- トップ
- < 労災認定の事例
- < 有機溶剤・有害化学物質・感染症記事一覧
- < 有機溶剤・有害化学物質・感染症
労災・職業病・労働環境など
お気軽にご相談ください
TEL 078-382-2118
相談無料・秘密厳守 月〜金: 9:00-18:00 |
家庭内感染者との接触で2度目の感染
労災・職業病・労働環境など
お気軽にご相談ください
TEL 078-382-2118
相談無料・秘密厳守 月〜金: 9:00-18:00 |
労災・職業病・労働環境など
お気軽にご相談ください
相談無料・秘密厳守 月〜金: 9:00-18:00 |
労災・職業病・労働環境など
お気軽にご相談ください
相談無料・秘密厳守 月〜金: 9:00-18:00 |
競輪場において選手の管理業務をおこなう Aさんから相談が寄せられたのは、2021年の秋でした。Aさんが業務を担当していた競輪場において、競走選手間においてコロナ感染者が複数人発生(競輪開催期間中に30人程度の選手が感染)しました。Aさんは感染した選手との接触があり、病院を受診しPCR検査を受けたところ、新型コロナウイルスの感染が確認されました。療養後、症状が落ち着き職場復帰したのですが、罹患後症状が出現しているため労災を請求したいとの相談でした。
♦選手の管理業務で感染
競輪場には「ブレスコントロール室」が設けられています。レースが終了する度に、全競走選手にブレスコントロール室での約10分間の待機を要請し、全選手が息を整えたうえで選手控室に戻ってもらいます。選手はこの約10分間に、汗のついたユニホームやタオルをペーパータオルで拭き、また顔や鼻・ロ等 もペーパータオルで拭きながら息を整えます。
Aさんは、このブレスコントロール室での業務を担当し、選手が使用した椅子や机の周りをアルコールで拭き清め、選手が使用したペーパータオルを回収しーか所に集めます。またAさんは、一日のすべてのレースが終了後に、ゴミをまとめて捨てる作業も行っていました。
Aさんはマスクを着けゴム手袋を着用していましたが、レース終了後の選手たちはマスクを着けない状態で息を整えており、感染した競走選手らと3日間(1日12レースX 10分程度)接触したのでした。そして競輪開催が終了した二日目の夜に発熱し、翌日に発熱外来を受診したところ感染が確認され、即入院となったのでした。
♦罹患後症状として慢性上咽頭炎
Aさんは、9月8日に感染し、入院し、退院後は9月17日までホテル療養しました。9月28日から職場に復帰したのですが、全身倦怠感、味党・嗅覚障害、頭痛、胸部圧迫感、息切れ等々の症状が継続しているため、10月 21日に受診しました。
医師は、「新型コロナウイルス感染症後に出現する症状と類似している」と診断しました。Aさんの場合、上咽頭からの出血が認められ、慢性上咽頭炎との診断名が付きました。 Aさんはその後も通院を続けましたが、「症状が半分程度になった」との主治医の判断により、2021年1月11日で終診となりました。
労災申請をおこなったところ、業務により競走選手らと接触したことが感染の原因と判断し、業務上との決定を受けました。また感染後の罹患後症状についても、2020年10月21日から2021年1月11日までの療養費について業務上との決定を受けました。
♦ 2回目の感染
Aさんは、2022年2月6日からひどい下痢が続き、前年に感染した時と似たような病状であることに気づき、2月8日にPCR検査を受けたところ陽性が確認されました。今回も、 1月25日から27日に開催された競輪開催期間 中に出場していた選手の感染が確認されていたため、業務上での感染が疑われました。
ただ、家族が2月2日に新型コロナ感染症の陽性と判明したため、診察のため病院への車での送迎や付き添いをAさんが行っていたのでした。
Aさんは、2回目の感染後も強い倦怠感や疲労感、胸部の圧迫感が持続したため、大学病院を受診しました。大学病院の医師は、「COVID-19後遺症、筋痛性脳脊髄炎」と診断しました。Aさんは、罹患後の症状が継続し、労作時の呼吸困難もあるため、2022年7月に再び労災の請求を行ったのでした。
♦ 2回目の発症は業務外での感染
監督署は、2回目の新型コロナウイルス感染症の発症が業務によるものかについて調査を行いました。
事業場は、「被災労働者が選手と長時間会話を機会はなく、感染するほどの接触があったとは言えない」と申し立てていました。その結果、監督署は「発症11日前に業務でコロナ感染者等と接触する機会があったものの、接触時間はごく短時間であったこと、発症10日前を最後に出勤の実績が認められないこと、事業場において感染対策が行われていたことが認められる」として、業務で感染した蓋然性が高いとは認められず、業務外での感染であった」と判断しました。
♦罹患後症状は1回目の感染の憎悪
一方、2回目の感染後に出現した症状については、監督署は1回目の罹患後症状が2022年1月11日に「症状が半分程度になったとして終診」としている点に着目し、大学病院の医師や労災協力医に意見を求めました。
大学病院の医師は、「2回目のコロナウイルス罹患後より急に発症しているため、因果関係はあると考えられる」と意見を述べています。また、労災協力医も、「新型コロナ感染症に再感染した場合、 1回目の後遺症症状より症状が重篤化しやすい、との研究報告もなされている」と意見し、さらに「1回目の感染の後遺症症状が持続しており、その後、 1か月経たずに症状が憎悪しているため、2月6日以降に出現した症状は、 1回目の感染による後遺症症状が憎悪したものであると考えられる」との判断を示しました。
そして監督署は、「1回目の感染がなければ、2回目の感染で重篤化しなかったものと考えられるため、2月6日以降に請求人に出現した筋痛性脳脊髄炎等の罹患後症状と当初の発症との相当因果関係が認められる」と判断したのでした。
2回目の労災申請から決定がでるまでに8か月を要しましたが、丁寧な調査が行われ、現在も継続する罹患後症状が業務に拠るものであると認められ、Aさんも喜んでおられます。ただ残念ながらAさんは、先日3回目の感染が確認され、今後の罹患後症状の変化が気になるところです。