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メンタル労災ほっとライン- 相談件数は全国で217件
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10月10日の世界メンタルヘルスデーに合わせて、「メンタル労災・全国一斉ほっとライン」を実施した。主催は、全国労働安全衛生センター連絡会議メンタルヘルス・ハラスメント対策局で、コミュニティ・ユニオン全国ネットワークに加盟する地域ユニオンの皆さんにも協力をいただいた。
今年は、10月11日(金)と12日(土)の二日間を中心に、全国12箇所(札幌・東京・山梨・神奈川・名古屋・京都・大阪・兵庫・岡山・広島・徳島・福岡)に相談ポイントを設けた。相談件数は全国で2 17件(昨年は9箇所217件、一昨年は11箇所97件)で、相談ポイント毎の件数は、札幌3件、山梨3件、東京46件、神奈川3 9件、愛知29件、京都0件、大阪29件、兵庫36件、徳島3件、岡山18件、広島3件、福岡8件であった。
◆ 今年もフリーダイヤルを活用
全国センターは、相談対応用にフリーダイヤル(0120-631-202)を開設している。昨年初めてこのフリーダイヤルを活用してホットラインを開設したところ例年以上の反応があり、今年もフリーダイヤルの番号をマスコミに周知し取り組むことにした。
ホットライン開設に向けて、厚生労働省の記者クラブで会見を行い、各地でもマスコミへの周知が行なわれた。全国紙の地方版や地方紙、テレビやラジオでも取り組みが紹介された。そしてホットライン初日、このフリーダイヤルの番号が昼のニュースで全国的に放送されると、テレビの放映直後から各地の相談窓口には電話が相次いだ。あらためてマスコミ対策の重要性を痛感した。
◆ 相談の傾向
各地の相談ポイント毎に集計したデーター(現時点では、札幌・東京・広島の相談件数52件が未集計)をもとに相談傾向をまとめてみた。
まず性別では、男性が72件、女性が72件であった。年代別では、29歳以下が6人、30代が10人、40代が16人、50代が37人、60歳以上が29人であった。子どもの健康状態を心配した親からの相談が多かったのも特徴であった。
相談者の雇用形態では、正規社員が60人で非正規社員が20人であった。正規社員からの相談が多い傾向はこの間続いている。非正規職員が増える中で、少数化する正規社員の働き方は肉体的にも精神的にも負担が増大しており、そのことが影響しているのではないだろうか。相談者の職種は様々であったが、相談が多かった職種順でみると、事務的職業23人、福祉・介護の職業13人、製造・修理等の職業11人、配送・運送・運転の職業11人、医療・看護の職業8人、保育・教育の職業8人、販売・営業の職業8人であった。
そして、ハラスメントの行為者については、もっとも多かったのが上司39で、その次が職場のトップ22人(社長9人・店長4人・園長3人・院長3人・施設長2人・学校長1人)であった。職場におけるパワーハラスメントやセクシュアルハラスメント等のハラスメントを防止するために、事業主が雇用管理上講ずべき措置が定められている。ハラスメント防止に向けて先頭に立つべき事業場のトップが行為者であった場合、被害者は職場の改善よりも退職を選択せざるを得ない場合が多くなる。
◆ ハラスメントの行為類型
職場のパワーハラスメントについて、行為内容により類型化されている。それは、①身体的な攻撃(暴行・傷害)、②精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)、③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)、④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)、⑤過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)、⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)の6類型である。もちろん、これらは職場のパワーハラスメントに当たりうる行為のすべてを網羅するものではなく、これ以外の行為は問題ないということではない。
今回の相談内容を6つの類型に分類すると、①が5件、②が72件、③が9件、④が12件、⑤が5件、⑥が2件であった。この分類は、電話を受けた相談スタッフの判断によるもので、類型に分類できない相談や、複数の類型に該当する相談もあった。
いわゆる「パワハラ防止法」では、①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであり、③労働者の就業環境が害される、3つの要素を全て満たすものをパワーハラスメントと定義している。先ほど相談内容を6類型してみたが、「パワハラ防止法」の定義に該当する事例は多くはなかった。しかし、多くの相談内容は、人権を侵害する行為であり、「労働者の就業環境を害する」内容であった。
◆ 相談の特徴
今回のホットラインは、「メンタル労災」をテーマに掲げたが、例年以上に労災申請を行なっている、行ないたいという方からの相談が多かったのが特徴であった。そして、過労自死案件の相談もあった。「夫が55歳で急性心不全で死亡した。遠方への出張が多く、死亡直前に頭痛を訴え、病院に行ったが翌日死亡」「仕事にいけなくなり、うつの診断。本人は復帰を希望していたが、社長は辞めろとばかりの対応。本人は『社長が怖い』と言い、自宅で首吊り自殺をした」。
