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地震・石綿・マスク支援プロジェクト

東日本大震災から14年
災害とアスベストを考えるシンポジウムin仙台

2025/03/28
東日本大震災から14年を迎える3月2日、「災害とアスベストを考えるシンポジウム」が東京労働安全衛生センター主催のもと仙台市戦災復興記念館で開催された。
東京労働安全衛生センターの飯田勝泰氏が「東日本大震災14年目の今、アスベストの問題について皆さんと共に考え、何が出来るか議論していきたい」と話され、シンポジウムが始まった。


♦震災とアスベストの関係
最初の講演は、中地重晴氏(熊本学園大学社会福祉学部)が登壇され、 「能登半島地震におけるアスベスト問題」と題し、震災時におけるアスベスト飛散の危険性と行政の対応の課題が報告された。
能登半島地震後、災害廃棄物の処理は進められているが、解体作業の遅れや行政の対応不足が指摘された。特にアスベストを含む建材の処理について、仮置き場では分別が行われているものの、解体現場での飛散防止対策が十分に取られているか不透明だという。公贄解体については、令和7年1月末時点で43. 6%の解体が完了している。計画では今年10月には100%の解体を完了する見込みで、今後作業の加速化が進むとみられる。中地氏は、解体現場でのアスベスト飛散をどう減らしていくのか、行政と現場が連携し飛散防止を徹底することが不可欠であると訴えた。今後の復興においては、安全な解体作業の推進が重要課題となる。
続いては、東日本大震災の被災地でアスベスト調査を行った外山尚紀氏(東京労働安全衛生センター)が登壇し、「東日本大震災とアスベスト対策の課題」について報告された。東日本大震災当時、南三陸町などで、空気中のアスベスト濃度測定や建材の分析を実施したと報告された。特にスレートには高確率でアスベストが含まれ、解体時の適切な処理が求められた。しかし、初期段階では飛散防止対策が不十分で、防じんマスクの未着用や無造作な解体が見受けられた。その後、行政の監視強化や通達により、飛散防止のための湿憫処理や分別収集が進んだという。2016年の熊本地震でも同様の課題が生じたが、東日本大震災の教訓を活かし、より適切な対策が講じられたと報告された。
今後の災害時にも、事前調査の徹底、適切な防護措置、環境モニタリングの強化が不可欠とし、被災地の安全確保のため、より一層の取り組みが求められていると訴えられた。

♦健康への影響とリスクの認識
広瀬俊雄氏(仙台西木町診療所・産業医学センター所長)は、「東日本大震災における粉じんと健康影響」と題し、東日本大震災後の健康被害について報告された。震災直後の石巻地域では、多くの住民が呼吸器症状を訴えたという。調査の結果、南東からの風の影響を受ける地域で症状が悪化しており、ガレキ置き場方面から吹く風と粉じんとの関連が指摘された。
アスベストばく露の可能性がある作業員や住民に対しては、定期的な健康診断が必要だとし、特に肺がんや中皮腫などの重篤な疾患は長期間の潜伏期間を経て発症するため、継続的な追跡が必要だと述べられた。
南慎二郎氏(立命館大学政策科学部)は、「被災地で活動するボランティアとアスベスト」と題して、実施したアンケート調査の結果について報告された。
アスベストの危険性認識については、「よく知っていた」「少し知っていた」と回答した人は半数程度にとどまった。また、活動参加時の現場でのアスベスト注意喚起については、「ほとんどなかった」「ない、記憶にない」と回答した人が7割程度で、ほとんど行われていなかったことも分かった。被災地で活動したボランティアの多くがアスベストの危険性を十分に理解していなかったことが明らかになった。さらに、防じんマスクの支給がほとんどなかったことも課題として浮上したという。
調査結果を踏まえ、ボランティア活動の安全対策を強化することが重要で、特に、ボランティア参加者への事前研修や注意喚起を徹底しリスク認識の向上をはかり、防じんマスクなどの防護具を提供する体制を整えることなどが求められると指摘された。


♦経験を活かしていくために
最後に、西山和宏氏(ひょうご労働安全衛生センター)が登壇し、阪神・淡路大震災後のアスベスト被害と兵庫での取り組みについて報告した。
阪神・淡路大震災では多くの建物が倒壊し、復旧・復興工事においても大量の粉じんが飛散した。当時、復旧・復興作業に従事した方々がアスベストにばく露し、中皮腫や肺がんを発症し公務災害や労災に認定された事例を紹介し、近年新たな患者が確認され、災害時のアスベストばく露のリスクが改めて浮き彫りとなっていると指摘した。
今後、東南海地震などの災害が予測される中、同じ被害を繰り返さないために、平時のうちに身の回りから危険なアスベストの除去に取り組み、アスベストの危険性を広く周知していくことが重要であると訴えた。震災を経験した私たちだからこそ、震災の教訓を次世代に語り継ぐために活動していきたいと決意を語られた。