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労災職業病・安全衛生の取り組み
建設アスベスト給付金
請求権者の限定は不当 国賠訴訟を提訴
2023/09/22
建設作業に従事し、アスベストによる健康被害を受けた被害者とその遺族が、国と建材メーカーを被告として、全国各地で争われてきた建設アスベスト訴訟は、2021年5月17日に最高裁が原告勝訴となる判決を言い渡しました。
最高裁判決を受けて、当時の菅首相は、原告代表らに直接謝罪を行ないました。そして当時の田村厚生労働大臣は、原告に謝罪を行なうと共に、 「係属中の建設アスベスト訴訟の原告の方々と、和解を進めてまいります。また、既に石綿関連疾患を発症し、あるいは将来発症する方々も、多数いらっしゃるものと認識しております。こうした方々に対する給付制度の実現のため、与党における法案化に、最大限協力してまいります。」と表明したのでした。
そして2021年6月には「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」 (以下「建設アスベスト給付金法」という)が成立し、2022年4月から施行されていました。
こうした展開は、13年間に渡る原告団と弁護団の取組みの積み重ねがあったからこその成果です。
♦建設アスベスト給付金法の概要
この建設アスベスト給付金制度において、給付の対象者となるのは次の3点を全て満たす方となっています。
第1点は、特定石綿ばく露建設業務に従事した方です。特定石綿ばく露作業とは、石綿吹付け作業については昭和47年10月1日から昭和50年9月30日までの期間、屋内作業については昭和50年10月1日から平成16年9月30日までの期間に屋内作業に従事された方が対象となっています。屋内作業とは、「屋根があり、側面の面積の半分以上が外壁などに囲まれ、外気が入りにくいことにより、石綿の粉じんが滞留するおそれのある作業場」と定めています。
2点日は、特定石綿ばく露建設業務に従事したことにより、石綿関連疾患にかかった方です。
3点目は、労働者や一人親方等で有った方(その遺族)です。給付金の支給対象者となる遺族については、①配偶者、②子、③父母、④孫、⑤祖父母、⑥兄弟姉妹の順となっています。
給付金の金額については、石綿関連疾患により死亡した場合は1,300万円、治療中の方については1,150万円等となっています。
この建設アスベスト給付金制度において、労災保険の支給決定を受けている方については、「労災支給決定等情報提供サービス」(以下「情報提供サービス」という)制度が設けられています。給付金を受ける対象者に該当するか否かを、本請求を行なう前に事前に調査するという制度です。厚生労働省曰く「請求手続きの利便性の向上を図るため」として、申請をおこなえば無料で「青報を提供するサービスを行なっています。
♦給付金の請求権者がいなくなったケース
一人親方の電工として長く建築現場で働いてきたAさんは、2019年10月に悪性胸膜中皮腫を発症しました。病状の悪化は早く、2020年1月2日に逝去されました。Aさんは独り暮らしであったため、お兄さんのBさんが労災保険の請求を行いました。Aさんは、労災保険の特別加入をしていたため、Bさんに遺族補償一時金が支給されました。
その後、建設アスベスト給付金法が施行されることとなり、Bさんの元に厚生労働省から給付金に関する個別周知が届きました。そこでBさんは、2022年2月22日に「情報提供サービス」の申請を行い、同年6月2日付けで給付金の支給対象者として「該当」するとの通知が届きました。
早速6月13日には、給付金の請求を行ったのですが、Bさんは体調を崩され同年8月7日に逝去されました。
前述したとおり、給付金の支給対象者は、①配偶者、②子、③父母、④孫、⑤祖父母、⑥兄弟姉妹の順となっているため、Bさんが亡くなられたことにより、請求権者が誰もいなくなってしまいました。
給付金は、長年の裁判闘争を通じて原告団と弁護団が勝ち取った制度で、国の責任を前提とする損害賠償(慰謝料)請求権を、迅速に救済を図る行政救済制度として設けられたものです。
今回の問題は、①民法上の損害賠償請求権者(相続人)と給付金請求権者の範囲が異なるという間題と、②給付金請求権者が給付金を請求していたにもかかわらず、国が迅速に支給決定を行わなかったために、支給が決定される前に請求権者が亡くなってしまったという問題があります。
♦請求権者の範囲と処理の遅さの問題
給付金の問題については、本年7月12日に行われた、アスベスト患者と家族の会と厚生労働省との交渉においても取り上げられていました。
情報提供サービスの請求をおこなっても、その後の給付金請求を行っても、「時間がかかり過ぎる」という声や、「追加の資料提供を次々と求められる」「請求を行ったが何度も『取下げてはどうか』と言われた」という相談が数多く寄せられているからです。
今回の請求権がなくなった件についても、厚労省に回答を求めました。
「ちょっと時間を要していたというのは…大変申し訳なく思っている。以前に比べて、人員を増やしたりとか…弾力的に人員体制を組んだりとか…何とか迅速な認定審査に努めてまいりたいと思います。」と今後の決意だけ
が述べられたのでした。
9月6日、Aさんの遺族であり、国に対する損害賠償請求権を相続した法定相続人が原告となり、国に対する国家賠償請求訴訟を神戸地裁に提起しました。
提訴後の会見において、Aさんの姪にあたるDさんは、「父が亡くなったと国に連絡を入れた際、『これで終わりです』と言われショックだった。」「叔父とはずっと一緒に生活していて、私にとっては父のような存在だったが、国に家族ではないと言われている気がした。」「請求者である父が亡くなるのを待っているのかなと思うことがあった。そういう思いをさせないでいただきたい。」と訴えていました。
