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厚労省-石綿労災認定事業場名等の情報を公開
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この事業場名等の公表は、2005年のクボタショックをきっかけに始まり、2013年以降は毎年12月に行われている。今回公表されたうち975事業場は新規の公表で、これまでに公表された事業所の累計は19,367となった。
また2023年度にアスベストを原因とする疾病により、労災認定された件数も公表された。認定件数の全国合計は1,308件(中皮腫642件、肺がん433件、良性石綿胸水22件、びまん性胸膜肥厚73件)であった。兵庫県において労災認定された件数の合計は71件(中皮腫42件、肺がん25件、良性石綿胸水1件、びまん性胸膜肥厚3件)であった。
◆特別遺族給付金の請求が増加
労働者が死亡した場合は5年を過ぎると請求は時効となるが、時効となった遺族を救済するために特別遺族給付金の制度が設けられている。石綿健康被害救済法では2022年3月末に請求期限が終了することになっていたが、その直前にアスベスト患者と家族の会が全国ホットラインを開設したところ多くの相談が寄せられ、その事実をもって国に迫り、法改正が行なわれ請求期限が更に10年延長されることになった。
特別遺族給付金の請求は、2020年度までは全国で二桁の請求件数であったものが、先ほどのホットラインの取り組み等を通じて2021年度は545件、2022年度は132件、2023年度は 317件となっており、三桁の請求件数へと増加している。
請求件数は増加しているが、認定率をみると、2021年度54.4%、2022年度60.3%、2023年度67.7%と低率になっている。死亡から5年以上を経過することで、カルテや画像などの医療記録が消失したり、同僚を探すのに苦労したり、会社が消滅しているために作業内容についての証明を得ることが困難である等が原因と考えられる。
特別遺族給付金の請求が増加していることは、まだまだ埋もれた被害者が多数存在することの反映と考える。死亡後5年を超える遺族の救済を目的に設けられた制度であるならば、労災保険と同じ内容で調査を行うことは困難であり、被災者救済を前提にした認定の在り方を再検討する必要があると考える。
◆全国一斉ホットラインを実施
アスベスト患者と家族の会は、厚労省の労災労災認定事業場名の公表に合わせ、毎年ホットラインを開設してきた。2023年12月のホットラインには、全国で約200件(2日間)の相談があり、その後のフォローで多くの労災認定(厚労省)、救済認定(労災
以外。環境再生保全機構)が実現した。
今回も、12月12日と13日の二日間、全国一斉アスベスト健康被害ホットラインが開設された。多くのマスコミも関心を寄せ、取材・報道が行われ、ホットラインには多くの相談が寄せられた。
相談ポイント毎の相談件数は、北海道18件(11件十7件)、東北27件(18件十9件)、関東59件(36件+23件)、東海・北陸67件 (47件+20件)、関西57件(34件+23件)、西日本48件(24件+24件)で、全国の総相談件数は276件(170件+106件)となった。
ホットライン終了後、関西ポイントと西日本ポイントの相談内容については、当センターも参加し、関係する地域センターや弁護団と検討を行い、さっそく相談者との面談や労災申請等の手続きを開始している。
◆震災アスベスト初の肺がん認定が判明
厚生労働省が12月11日に公表した「石綿ばく露作業による労災認定等事業場一覧表」には、調査を行った「監督署名」や、「事業場名」「事業場所在地」「右綿ばく露作業状況」「石綿取扱い期間」「現在の取扱い状況」、そして「特記事項」が記されている。
このデーターを精査し、あることに気付いたマスコミ関係者がいた。毎日新聞大阪本社の大島記者である。それは、神戸東労働基準藍督署が認定した事業場情報に、「(株)三上工作所」「間接的なばく露を受ける作業」「肺がん」、そして「阪神淡路大震災発生の時に間接ばく露を受けた可能性あり」の情報が記されていた点である。
阪神・淡路大震災後の復旧・復興作業においてアスベストにばく露し、労災(公務災害を含む)認定された方はこれまでに6名確認されている。またそれ以外に、私たちが支援してきた明石市の清掃労働者も、震災後の作業でしかアスベストばく露が無いのだが、腹膜中皮腫を発症したこの案件は、公務災害の認定を受けることはできなかった。
今回、震災後の間接ばく露作業においてアスベストを吸引し、肺がんを発症した方の存在が明らかになった。男性が勤務していた神戸市内の会社関係者によると、「男性は自分の仕事で石綿を扱っていなかったが、震災発生から約3年間、同市内の自宅からオートバイで市内中心部の会社へ通った。また顧客の建物の被災状況を見て回った。そうした行動の際に、周囲で解体中などの建物から飛散した石綿を吸った可能性がある」と話されている。
◆震災後の被災地は大董の石綿が飛散
