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中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会

中皮腫サポートキャラバンin九州

2019/11/20
◆患者が生み出すカ

2019年10月から11月の2ヵ月間、「中皮腫.アスベスト疾患・患者と家族の会」の福岡支部と南九州支部の主催による「九州キャラバン」が取り組まれた。中皮腫サポートキャラバン隊の皆さんの協力を得て、福岡・佐賀・長崎・熊本・鹿児島の5県で、アスベスト患者と家族の会の集いが開催された。

今から約2年前の2017年11月、中皮腫の患者さんである栗田英司さん、右田孝雄さん、田中奏美さんの3名を招いた講演会が博多で開催された。講演会には多くの参加者があり、マスコミの反響も大きかった。

◆キャラバンのスタート

福岡支部では、2018年に開催された北海道キャラバンに複数の事務局メンバーが参加し、患者さんとご家族が自らの体験を話されている姿に感動し、「ぜひ九州においても各地で交流会を開催したい」との議論が始まった。

そして昨年1月には、事務局メンバーと患者さんが集まり、ピアサポート講座を受講した。また南九州支部でも、会員が固定化する中で、「会の活動をマスコミに活動を取り上げてもらうにはどうしたらいいのか」「会員が高齢化してきているので、次につなげるためにどうしたらいいのか」という課題を、皆で話しを掘り下げて議論を行っていた。そうした中で、福岡支部の九州各地での交流会閲催の思いと、南九州支部の思いが一致し、合同で九州キャラバンを取り組むことになったのであった。


◆5県5会場に110人の参加

【福岡県・北九州市】
福岡会場は、10月13日(日)に北九州保健福祉センター(北九州市)で関催された。中皮腫の患者さん8名、肺ガンの患者さん1名を含め25名の参加があった。胸膜中皮腫の患者さんの藤原妙子さん(兵庫)、黒木公明さん(山口)、右田孝雄さん(大阪)が体験を話され、交流が行われた。福岡会場の特徴は、女性の胸膜中皮腫の患者さん4名とそのご家族が参加されたことである。そのため、交流会の終了後も、テーブルを囲んでの女子会が活発に行われていたのが特徴的であった。

【佐賀県・鳥栖市】
佐賀会場は、10月27日(日)に鳥栖まちづくり推進センター(鳥栖市)で開催された。中皮腫の患者さん3名を含め15名の参加があった。ご主人が胸膜中皮腫の患者さんであった小菅千恵子さん(埼玉)と右田孝雄さん(大阪)が経験を話され、交流が行われた。烏栖市には石綿管を製造していた会社があったため、工場周辺に居住し胸膜プラークの所見がある方や工場で働いていた方のご家族が、相談会に来られた。

また、元看護士で中皮腫を発症され治療中の方が、午前の相談会からご夫婦で参加された。「なぜ病気になったのか分からない」と悩んでおられたが、「手術用手袋の再利用作業に従事されませんでしたか?」と尋ねると、顔色が変わり驚かれた。就職し最初に配属されたのが手術室で、手袋の再利用のためタルクを使用した経験があったからである。さらにお話を伺うと、間もなく治療開始から2年を迎えることが分かり、時効を止めるためさっそく労災保険の休業補償請求が行われた。

【長崎県・長崎市】
長崎会場は、11月10日(日)に長崎商工会議所(長崎市)で閲催された。中皮腫の患者さん4名と肺ガンの患者さん1名を含め17名の参加があった。集いでは、胸膜中皮腫の患者さんの田中奏美さん(北海道)と俣野利通さん(長崎)が経験を話され、お父さまが胸膜中皮腫の患者さんであった田上玲子さん(幅岡)が体験を話され、皆で交流が行われた。