また、過去の出来事に悩んでいる方からの相談も多く、5年前、10年前の出来事や、一番古いのでは平成3年の出来事があり、ハラスメント被害の深刻さについて考えさせられた。
◆ ハラスメント相談にどう向き合うのか
現在、行政の相談窓口へもユニオンへも、相談件数が一番多いのは「ハラスメント」に関する内容である。この傾向はもう何年も続いている。相談内容は、いじめ・パワハラだけでなく、セクハラやカスハラなど様々なハラスメントに対する相談が増えている。
一方、相談を受けたメンバーからは、「労災認定に繋がらない・・・」「組織化に繋がらない・・・」「1件の相談に時間を要する・・・」「何度も同じ人から相談電話がある・・・」等々の声も聞えてくる。
今年、10月5日~6日にかけて、コミュニティ・ユニオン全国交流集会が大阪で開催されたが、そのなかで、「ハラスメント相談にどう向き合うのか」をテーマに分科会がもたれた。分科会では、最初にNPO法人ひょうご働く人の相談室の山西伸史さん、よこはまシティユニオンの平田淳子さんのお二人から報告を受けた。
山西さんからは、兵庫県下のユニオンが中心となって、労働相談活動を専門とするN PO法人を設立し、増加しているハラスメント相談に対応していることが報告された。平田さんからは、被災当事者や支援者がお互いの状況や思いや経験を語り合い、励ましあえる場として「被災者交流会」を定期的に開催していることが報告された。ユニオンとして、相談を受けるチャンネルをいかに増やすのか、そしてハラスメント被災者が「一人ではないんだ」と感じ勇気を得られる場をいかに作り出すのか、その大切さを学び合った。
その後、経験交流と意見交換を行った。参加者へは、①相談対応において、②面談、組織化おいて、③団体交渉において、④心のケアにおいて、の4点に絞って苦労している点や工夫している点についての報告を求め、交流をおこなった。
特徴的だったのは、相談から面談へ、そして組織化した後の団体交渉において、会社側がハラスメントを認めない事例が多くあるという点であった。「パワハラ防止法」により、3つの要素を全て満たすものをパワーハラスメントと定義されたため、会社側が「パワハラではない」と主張し解決に時間を要するという報告が多かった。
また、職場の同僚間でのトラブルに関する相談が増えているが、団体交渉において会社側は社員間の問題であるとしてその責任を認めないという報告も特徴的であった。その他には、解決までに時間を要し生活保障の面で苦労している事例や、医療機関などの専門家へのつなぎや相談者(組合員)の体調不調への対応に苦労している報告等が持ち寄られ、経験を交流することができた。
◆ グレーゾーンの対応
では、パワハラの定義に当てはまらない言動について、企業に責任は無いのか。そして労働組合としてどの様な対応が求められるのだろうか。
産業精神保健誌の最新号が「パワーハラスメント防止と産業精神保健」を特集しており、「パワーハラスメントの法的理解(グレーゾーンの見きわめ)」と題し、原昌登氏(成蹊大学)の論文も掲載されている。
その中で、Y銀行事件(徳島地判平成30・7・9) が紹介されている。その概要は以下のとおりである。
「ミスを繰り返す部下Aに対して、上司らから日常的に強い叱責が行われていた。Aは同僚や家族に死にたいと訴えるようになり、同僚は上司に知らせるものの、上司は真剣に受け止めることはなかった。その後、Aは自殺に至り、Aの母親が、自殺の原因はパワハラであるとして、銀行に損害賠償を請求した。裁判所は、ミスを指摘し改善を求めるのは上司らの業務であり、叱責が続いたのはAが頻繁にミスをしたためであり、叱責自体が業務上の指導の範囲を逸脱しているとまでは認められないとして、上司らの言動が不法行為に当たることを否定した。
しかし、上司らによる叱責はさらに上の上司も認識しており、銀行はAの自殺願望等が上司らとの人間関係に起因することを容易に想定できたから、Aの心身に過度の負担が生じないように対応すべきところ、対応が不十分であったとして、銀行の安全配慮義務違反は肯定した。結論として、慰謝料など総額で約6,14 2万円の支払いを銀行に命じたのである。」
この事件を紹介したうえで、「実際には、企業としてパワハラと認定できるか微妙な、グレーゾーンの事案も多いであろう。そうしたときこそ、企業として的確な対応を目指さなければならない」と指摘している。
◆ さいごに
今回のホットラインに寄せられた相談内容も、日常的に受けている相談内容も、「パワハラ防止法」の3要素を全て満たす相談は少ない。しかし、労働者の就業環境が害されているのは事実である。職場環境を害する全ての言動を、如何に要求化し、労働環境を改善に繋げていくのかが求められている。パワハラか否かについて白黒を付けることだけに躍起になってはいけない。「職場環境が害されている」具体的な問題点を積極的に見つけ出し、被害者と同僚らが相談し合い、一緒に問題を考え合い、改善に向けた取り組みを実践していくことが重要である。この実践が、私たち、そして労働組合に求められているのではないだろうか。
全国労働安全衛生センターは、ハラスメントの労働相談に対応するため、フリーダイヤルを設けている。ハラスメントで困っている方は、ぜひフリーダイヤルに相談を。
0120-631-202