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パワハラ・うつ病・精神疾患
悲惨な事故の体験、目撃をし精神疾患を発症
審査請求で逆転認定
2025/11/21
◆「私の体験と似ている」
中・高一貫校で教師をされているAさんから、当センターに相談の電話が入ったのは今年の3月であった。
「精神疾患を発症し労災申請をおこなったが認められなかった」という内容で、相談のきっかけを尋ねてみると「貴団体のホームページに私の体験した内容と似ている事例が紹介されていた」と話された。
その事例というのは、介護施設で働く職員が利用者宅を訪問したところ、利用者が縊死をはかった現場に遭遇し、救助と救命活動を行ったが搬送先で亡くなられという内容である。職員はその後「外傷後ストレス障害」と診断され、労災申請をおこなったが不支給とされ、当センターも支援をしたが審査請求においても棄却された。
◆出来事の概要
Aさんは、2023年9月末頃より嘔吐する症状が出始め、その後も勤務を続けたが2024年2月に心療内科を受診したところ「適応障害」と診断された。Aさんは、2023年6月頃からの過重な業務や不法行為への加担の強要、上司からのパワーハラスメント、そして悲惨な事故への遭遇等により精神疾患を発症したとして2024年5月に労災申請をおこなった。
2023年9月末、放課後の学校に生徒から、市販薬を大量に服用し手首を切り自殺をはかった旨の電話があった。当初は担任の先生が生徒と対応していたが、生徒は居場所を言わないまま切電してしまった。その後、学年主任であるAさんが、自らの携帯電話で生徒に電話を架け、生徒が居る周囲の風景を撮影して送信させるなどの方法で居場所を突き止め、保護者とともに現場に向かった。駆け付けると、生徒の意識はあったが大量の血が流れ出ており、救急車が到着するまで救護を行い、生徒を励まし続けたのであった。
入院・治療を受け、生徒は再び登校できるようになったが、12月に入ると精神的に不安定な状態となり、Aさん宛に放課後や休日に頻繁に連絡をしてくるようになった。そして「しんどい」「死にたい」と繰り返し希死念慮を伝えるのだが、Aさんは遅い時間帯でも、休日でも、長時間の電話であっても思いとどまるように励まし続けた。生徒はAさんに電話やメッセージを送り、Aさんと繋がり話すことで精神の安定を保つ状態であった。
また、学校内で突発的に階段の踊り場から飛び降りようとした際には、Aさんが馬乗りになって止めたこともあった。Aさんは、こうした状況の中で常時緊張を強いられる状態が続き、2024年2月に心療内科を受診したのであった。
◆原処分庁の判断
原処分庁の判断は、①「仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった」について「弱」、②「業務に関連し、違法な行為や不適切な行為等を強要された」について「弱」、③「業務に関連し、悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」について「中」、④「仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった」について「中」、⑤「上司とのトラブルがあった」について「弱」とした。そして③と④については、関連する出来事として総合評価を「中」と判断した。
③については、「請求人に責任があったわけではなく、生徒の自殺未遂を回避することができたとはいえないことから、『特に悲惨な事故を目撃したが、本人が被災者を救助できる状況等でもなかった』に相当すると考えられ『中』と評価した」と判断した。
④については、生徒から頻繁に希死念慮を伝える連絡が入り常時緊張を強いられる状態が続いたことを訴えたのだが、「直ちに命にかかわるような切迫した危険を伴うものではなく、これまで生徒が繰り返し口にしている希死念慮を伝えてくる程度のことが大半であった」「常時緊張状態にあったと認められる程度に至らないことから…『中』相当と評価すべき」と判断したのであった。
◆新たな資料の準備、提出
審査請求にあたり、①生徒が倒れていた場所の画像、②生徒とのLine履歴、③生徒作成の陳述書、④生徒の作成したSNS等々の資料を提出した。
