を異動するなどの措置を講じました。Bさんは約10ヵ月後に職場復帰を実現し、今も元気に働いています。
③サポートのない業務、同僚の退職、長時間の叱責を軽視され労災不支給。労災審査請求と解雇無効の裁判へ
人事・総務の仕事は幅広いものです。中小企業では一人何役もこなすとはいえ、採用時に聞いていない仕事をいろいろすることになりました。とくにメンタル不調の社員への対応はとても難しいものです。
Cさんは以前の会社での経験も活かして努力しましたが、全くサポートがありません。同時期に入った同僚がやめてしまい、さらに対応をめぐって長時間かつ理不尽な叱責を受けて、体調を崩してしまいました。
労災請求したのですが、業務量にさほど変化はない=「弱」、上司とのトラブルも大したことではない=「弱」と決めつけられて不支給となりました。会社からも解雇されました。
Cさんは、一人でも入れる労働組合の支援も受けて、解雇無効の裁判と、労災保険の審査請求中です。
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9月1日、厚生労働省は精神障害の労災認定基準を約12年ぶりに改正しました。職場のストレスを例示した「業務による心理的負荷評価表」を拡充したもので、カスタマーハラスメント、性的指向などの差別が加えられたことは、以前から報道されています。実は、この間の労災判例(労基署が業務外としたが裁判所は労災と認めた)等を参考にしたもので、画期的な大改正です。労災認定は難しいと、請求そのものを諦めてしまっている被災者は少なくありません。あるいは労災が不支給になってしまい、裁判はおろか審査請求すらしない人も多いでしょう。
「働き方改革」関連法が施行されてから数年が経過しています。人手不足もあって、一部の企業では働きやすい職場づくりが進められています。一方で、相変わらず職場のハラスメント相談は後を絶ちません。そして、被害者が相談しても全く改善しなかった、相談することもなく退職を余儀なくされたといった実態は、自衛隊のセクハラ問題に限りません。やはり一般的な相談ではなくて、労働組合に加入して、会社の責任で対応・再発防止を要求していく必要があります。労災請求するにしても、労働時間やハラスメントの事実関係の認定については、労働基準監督署に任せるのではなく、職場の同僚などの協力が非常に重要です。
♦どこが画期的な大改正なのか?
①ハラスメントが「強」に位置付けられた!
これまでは、職場でハラスメントに遭ったとして労災請求しても、「パワーハラスメント」の内容が限定的で、「ひどいいじめ・嫌がらせを受けた」と同じような、暴行や人格否定発言がなければ、むしろ「上司とのトラブル」と決めつけられることが多いのが実態です。そして、「ひどいいじめ・嫌がらせ」の基本的な評価は「強」なのですが、「上司とのトラブル」は「中」です。つまり労災になる可能性は非常に低くなります。厚労省が毎年発表している、出来事別の請求と支給決定件数を比較すれば明らかです。
改正された認定基準では、心理的負荷評価表の「パワーハラスメントを受けた」という項目で、ハラスメントの6類型(人格否定発言、強い叱責、仲間外れ、過大な要求、過小な要求、プライバシー侵害)や性的指向・性自認に関する精神的攻撃が心理的負荷評価表に加わりました。労働基準監督署は、トラブルではなく、あくまでもハラスメントとして調査をすることになります。
②既往症があってもOK =発症後の出来事も調査対象に!
これまでは精神障害の既往症があった場合には、悪化する6ヵ月以内に「特別な出来事」(生死にかかわる労災、レイプ、1ヵ月に16 0時間を超えるような長時間労働)がなければ、労災認定されませんでした。
ところが、今回の改正で、「業務による強い心理的負荷」があれば、「悪化した部分について」労災認定することになったのです。
つまり治療しながら働いていた被災者が、職場のストレス等で働けなくなってしまった場合、働けるようになるまでは労災として認めるということです。
この改正の影響は既往症があった場合に限りません。精神障害を発症して、ただちに医療機関にかかる人は多くありません。職場のストレスでしんどい思いをしながらも、生活のため、会社のために、休まないで必死で働<労働者がほとんどです。病識のないことも少なくありません。そうした被災者が、上司からの退職勧奨やハラスメントを受けて、いよいよ働けなくなってから、初めて医療機関にかかるのです。それで労災請求すると、労働基準監督署は、発症時期を特定することになります。本人は当然正直に、実は半年ほど前から眠れなくて大変で時々遅刻してしまって叱責されて・・・などと、主治医や監督署の調査で言うと、発症は半年前となってしまい、その後の6ヶ月間に起きたこと、多くの場合最後のダメ押しとなった出来事すら、全く調査の対象にならないのです。
今回の改正で、発症は6ヶ月前としても、それが悪化したという視点から、休業前6ヶ月の出来事が調査対象となり、休業が必要な期間だけは支給される可能性が大きくなりました。
③新型コロナなど感染症等のリスクを心理的負荷として明記
心理的負荷評価表に「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した」という出来事が加わりました。
「強」となる例としては、「新興感染症の感染の危険性が高い業務等に急逮従事することとなり、防護対策も試行錯誤しながら実施する中で、施設内における感染等の被害拡大も生じ、死の恐怖等も感じつつ業務を継続した」と記されています。実際新型コロナ感染症の拡大に伴って、多くの医療・福祉労働者が大きなストレスにさらされたことは周知の事実です。