中皮腫と診断された後、病院との関係、主治医との関係で苦労されたお話が紹介され、皆で共有することが出来た。
会場には、胸膜中皮腫を発症された方の娘さんが、午前中の相談会から参加されていた。鳥栖会場には妹さんが、長崎会場にお姉さんが参加されたのであった。また相談会には、腹膜中皮腫を発症された方の娘さんも参加されていた。労災請求を行ったが、会社の協力がなかなか得られず相談に来られたのであった。彼女は午後の集いにも参加され、お家に帰りその様子を皆に話したところ、お父さんは「熊本の集まりに参加したい」と言われたそうである。

他にも、以前会員だった方が参加され、「主人も治療中に皆さんに会えたら良かったのに…」と感想を話されていた。

【熊本県・熊本市】
熊本会場は、11月16日(土)に熊本学園大学(熊本市)で開催された。中皮腫の患者さん9名を含め36名の参加がありました。患者さんの勝沼範和さん(胸膜中皮腫・北海道)と鹿川真弓さん(腹膜中皮腫・沖縄)、右田孝雄さん(胸膜中皮腫・大阪)のお話と、お図さまが胸膜中皮腫の患者さんであった松島和江(埼至)さんが体験を話され、交流を行った。26歳で腹膜中皮腫を発症し、2回の手術を乗り越え、15年間闘病されている鹿川さんから、「ナンクルナイサ(なんとかなるよ)」と思い、「小さなことにも目的をもって向き合うことが大切」のお話は、参加した皆を勇気づけた。

また、長崎会場の模様を聞いた腹膜中皮腫の患者さんは、ご家族3人で、朝早くお家を出られ、フェリーに乗り、会場まで来られた。熊本会場には腹膜中皮腫の患者さんが4名参加されており、同じ病気の患者さんが居ることが分かり、お話をする中で笑顔が増えていった。
そして、鳥栖会場に参加された元看護士の方も、「皆さんともっとお話がしたい」と福岡からご夫婦で参加されていた。

【鹿児島県・鹿児島市】
鹿児島会場は、11月17日(日)に宝山ホール(鹿児島市)で開催された。中皮腫の患者さん3名を含め17名の参加があった。集いでは、勝沼範和さん(胸膜中皮腫・北海道)、右田孝雄さん(胸膜中皮腫・大阪)、松島和江(埼玉)さんが体験を話され、交流が行われた。
朝の相談会には、遠く大分県から、「家を6時に出発した」というご夫婦が来られた。

お父さんが、2006年に精巣鞘膜中皮腫を発症し、何度も手術を繰り返し、2018年に違う病名で亡くなられたとのこと。労災の休業補償を受給していたが、遺族補償を受けることができず相談に来られたのであった。お父さんは、「以前から患者と家族の会について知っていたが、大分県での集まりが無かったため、参加する機会が無かった」と話されていた。

また、石綿肺ガンを発症し8年間闘病されている方のご家族の参加もあった。この方も、新聞を読んで、初めて「患者と家族の会」を知り参加されたのであった。この方は、肺がんだけでなく、他臓器のガンも複数発症されているが、ご本人の生きる姿勢を聞き、参加者が逆に勇気づけられた。


◆身近な場での交流の必要性

今回の九州キャラバンは、初めての取り組みであったが、5会場に110名の参加があった。中皮腫の患者さん27名、肺がんの患者さん3名との出会いがあり、そのご家族の思いにも触れながら交流できたとことは、今後の活動において何事にも代えられない貴重な財産を得ることができた。

各県での集いの関催にむけて、それぞれ事前に記者会見を行い、マスコミの皆さんに周知をお願いした。各地とも新聞を中心に各社が紹介記事を掲載し、患者と家族の会の存在とその取り組みを多くの人に知ってもらうことができた。それが、各会場への参加とつながり、新しい数多く出会いにつながった。

患者と家族の会として、かれこれ10年以上、九州各地で活動を行ってきたが、それでも「会」の存在を知らない方が沢山居られることを実感した。合わせて、「会」を必要とされている方、交流を待っておられる方が沢山居られることも実感した。そして、患者さん同士、ご家族同士が、顔を合わせて交流し情報交換する場が、身近に必要であることを改めて考えさせられた取り組みであった。

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