口頭意見陳述においては、原処分庁から「救助の事実はあり、救助の可能性があった」との回答を得た。またAさんが常時緊張を強いられる状態であったことに関連して、「生徒からすぐにでも自死したいと言った訴えやオーバードラッグを報告する連絡について調査したのか」と問うと、原処分庁は「確認していない」との回答であった。つまり、学校関係者からの報告のみを基にし、「仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった」点に関して十分な調査が行なわれてなかったことが明らかとなった。
そして何より、生徒さんがA先生とのつながりについての陳述書を作成してくれたことが審査に大きな影響を与えた。その陳述書には、Aさんがいかに寄り添い、励まし、そして泣きながらも話を聞いてくれたかが切々と綴られてあった。
◆総合評価は「強」
審査官は、前述した新たな資料を基に、「悲惨な事故や災害の体験、目撃した」出来事と、「事故後における生徒への対応については一連のものとして評価することが妥当」と判断した。
まず「悲惨な事故や災害の体験、目撃した」については、「生徒の出血量は相当な量であったと判断できる」「救急車が到着するまで生徒を励まし、警察の事情聴取に対応するなど、現場は緊迫した状況であったと推察できる」と判断した。
また、その後の状況について、「生徒に昼夜を問わない対応を行っていた期間、請求人は常に緊張状態にあったと判断する」「精神状態が不安定な時期にあった生徒への対応は、相当困難なものであったことが伺える」とし、心理的負荷の総合評価は「強」に該当すると判断した。
そして、「悲惨な事故や災害の体験、目撃した」出来事は、心理的負荷の強度「中」を超えると判断。出来事後の状況についても、「生徒への対応状況や、職場の支援・協力の状況を勘案すると、心理的負荷の総合評価は「強」に該当する」と判断し、原処分庁の判断を取り消すと決定した。
協力してくれた生徒さんの陳述書は、「 私との関わりが先生を精神的に追い詰め、私は申し訳ない気持ちと同時に、自分も必ず学校を卒業し、治癒された先生と再会して、恩返ししようと強く思いました。以上が私の思いです。」と結ばれていた。
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中・高一貫校で教師をされているAさんから、当センターに相談の電話が入ったのは今年の3月であった。
「精神疾患を発症し労災申請をおこなったが認められなかった」という内容で、相談のきっかけを尋ねてみると「貴団体のホームページに私の体験した内容と似ている事例が紹介されていた」と話された。
その事例というのは、介護施設で働く職員が利用者宅を訪問したところ、利用者が縊死をはかった現場に遭遇し、救助と救命活動を行ったが搬送先で亡くなられという内容である。職員はその後「外傷後ストレス障害」と診断され、労災申請をおこなったが不支給とされ、当センターも支援をしたが審査請求においても棄却された。
◆出来事の概要
Aさんは、2023年9月末頃より嘔吐する症状が出始め、その後も勤務を続けたが2024年2月に心療内科を受診したところ「適応障害」と診断された。Aさんは、2023年6月頃からの過重な業務や不法行為への加担の強要、上司からのパワーハラスメント、そして悲惨な事故への遭遇等により精神疾患を発症したとして2024年5月に労災申請をおこなった。
2023年9月末、放課後の学校に生徒から、市販薬を大量に服用し手首を切り自殺をはかった旨の電話があった。当初は担任の先生が生徒と対応していたが、生徒は居場所を言わないまま切電してしまった。その後、学年主任であるAさんが、自らの携帯電話で生徒に電話を架け、生徒が居る周囲の風景を撮影して送信させるなどの方法で居場所を突き止め、保護者とともに現場に向かった。駆け付けると、生徒の意識はあったが大量の血が流れ出ており、救急車が到着するまで救護を行い、生徒を励まし続けたのであった。
入院・治療を受け、生徒は再び登校できるようになったが、12月に入ると精神的に不安定な状態となり、Aさん宛に放課後や休日に頻繁に連絡をしてくるようになった。そして「しんどい」「死にたい」と繰り返し希死念慮を伝えるのだが、Aさんは遅い時間帯でも、休日でも、長時間の電話であっても思いとどまるように励まし続けた。生徒はAさんに電話やメッセージを送り、Aさんと繋がり話すことで精神の安定を保つ状態であった。