厚生労働省が毎年発表している精神障害の労災認定件数を見ると、元々医療・福祉労働者の請求件数は多かったのですが、明らかに新型コロナ感染症の感染拡大以降、少なくとも請求件数が急増しています。2018年度(平成30年度)の請求件数が320件で支給決定件数が70件、2019年度(令和元年度)の請求が426件で、支給決定件数は78件でした。2020年度(令和2年度)には請求件数が488件で、支給決定件数が148件となりました。その後も2021年度(令和3年度)は請求件数577件で、支給決定件数142件、2022年度(令和4年度)は請求件数624件で支給決定件数164件です。必ずしも業務上認定されるとは限らないようですが、多くの医療・福祉労働者の精神的負担が大きくなっていることは間違いないでしょう。
④安易な労災打ち切りを否定職場・社会復帰の促進
改正通達では、「第7療養及び治ゆ」について、「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会報告書(令和5年7月)」の「療養及び治癒について」(33~34ページ)を大幅にそのまま引用しています。その中で、全国労働安全センターが徹底的に批判した部分が、通達には引用されませんでした。
それは「・・・職場復帰が可能とならない場合も含め、医学的知見を踏まえ、療養開始から1年6ヵ月~3年経過した時点で、主治医の意見を踏まえつつ、専門医にも症状固定の有無等に係る医学的判断を求め、個別にその状況を確認していくことも重要である。」という部分です。
実際には1年程度で突然補償を打ち切られる被災者もいれば、5年、10年以上と、療養 が長期にわたっている被災者がいます。必要なのは上記のようなスクーリングではなくて、職場ないし社会への復帰を促進することです。治療が長くなって苦しいのは、労災保険財政や医師ではなくて、本人や家族です。「専門医」は医師である以上、症状固定の判断ではなくて、むしろ必要な治療的アドバイスをするべきです。
そして上記報告書では、「在職中の労働者の円滑な職場復帰については、これを支援する事業主の取組も極めて重要である。療養を継続しながら就労することが可能と医師が認める被災労働者の社会復帰を促進する体制整備が重要であり、今後、医療機関及び関係行政機関等との連携等、被災労働者の社会復帰支援に関する取組を引き続き検討していくことが必要と考える」(報告書34ページ)、としています。労災認定基準=補償に関する専門検討会が、社会復帰支援の重要性を指摘していることは、注目すべきことです。
♦ハラスメント相談、職場復帰・改善は一人でも入れる労働組合へ
職場のハラスメント相談は高止まり状態です。厚生労働省が行っている総合労働相談で、「民事上の個別労働紛争」の27万2185件のうち、「いじめ・嫌がらせ」が6万9932件(21.1%)と、この間ずっと第1位です。他の行政機関や当センターやユニオンの相談でも、同じような傾向が続いています。
加害者に責任があることは言うまでもありません。しかしながらそれを放置、時には助長するような職場環境、労働条件そのものを原因があることも少なくありません。ハラスメントについては、相談体制の整備しか法的な義務がありませんし、それが十分に機能していないからこそ、行政機関等への相談件数が減らないのです。やはり解決にはきちんとした労使交渉が必要であり有効です。
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①労災認定で不当解雇を撤回、9年ぶりの職場復帰を実現
大手電機メーカーの研究所で働いていたAさん。上司から長時間叱責を受けたり、夜中にもメールが来て、なぜ返事をしないのかなど間い詰められるなど、過重労働が続きました。産業医の勧めもあって精神科に受診したところ、うつ病と診断され休業を余儀なくされました。労災請求中に、会社は休職期間満了で解雇を予告。
「規則だから仕方がない」という労働組合を脱退して、ユニオンに加入しました。会社は労災と認めず、いったんは解雇されましたが、労災認定を勝ち取り、ただちに撤回させました。
それでも会社は、ハラスメントは確認できなかった、職場にいるのは事実だが、あくまでも自己啓発時間であるなどと主張。代理人弁護士は、「これからは成果で賃金を払う時代だ」、「本当に病気なのか」などの暴言を吐くなどしました。しかしながら粘り強い交渉を重ねた結果、労働時間管理のあり方の改善やハラスメント事案の全社への通知などを実現しました。そしていよいよ今年の4月、 9年ぶりに職場復帰。今のところ、主にオンラインによる遠隔地勤務ですが、元気に働いています。なお、会社には損害賠償も請求中です。
②上司のパワハラで休業した営業職員が早期職場復帰
大手生命保険会社で働く営業職のBさん。出産、育休も経て10年余り働いてきました。ところが営業所の上司からハラスメントを受けるようになりました。支社の上司に相談をしたのですが、何もしてくれません。精神的にまいってしまい休業を余儀なくされました。 Bさんはインターネットでいろいろ調べて、 安全センターに相談。医療機関を受診し、病気休職に入りました。幸い症状は軽かったため、事実関係の調査や上司の処分も含む一日も早い職場復帰を目指す交渉を開始しました。会社の調査の結果ハラスメントが明らかになったため、上司を異動するなどの措置を講じました。Bさんは約10ヵ月後に職場復帰を実現し、今も元気に働いています。
③サポートのない業務、同僚の退職、長時間の叱責を軽視され労災不支給。労災審査請求と解雇無効の裁判へ
人事・総務の仕事は幅広いものです。中小企業では一人何役もこなすとはいえ、採用時に聞いていない仕事をいろいろすることになりました。とくにメンタル不調の社員への対応はとても難しいものです。
Cさんは以前の会社での経験も活かして努力しましたが、全くサポートがありません。同時期に入った同僚がやめてしまい、さらに対応をめぐって長時間かつ理不尽な叱責を受けて、体調を崩してしまいました。
労災請求したのですが、業務量にさほど変化はない=「弱」、上司とのトラブルも大したことではない=「弱」と決めつけられて不支給となりました。会社からも解雇されました。
Cさんは、一人でも入れる労働組合の支援も受けて、解雇無効の裁判と、労災保険の審査請求中です。