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日本冷熱における石綿被害
不当労働行為事件 中労委で和解
損害賠償訴訟は証人調べへ

2023/07/21
♦経過

日本冷熱(本社は長崎市)で働き、造船所での保温工事作業や天草工場でのFRP製品の製造作業に従事したAさんから、アスベストユニオンヘの相談があったのは2020年3月のでした。 
「振動障害による労災を認められ、その後に右綿による肺がんを発症したが、会社から何ら謝罪も補償もない」という内容でした。

そこでアスベストユニオンは、2020年6月に団体交渉を申し入れました。ところが、団体交渉が行われるまでに5か月間を要したうえに、団体交渉においては会社から委任を受けた代理人が不誠実な交渉態度に終始しました。そのため労働組合の所在地である神奈川県労働委員会に対して、2020年12月15日に不当労働行為の救済申立てをおこないました。

その結果、神奈川県労働委員会は、2022年 5月11日に、団体交渉における会社の不誠実な交渉態度は、労働組合法第7条第2項に該当する不当労働行為であると認定する命令を出しました。 

「資料や情報の提供の可否について検討結果を説明したり、検討の上で資料や情報の提供をする機会を設けたりすることが可能であった」「訴訟が想定されること等を理由に組合の要求を拒否した行為は、合意形成の可能性を真摯に模索しようとする姿勢がうかがえず、・・・団交での日本冷熱の取った対応は不誠実と認められる」といった内容でした。
しかし、会社側が中央労働委員会へ再審査の申立てを行なったため、争いが更に続いていました。


♦舞台は中労委ヘ

2022年9月26日に、中労委の第1回調査期日が行なわれました。ユニオンとしてはこれ以上の長期化を避けるため、直ちに命令を求める姿勢で望みました。ところが中労委からは、ユニオンが要求した資料を会社側から提供するように求めるので、和解することを強く促されました。

第2回調査期日では、ユニオンが要求書で求めていた資料が会社側から提供され、中労委からは「和解案」が示されました。和解案は、①誠実な団体交渉を行なうことを確認する、②組合に資料を開示したことを確認する、③会社は遺憾の意を表明する、④組合に対して解決金を支払う、という内容でした。

この和解案に対して、ユニオンは①について誠実な団体交渉の開催を求め、③については表現が弱いことを訴えました。中労委からは、労働者委員と使用者委員の立会いのもとで団体交渉を行なうことが提案され、ユニオンと会社の双方が受け入れたのでした。


♦長崎での立会い団交

立会い団交は、2023年1月27日に長崎市内において開催され、組合員Aさんも参加しました。

交渉において会社側は、「初審命令において不当労働行為が認定された事実について、法人として真摯に受け止める」「長きにわたり会社に尽くしていただいたAさんに誠実に対応するためにも、解決できる部分は1つずつ前向きに取り組む」「Aさんの27年間の会社への貢献に感謝申し上げます」との発言がありました。

しかし、Aさんが仕事により振動病と肺がんを発病した事への謝罪はなく、ユニオンは「突っ込んだ労いの言葉はないのか」と問いました。それの回答は、「病気を発症され大変苦しい部分があると思うので、それを含めて先ほどの言葉を会社の考えとして伝えた。一つずつ前に向きに取り組もうと考えている」との内容でした。

さらに組合から、「損害賠償訴訟が熊本地裁で係争中であるが、先日の期日において、裁判所から和解についての打診があった。これ以上、争いを長引かせないために、会社は裁判所からの和解について誠実に検討を行うよう要請する」旨を申し入れました。それに対しても会社は、「解決できる部分は一つずつ取り組もうと判断している」と回答したのでした。


♦会社は損害賠償事件で和解を拒否

立会い団交を受けて、3月8日に開かれる中労委の第3回調査期日において、和解が成立する予定でした。

一方、損害賠償訴訟においては、1月の期日において裁判所から和解について原告・被告双方に打診があり、原告側は和解案をまとめ書面を提出していました。  
3月1日に開かれた期日において、裁判所から和解についての意見を聞かれた被告は、「検討したが、和解については打ち切りを」と和解解決を一蹴したのでした。立会い団交において、会社は何度も「解決できる部分は、一つずつ前向きに取り組む」と回答しましたが、会社の表明はあくまでも中労委対策の二枚舌だったのです。

そのため、中労委の第3回期日での和解は成立せず、さらに協議が継続することとなりました。


♦ 「和解への熱意が足らない」?!

4月20日に開かれた第4回調査期日において、ユニオンから補償問題についても団体交渉を申し入れれば、会社は誠実に対応することを確認。そのうえで、①会社と組合は、誠実な団体交渉を行なうことを確認する、②会社は、本件における団体交渉について、本件初審命令が発せられるに至ったことに対して陳謝する、③会社は、組合に対し解決金を支払う、という内容で和解となりました。

会社側代理人は、「裁判所の和解協議が進まなかったのは、原告側代理人の和解への熱意が足りなかったからだ」と、帰り際にわざわざユニオンに言ってから立ち去っていきました。


♦損賠訴訟は証人調ベヘ

その後、5月15日に損害賠償事件の期日が開かれました。中労委での和解を受けて、原告代理人から、被告の和解に対する考え方を問いました。会社側代理人からは、「中労委と裁判は別。和解に応じられるのは、日本冷熱に責任がないことを前提とした見舞金の支払いである」と、中央委でのコメントとは全く異なり、争う姿勢満々の態度が示されました。会社側代理人は、その場その場で態度を変え、誠実に対応しようとしません。

原告側は、Aさんと同僚らの証人申請を行ないました。10月11日と25日には証人調べが行なわれます。また、長崎市内にあった日本冷熱の工場において、造船所で使用する保温剤や防熱剤を製造する作業に従事し、悪性胸膜中皮腫を発症し亡くなられた方のご遺族がユニオンに加入されました。日本冷熱においては石綿による労災認定者が多数出ており、ユニオンとして企業補償制度の創設等を要求課題として団体交渉の開催を求めていきます。日本冷熱との闘いはまだまだ続きます。
 

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