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最高裁判決を受けて、当時の菅首相は、原告代表らに直接謝罪を行ないました。そして当時の田村厚生労働大臣は、原告に謝罪を行なうと共に、 「係属中の建設アスベスト訴訟の原告の方々と、和解を進めてまいります。また、既に石綿関連疾患を発症し、あるいは将来発症する方々も、多数いらっしゃるものと認識しております。こうした方々に対する給付制度の実現のため、与党における法案化に、最大限協力してまいります。」と表明したのでした。
そして2021年6月には「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」 (以下「建設アスベスト給付金法」という)が成立し、2022年4月から施行されていました。
こうした展開は、13年間に渡る原告団と弁護団の取組みの積み重ねがあったからこその成果です。
♦建設アスベスト給付金法の概要
この建設アスベスト給付金制度において、給付の対象者となるのは次の3点を全て満たす方となっています。
第1点は、特定石綿ばく露建設業務に従事した方です。特定石綿ばく露作業とは、石綿吹付け作業については昭和47年10月1日から昭和50年9月30日までの期間、屋内作業については昭和50年10月1日から平成16年9月30日までの期間に屋内作業に従事された方が対象となっています。屋内作業とは、「屋根があり、側面の面積の半分以上が外壁などに囲まれ、外気が入りにくいことにより、石綿の粉じんが滞留するおそれのある作業場」と定めています。
2点日は、特定石綿ばく露建設業務に従事したことにより、石綿関連疾患にかかった方です。
3点目は、労働者や一人親方等で有った方(その遺族)です。給付金の支給対象者となる遺族については、①配偶者、②子、③父母、④孫、⑤祖父母、⑥兄弟姉妹の順となっています。
給付金の金額については、石綿関連疾患により死亡した場合は1,300万円、治療中の方については1,150万円等となっています。
この建設アスベスト給付金制度において、労災保険の支給決定を受けている方については、「労災支給決定等情報提供サービス」(以下「情報提供サービス」という)制度が設けられています。給付金を受ける対象者に該当するか否かを、本請求を行なう前に事前に調査するという制度です。厚生労働省曰く「請求手続きの利便性の向上を図るため」として、申請をおこなえば無料で「青報を提供するサービスを行なっています。
♦給付金の請求権者がいなくなったケース
一人親方の電工として長く建築現場で働いてきたAさんは、2019年10月に悪性胸膜中皮腫を発症しました。病状の悪化は早く、2020年1月2日に逝去されました。Aさんは独り暮らしであったため、お兄さんのBさんが労災保険の請求を行いました。Aさんは、労災保険の特別加入をしていたため、Bさんに遺族補償一時金が支給されました。
その後、建設アスベスト給付金法が施行されることとなり、Bさんの元に厚生労働省から給付金に関する個別周知が届きました。そこでBさんは、2022年2月22日に「情報提供サービス」の申請を行い、同年6月2日付けで給付金の支給対象者として「該当」するとの通知が届きました。
早速6月13日には、給付金の請求を行ったのですが、Bさんは体調を崩され同年8月7日に逝去されました。
前述したとおり、給付金の支給対象者は、①配偶者、②子、③父母、④孫、⑤祖父母、⑥兄弟姉妹の順となっているため、Bさんが亡くなられたことにより、請求権者が誰もいなくなってしまいました。
給付金は、長年の裁判闘争を通じて原告団と弁護団が勝ち取った制度で、国の責任を前提とする損害賠償(慰謝料)請求権を、迅速に救済を図る行政救済制度として設けられたものです。
今回の問題は、①民法上の損害賠償請求権者(相続人)と給付金請求権者の範囲が異なるという間題と、②給付金請求権者が給付金を請求していたにもかかわらず、国が迅速に支給決定を行わなかったために、支給が決定される前に請求権者が亡くなってしまったという問題があります。
♦請求権者の範囲と処理の遅さの問題
給付金の問題については、本年7月12日に行われた、アスベスト患者と家族の会と厚生労働省との交渉においても取り上げられていました。
情報提供サービスの請求をおこなっても、その後の給付金請求を行っても、「時間がかかり過ぎる」という声や、「追加の資料提供を次々と求められる」「請求を行ったが何度も『取下げてはどうか』と言われた」という相談が数多く寄せられているからです。
今回の請求権がなくなった件についても、厚労省に回答を求めました。
「ちょっと時間を要していたというのは…大変申し訳なく思っている。以前に比べて、人員を増やしたりとか…弾力的に人員体制を組んだりとか…何とか迅速な認定審査に努めてまいりたいと思います。」と今後の決意だけ
が述べられたのでした。
9月6日、Aさんの遺族であり、国に対する損害賠償請求権を相続した法定相続人が原告となり、国に対する国家賠償請求訴訟を神戸地裁に提起しました。
提訴後の会見において、Aさんの姪にあたるDさんは、「父が亡くなったと国に連絡を入れた際、『これで終わりです』と言われショックだった。」「叔父とはずっと一緒に生活していて、私にとっては父のような存在だったが、国に家族ではないと言われている気がした。」「請求者である父が亡くなるのを待っているのかなと思うことがあった。そういう思いをさせないでいただきたい。」と訴えていました。