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アスベスト 全国一斉ホットライン
悩み、諦めかけている方のために

2022/09/23
♦ 6回目となる全国一斉ホットライン

アスベスト被害者の救済に取り組む、NPO法人アスベスト被害者救済基金(神戸)は、8月27日(土)と28日(日)の二日間、全国一斉「アスベスト健康被害ホットライン」を開設しました。東日本を中心に活動を展開しているNPO法人じん肺アスベスト被災者救済基金(横須賀市)と共同での取り組みで、今回で6回目となります。
昨年は、神戸の事務所に、二日間で112件の相談が寄せられました。中皮腫や肺がん、じん肺を発症され、治療をされている患者さんから多くの相談がありました。また、過去にアスベストを取り扱う仕事に従事された方から、健康不安に関する相談が多かったことも特徴でした。


♦治療中の患者・家族からの相談

今回、神戸の事務所へは、二日間で36件の相談が寄せられました。相談者を地域別にみると、兵庫県16件、大阪府9件、京都府4件、岡山県3件で、九小卜I.四国地方からの相談が  4件でした。
疾病別に診ると、中皮腫5件、肺がん2件、びまん性胸膜肥厚2件、石綿良性胸水1件、石綿肺管理区分3イが1件でした。合計すると、既に病名が確定している方(家族)からの相談が11件もありました。
また、石綿健康管理手帳を取得されている 3名から、健康不安や今後の補償に関する相談がありました。その他にも、石綿労災の認定者が多数出ている職場で働き、「間質性肺炎と診断され亡くなった。仕事が原因ではないだろうか」との相談も寄せられました。
ホットラインの二日間以降も相談が続いていますが、手続きを急がなければならない事案が多数あるため、アスベスト被害者救済基金では、関西・ひょうご・おかやまの安全センターの皆さんに協力を要請することにしまし
た。早速、8月末に相談事例検討会を開き、担当を決め、相談対応を開始しています。


♦救済されていないアスベスト被害者

2022年6月22日、厚生労働省は、2021年度の「石綿による疾病に関する労災保険給付などの請求・決定状況」を公表しました。2021年度に全国の労働基準監督署が受け付けた石綿労災の請求件数は1,274件(前年度は1,085件)で、支給決定件数は1,011件(削年度は1,016件)で、この数年、請求件数も支給決定件数も1,000件を超える状態が続いています。
また、厚生労働省は、毎年、人口動態統計に基づき、アスベスト特有のガンである中皮腫による死亡者数の年次推移を公表しています。2021年9月9日に公表された2020年の中皮腫による死亡者数は全国で1,605人と増加傾向にあり、人口動態統計等により確認できる中皮腫による死亡者数の合計は31,898人となっています。
全国労働安全衛生センター連絡会議の調査によると、中皮腫を発症し、2020年までに労災保険や石綿救済法による補償・救済の認定件数は19,057件となっています。罹患者数のデーターは得られないため、死亡者
数を分母として中皮腫の救済率を検証すると19,057/31,898=59.7%となります。アスベスト特有のガンである中皮腫であっても、約40%の方が全く補償を受けていない状況です。
また、石綿肺がんとして2020年までに補償.救済された認定件数は6,522件で、中皮腫よりも大幅に少なく、認定件数は中皮腫の約3分の1となっています。石綿肺がんについては、国際的な科学的コンセンサスは中皮腫の
「2.0倍」とされています。今回、環境省の考え方である中皮腫の「1.0倍」という仮定で、中皮腫の死亡者数を分母として計算すると、6,522/31, 898=20.4%となり、約80%の方が全く補償を受けていない状況です。


♦悩み、諦めかけている方のために

昨年、ホットラインの前日に、中皮腫を発症された患者さんのご家族から相談がありました。「父が3年前に悪性胸膜中皮腫と診断された。永年、造船所で配管に保温材を巻くなどの仕事をしていた。監督署から労災と認定
され、会社からは10万円のお見舞い金が支払われた。会社の対応に納得がいかない」という内容でした。ホットライン終了後にすぐ電話を入れたのですが、訃報の知らせを聞き愕然としました。相談者は、「病気が分かってからの約3年間、会社の対応について誰かに話を聞いて欲しかった」と話されていました。
また、昨年の相談には、 「肺がんを発症して治療をしているが、病院の医師からは肺にアスベストが有ると言われた。60年ぐらい前に、町内の石綿工場に原料を運搬する仕事に 3日間だけ従事した。それ以外は石綿との接触はない」という内容の事例がありました。相談を受け、環境再生保全機構に請求を行なったところ、広範囲の胸膜プラークがあると認められ、今年2月に救済されることになりました。 
「弁護士事務所に電話しても、何処に相談しても補償は無理と言われ続けたが、相談して良かった」と話されていました。現在は、引き続き、労災の請求を行なっているところです。
その他にも、「2019年10月に病院で肺がんの手術をした。労災と認められたが、2020年 10月には治癒と判断され、休業補償が止まった。補償はないのか」という相談がありました。この方が勤めていた会社は、企業補償制度を設けているのですが、弔慰金の制度しかありません。そこで、弁護士に企業との交渉を依頼したところ、話し合いにより合意にいたり、補償を受けることができました。
この間の相談活動を通じて、アスベスト被害者、ご遺族のなかには、一人で悩み、諦めている方が多く居られることを実感しています。そうした方々のお力になるためにも、私たちは相談活動を粘り強く続ける必要がありま
す。アスベスト被害者救済基金では、フリーダイヤルを設け日常的にも相談に対応しています。引き続き、アスベストによる健康被害を受けた方、ご家族の皆さんの相談窓口として活動を続けていきたいと考えています。




 

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