NPO法人 ひょうご労働安全衛生センター

労災・職業病・労働環境など
お気軽にご相談ください

TEL 078-382-2118
相談無料・秘密厳守
月〜金: 9:00-18:00

労災職業病・安全衛生の取り組み

NPO法人アスベスト被害者救済基金
第9回通常総会を開催

2024/11/25
10月20日(日)、兵庫区文化センターにおいて、NPO法人アスベスト被害者救済基金第9回通常総会が開催されました。
総会では、全日本港湾労働組合神戸支部の小林進氏が議長に選任されました。理事の西山和宏氏から第1号議案の2023年度活動総括について提案がありました。続いて、第2号議案の2023年度会計決算報告、第3号議案の会計監査報告、第4号議案の2024年度活動方針案、第5号議案の2024年度会計予算案、第6号議案の役員に関する件が提案され、全ての議案が承認されました。


◆ 石綿リスクにどう備えるか
総会の第2部は、社会保険労務士の中部剛氏(元神戸新聞社記者)から、「アスベスト被害の取材を通して見えてきたもの」と題して記念講演が行われました。

<アスベスト取材を通して>
中部氏は、自身のキャリアを紹介し、神戸新聞での記者経験や、アスベスト問題に関心を持つに至った経緯について述べられました。アスベストの取材を本格的に始めたのは、阪神淡路大震災前に、水道管の蛇口から石綿の塊が排出されるという市民からの通報があり、それを報道することがきっかけだったと話されました。
具体的な被害事例について、川崎重工業に勤めていた男性が肺がんを発症したことについて、その原因がアスベストによるものと認められず、その後訴訟を通じて労災認定を受けるまでの経緯が説明されました。被災者は生前、「この仕事で家族を養ってきた、会社に迷惑がかかるようなことはするな」と話していたそうです。また、2週間の車両工場でのアルバイトが原因で中皮腫を発症した被災者を取材した際には、「なぜ私がこんな病気に」と話されたといいます。これらの取材をきっかけに、会社とは何か?人は何のために仕事をするのか?会社にとって従業員とは何か?と自身にも問いかけるきっかけになったといいます。

<なぜ危険性が伝わらないのか>
中部氏は、2016年から2020年の中皮腫の平均死亡数と死亡率に触れ、全国平均や他県と比べて兵庫県の死亡率が高いことを指摘しました。そのような結果が出ているにも関わらず、なぜ危険性が伝わらないのかについて、潜伏期間が長いこと、アスベストにばく露しても病気を発症する人もいればしない人もいること、人は忘れっぽいところがあること、私は大丈夫と他人事になってしまうこと、管理して使用すれば大丈夫とメーカー側が吹聴してきたことを挙げられました。そして、報道などで問題視されたときは関心を持つが、時間が経つと関心がなくなってしまう、今現在も忘れ去られようとしていないでしょうかと参加者に問いかけました。
さらに、泉南アスベスト訴訟高裁判決において、「経済発展のためには労働者の被害は仕方がない」という見解が示されたことを紹介し、こうした判断は経営者を含む多くの人たちの考え方を反映するものではないでしょうかと指摘されました。

<公的データの開示とアスベスト対策>
中部氏は、アスベストに関する公的データの公開が遅れていることについても触れました。環境再生保全機構では、令和3年から石綿救済制度の申請者(健康被害を受けた方)へのアンケート用紙に、阪神・淡路大震災および震災で健康被害を受けたか問う欄が追加されました。しかし、調査結果は、震災の石綿被害をうかがわせる貴重な資料であるのにも関わらず、公表されていません。
中部氏は令和3年、令和4年の調査データについて情報開示請求を利用し、入手しました。その内容は神戸新聞(2024年1月13日)に掲載されました。データによると、令和3年度と令和4年度の石綿救済制度利用者の内17人が阪神・淡路大震災を経験、18人が震災復旧作業に携わり、被災者の居住区については兵庫県外居住が多く、兵庫県は5人でした。データが公表されていない現状について、「危険性を認知しないままでは、被害が拡大するリスクがある」と警告しました。データの活用が進めば、被害者の救済や予防対策が強化されると指摘しました。

<震災復興とアスベスト除去作業現状>
石川県での震災復興活動におけるアスベスト除去作業の現状について、瓦礫撤去や建物解体が進む中でアスベストが飛散するリスクがあることを指摘しました。そして今年8月に、能登半島の被災地を調査した経験をもとに、ボランティアが防護具なしで解体作業をしている場面が多いことが問題だと述べ、自治体が配布しているアスベストに関する注意喚起のビラが復旧現場では認知されていない現状も改善すべき課題だと指摘されました。
また、石川県では、解体作業が予定より遅れており、9月の水害被害と合わせて復旧作業時にアスベストの飛散リスクが高まる可能性を指摘されました。石川県は解体作業の加速化を目指していますが、専門的知識を持たない業者も現場に入っており、適切な防護措置が取られない場合もあります。震災復興を急ぐことと被災地を支援するひとたちのアスベストリスクを低減することの間にジレンマがありますが、速やかな復興と安全の確保の両立が求められていると語られました。

<これからの課題>
中部氏は、若い世代に社会教育を通じてアスベストの健康被害のリスク認識を高めていく必要があると話されました。また、アスベストの被害者やその家族に耳を傾け、その現状を地道に伝え続ける必要があると語りました。
さらに、アスベストに関する膨大な情報が散在しているため、今後集約し、データベース化し、情報共有し、整備し、社会全体でアスベストのリスクに対処していくことが必要だと強調されました。


 

労災・職業病・労働環境など
お気軽にご相談ください

TEL 078-382-2118
相談無料・秘密厳守
月〜金: 9:00-18:00

私たちについて