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メンタル労災・ハラスメント
全国一斉ほっとラインを開設

2025/11/21
◆全国一斉ホットラインを開設
全国労働安全衛生センター連絡会議メンタルヘルス・ハラスメント対策局では、10月10日の「世界メンタルヘルスデー」に合わせ、全国一斉「メンタル労災・ハラスメントほっとライン」を10日・11日の2日間にわたり実施した。
この取り組みでは、ハラスメントや長時間労働、心の不調に悩む労働者が安心して相談できる窓口を提供することを目的に、精神障害の労災申請やハラスメント対応について全国の地域安全センターや労働組合のスタッフらが相談を受け止めた。ほっとラインには、全国から計54件の相談が寄せられた。


◆年齢・雇用形態等に見る傾向
男女別では男性28件、女性26件とほぼ同数に達しており、性別を間わず誰もが被害を受け得る現実がある。年齢別では、40代13件、50代14件、60代以上7件と、働き盛りからベテラン層にかけての相談が全体の6割を超えた。10~20代は3件、30代は4件と若年層は少なめだが、「入社して間もなく上司の叱責を受けた」「新人研修中のいじめ」といった深刻な内容が目立った。
雇用形態では、正規雇用25件、非正規雇用 15件、その他5件、非回答9件となり、正規雇用の労働者が被害を訴える割合が高かった。非正規労働者からは「契約更新のことを考えると何も言えない」といった声が寄せられ、 雇用の不安定さもハラスメント被害を助長する要因と考えられる。


◆職場で広がる‘‘見えない暴力”
ハラスメントに関する相談について行為の類型を分類すると、最も多いのは「精神的な攻撃」34件で、全体の6割以上を占めた。怒嗚りつけや人格否定、侮辱的発言、過度な叱責などが繰り返され、被害者がうつ病や適応障害を発症したケースも少なくない。
次いで「隔離・無視などの人間関係からの切り離し」12件が目立ち、「職場で挨拶をしても返されない」「同僚らから無視される」「研修と称して監視カメラや音声録音の機械が自分の机に設置され」といった、組織ぐるみの排除行為の相談もあった。
また、身体的な攻撃4件、過大な要求4件、過小な要求3件、個の侵害4件も報告され、叱責や暴言だけでなく、仕事の割り当て・私生活への干渉といった形で被害が多様化していることが分かる。
相談の中には、行為の類型が複数に重なっているケースも多く、「上司の暴言に加え、同僚からの孤立」「過大なノルマと暴力的指導が同時に発生」といった複合的ハラスメントが特徴的であった。


◆医療・福祉現場で顕在化する人間関係の歪み
業種別では、医療・福祉分野が13件と最多を占めた。医療・介護の現場では、「人手不足の中で上司の暴言が日常化している」「患者からの暴力をうけ、急性ストレス症状になり休職中。安全配慮義務違反があると思う」といった訴えが寄せられた。
命や生活を支える仕事であるがゆえに、緊張が常態化し、管理職が“厳しい指導”を正当化する構造が生まれやすい。加えて、慢性的な人員不足が労働環境を悪化させ、「ケアする人がケアされない職場」となってしまっている。


◆相談窓口が機能しないー「言っても無駄」というあきらめ
相談内容の多くで共通していたのは、「会社に相談しても改善されなかった」という声である。「管理者に話をしても相手にされない」「会社の組合に相談したが何もしてくれない」「内部監査室に通報したが形式的な調査で終わった。その後、行為者が逆恨みしてパワハラが酷くなった」「相談してもこの人はこういう人だからと取り合ってくれない」といった声が寄せられ、被害を訴えたことで二次的な不利益を受けるケースが少なくないことがわかる。
「パワハラ防止法」によりすべての企業にハラスメント防止措置義務が課せられているにもかかわらず、相談窓口の整備や実効性ある調査・再発防止策が十分に機能していない。被害者の「声を上げても報われない」経験が、沈黙を生み出す悪循環をつくつている。


◆メンタル不調・複合的被害の広がり
今回のほっとラインでは、ハラスメント相談の内19件が体調不良を訴えており、休職中やすでに退職しているケースも見られた。また、体調不良を訴えている方の中には、すでに病院を受診し、うつ症状や適応障害、自律神経失調症、急性ストレス障害などと診断されているケースもあり、心身の限界に達した状態での相談が多かった。
こうした状況に対して、相談員からは「早期に医療機関を受診し、記録を残すこと」「外部機関に相談をつなぐこと」の重要性が繰り返し伝えられた。


◆誰もが安心して相談できる職場環境を
今回の相談の中には、面談などを行い継続的な支援が必要な事例や、労働組合への加入を希望される事例もあった。
「働く人の尊厳を守ることが、職場環境を整える第一歩」である。制度を整えるだけでなく、「声を上げても大丈夫だ」と感じられる職場環境を根づかせることが求められている。
ハラスメントは、個人の性格や感情の問題ではなく、組織の構造と意識の問題である。
職場の誰もが安心して助けを求められる環境をつくることが、働く人の命と心を守るために、今まさに問われている課題である。

 

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