阪神・淡路大震災後のアスベストばく露により肺がんを発症し、労災認定された方(以下、「Aさん」という)の石綿ばく露作業や医学的所見についての詳細は分らないが、会社関係者からの情報と「労災認定事業場一覧表」に書かれている内容から推認できることがある。
石綿肺がんの認定基準はいくつもの複雑な要件の組合せとなっているが、一番多い認定者は「胸膜プラーク所見十石綿ばく露作業従事期間10年以上という要件を満たす」というものである。Aさんの場合、「仕事での石綿の取扱いがなく」「震災発生から約3年間」「間接的なばく露を受ける作業」という情報からすると、「胸膜プラーク+ばく露作業10年」の基準による認定ではないと考えられる。
そうすると医学的な要件でもって労災認定されたと思われる。つまり、「石綿肺の所見がある」「広範囲の胸膜プラーク所見がある」「(一定以上の)石綿小体または石綿繊維の所見がある」「びまん性胸膜肥厚を併発している」のいずれかに該当していたため、業務上災害と認定されたと考えられる。
これまでに兵庫県警の警察官が、被災地の応援に派遣され、約1ヶ月間だけ神戸市長田区内を警らする等の任務に就き、悪性胸膜中皮腫を発症した事例がある。この事例についても、業務においてアスベストを取扱うことは無く、倒壊した建物を解体・改修する作業の周辺を警らする任務において、アスベストにばく露し悪性胸膜中皮腫を発症したとして、公務災害と認定されている。
肺がんを発症したAさんも、仕事での右綿の取扱いがなく、顧客の建物の被災状況を見てまわる際の間接的な作業環境において、大量のアスベストにばく露した事になる。中皮腫は、短期間や低濃度のアスベスト吸引でも起こることが分っている。一方、肺がん発症の相対リスクと石綿への累積ばく露量との間には、累積ばく露量が増えれば増えるほど発症リスクが上がるという量ー反応関係があるとされている。肺がんを発症したAさん事例からも、震災後の被災地において大量のアスベストが飛散していたいことが推認できる。
阪神・淡路大震災の発災から30年を迎え、中皮腫だけでなく肺がんの発症と労災認定が判明したことは、労働者だけでなく、市民やボランティアの方々に対する健康対策が急務となっているといえる。
◆更に新たな労災認定が判明
厚生労働省のホームページからは、過去に公表された事業場名等の情報を全て見ることができる。Aさんの労災が認定されたことが判明し、過去分の事業場情報を検索したところ、大阪においても阪神・淡路大震災後の復興作業においてアスベストにばく露し労災認定された事例があることが判明した。
それは、2022年度に大阪・淀川労働基準監督署が労災認定した事例で、会社名は「中央復建コンサルタンツ(株)」で、石綿ばく露作業状況は「石綿ばく露作業の周辺において間接的なばく露を受ける作業」となっており、特記事項には「出張作業であり事業場内での取扱いなし。出張作業での間接ばく露。阪神・淡路大震災の復興関連作業による間接ばく露。通常業務での取り扱いはなし」と記されていた。
この事例についても毎日新聞は、「兵庫以外の企業初の中皮腫労災」と報じた。阪神・淡路大震災後の復1日・復興作業においてアスベストにばく露し、中皮腫を発症し労災認定されたのは、公務災害を含めて7名となった。肺がんを発症したAさんを含めると、アスベストによる健康被害が判明したのは8名である。
◆国ば情報を健康対策に活用すべき
阪神淡路大震災の復興復旧作業に従事した方がアスベスト特有のがんを発症する事例が続いており、あらためて環境省や兵庫県が中心となり、阪神淡路大震災の復旧・復興に携わった様々な方々の健康対策について、何が必要であるのか、何から始めるべきなのかの議論を開始するべきである。
今回も、厚生労働省の行なった石綿労災認定事業場名の公表により2例が判明した。震災後の復1日・復興作業には、全国から多くの労働者が駆け付け従事した。労働災害の認定を行なう厚生労働省は、全国のアスベストによる労災認定事例を把据しており、阪神・淡路大震災時の石綿ばく露を原因とする認定事例を公表すべきである。
また、労災保険の対象とならない方々の救済は、環境省が管轄する環境再生保全機構が情報を保有している。数年前から、環境再生保全機構へ申請する際に提出するアンケートに震災関連の項目が追加された。それは、「□阪神淡路 □その他( )震災に関連して下記のような作業をしましたか。」と問い、①被災した自宅で石綿建材を片付けた、②震災復旧作業、③ボランティア活動、の3項目に該当する場合チェックを入れるようになっている。
認定された方のうち2021年度と2022年度のアンケートヘの回答内容について、神戸新聞社が環境再生保全機構に対して情報公開請求を行なった。そして明らかとなった情報を、2024年1月13日の朝刊で「石綿疾患17人が『阪神・淡路』経験」と題して報じた。
環境再生保全機構は保有するアンケートヘの回答状況を精査し、また被災者や遺族への聞き取り調査を行なう等し、今後の被災地の住民やボランティア等の健康対策に活用すべきである。
阪神・淡路大震災から30年を迎え、復旧・復興作業に従事した労働者、そして市民・ボランティアなど被災地で生活し暮らした人たちへの健康対策を強める必要がある。