また、学校内で突発的に階段の踊り場から飛び降りようとした際には、Aさんが馬乗りになって止めたこともあった。Aさんは、こうした状況の中で常時緊張を強いられる状態が続き、2024年2月に心療内科を受診したのであった。
◆原処分庁の判断
原処分庁の判断は、①「仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった」について「弱」、②「業務に関連し、違法な行為や不適切な行為等を強要された」について「弱」、③「業務に関連し、悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」について「中」、④「仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった」について「中」、⑤「上司とのトラブルがあった」について「弱」とした。そして③と④については、関連する出来事として総合評価を「中」と判断した。
③については、「請求人に責任があったわけではなく、生徒の自殺未遂を回避することができたとはいえないことから、『特に悲惨な事故を目撃したが、本人が被災者を救助できる状況等でもなかった』に相当すると考えられ『中』と評価した」と判断した。
④については、生徒から頻繁に希死念慮を伝える連絡が入り常時緊張を強いられる状態が続いたことを訴えたのだが、「直ちに命にかかわるような切迫した危険を伴うものではなく、これまで生徒が繰り返し口にしている希死念慮を伝えてくる程度のことが大半であった」「常時緊張状態にあったと認められる程度に至らないことから…『中』相当と評価すべき」と判断したのであった。
◆新たな資料の準備、提出
審査請求にあたり、①生徒が倒れていた場所の画像、②生徒とのLine履歴、③生徒作成の陳述書、④生徒の作成したSNS等々の資料を提出した。
口頭意見陳述においては、原処分庁から「救助の事実はあり、救助の可能性があった」との回答を得た。またAさんが常時緊張を強いられる状態であったことに関連して、「生徒からすぐにでも自死したいと言った訴えやオーバードラッグを報告する連絡について調査したのか」と問うと、原処分庁は「確認していない」との回答であった。つまり、学校関係者からの報告のみを基にし、「仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった」点に関して十分な調査が行なわれてなかったことが明らかとなった。
そして何より、生徒さんがA先生とのつながりについての陳述書を作成してくれたことが審査に大きな影響を与えた。その陳述書には、Aさんがいかに寄り添い、励まし、そして泣きながらも話を聞いてくれたかが切々と綴られてあった。
◆総合評価は「強」
審査官は、前述した新たな資料を基に、「悲惨な事故や災害の体験、目撃した」出来事と、「事故後における生徒への対応については一連のものとして評価することが妥当」と判断した。
まず「悲惨な事故や災害の体験、目撃した」については、「生徒の出血量は相当な量であったと判断できる」「救急車が到着するまで生徒を励まし、警察の事情聴取に対応するなど、現場は緊迫した状況であったと推察できる」と判断した。
また、その後の状況について、「生徒に昼夜を問わない対応を行っていた期間、請求人は常に緊張状態にあったと判断する」「精神状態が不安定な時期にあった生徒への対応は、相当困難なものであったことが伺える」とし、心理的負荷の総合評価は「強」に該当すると判断した。
そして、「悲惨な事故や災害の体験、目撃した」出来事は、心理的負荷の強度「中」を超えると判断。出来事後の状況についても、「生徒への対応状況や、職場の支援・協力の状況を勘案すると、心理的負荷の総合評価は「強」に該当する」と判断し、原処分庁の判断を取り消すと決定した。
協力してくれた生徒さんの陳述書は、「 私との関わりが先生を精神的に追い詰め、私は申し訳ない気持ちと同時に、自分も必ず学校を卒業し、治癒された先生と再会して、恩返ししようと強く思いました。以上が私の思いです。」と結ばれていた。