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アスベスト・中皮腫・肺がん・じん肺
旧国鉄職員の石綿被害 補償に隙間
2017/09/20
◆石綿被害が多発する国鉄職場
元国鉄職員であった方が発症した石綿による疾病は、国鉄の権利義務を承継している独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下、「鉄道・運輸機構」という)が補償に関する対応を行っている。国鉄職員は労災保険の適用外となっていたため、国鉄では独自の業務災害補償制度を設けていた。そのため、国鉄当時の業務災害等に起因する補償業務については鉄道・運輸機構が行っているのである。
鉄道・運輸機構のホームページには、「元国鉄職員に対する石綿(アスベスト)を起因とする業務災害補償等認定実績」が紹介されている。現在(
2017
年
9
月
10
日)は、平成
29
(
2017
)年
3
月
31
日時点の実績が掲載されている。以前に比べて申請者及び認定者の数が減っていることが影響しているのか、「認定実績」の更新はかなり不定期となっている。「認定実績」によると、平成
29
(
2017
)年
3
月末時点での認定者数は
464
名にも上り、うち救済新法に係る者は
125
名となっている。
また、被災者の勤務場所についても公表されており、工場を中心に被害の多発が確認できるが、被害が全国各地に拡がっていることも明らかとなっている。こうした数字等からも、国鉄は日本一石綿による健康被害が発生している事業場といえる。
◆Aさんに係る申請と認定決定から
2015
年
11
月、国労米子地本の主催によるアスベスト学習会と
OB
らを対象とした相談会が開催され、私も相談員の一人として参加した。その際に相談に来られたのが米子市の
A
さんであった。
A
さんのお父さんは、
1956
(昭和
31
)年
7
月から
1978
(昭和
53
)年
3
月まで、国鉄後藤工場の旋盤職場で部品等の製造作業に従事し、
2010
(平成
22
)年
7
月に肺がんを発症された。治療し療養されていたのだが、
2015
(平成
27
)年
1
月に亡くなられた。相談会に来られた
A
さんからは、「国鉄時代の石綿が死亡原因ではないだろか」と相談があった。
そこで病院からカルテと胸部画像を入手し、医師に確認したところ胸膜プラークの所見が認められた。また、国労米子地本の協力により、同僚らから作業内容を確認することもできた。そこで
2016
(平成
28
)年
2
月
23
日に鉄道・運輸機構に業務災害認定申請を行い、翌月の
3
月
28
日には
A
さんの元に業務災害認定の通知が届いた。
◆元国鉄職員への補償制度
鉄道・運輸機構に認定請求を行った場合、国鉄当時の業務に起因する災害に該当するか調査が行われ、「業務災害認定」が行われる。その後、請求者が受けられる補償の支給手続きが進められ、補償内容については次のような説明がされる。
遺族補償:業務災害により亡くなられた場合、ご遺族(配偶者が健在のみ)に対して殉職年金(
4
年後)及び遺族補償一時金を支給
葬祭料:業務災害により亡くなられた場合、葬祭される方に支給
休業補償:療養のため勤務することが出来ず、給与を受けない時に補償
療養補償:治癒するまでの間の療養費を補償
交通費:療養の病院に行くための交通費(領収書が必要) 等々
また、補償水準については次のようになっている。療養補償、「全額補償」。休業補償、「基準内賃金(基本給、扶養手当及び都市手当の合計額)」。葬祭料、「平均賃金、標準報酬の
80
日分」。遺族一時金、「平均賃金、標準報酬の
1,700
日分」。遺族年金、「
1
人・
153
日分(但し、妻が
55
歳以上か障害がある場合は
175
日分)、
2
人・
201
日分、
3
人・
223
日分、
4
人以上・
245
日分+遺族特別支給金
300
万円」。労災保険の補償水準を上回る項目もあるが、これは旧国鉄における労働運動の取り組みを反映しているのではないだろうか。
さて、問題はここからである。業務災害と認定された被災者には、休業補償に関する通知がなされる。そこには、「昭和
62
年
3
月
31
日以前に係る業務災害補償等規定第
26
条で、『職員が業務上負傷し、又は疾病にかかり、療養のため勤務に服することができない場合において給与を受けない時は、休業補償を行う。』と規定されております。
よって、業務災害認定者が休業補償の請求する意思がある場合は別紙にて請求する方はお願いします。」と記され、さらに「休業補償を希望される場合は(別紙
1
)を不要の場合は(別紙
2
)を現在他の法律で何らかの手当を支給されている方は(別紙
3
)でお知らせください。」とされ、各別紙が渡される。つまり、休業補償の請求を行うか否かの意思確認が行われるのである。
◆休業・療養補償は遺族に支給実績なし
A
さんの場合(既にお母さんも亡くなっておられる)、業務災害の認定を受け、鉄道・運輸機構から遺族一時金と葬祭料の請求手続きを行うよう書類が送付された。ところが、休業補償と療養補償に関する請求手続きについては何ら説明がなかった。
労災保険の休業補償は、療養のため労働することができず賃金を受けない日ごとに請求権が発生し、その翌日から
2
年を経過すると時効により請求権が消滅する。
A
さんの事例でも、認定請求時において約
1
年間分の請求権が残っていた。また、療養補償に関する請求権は認定日から
2
年であり、
A
さんの場合でも請求権は残っている。ところが、鉄道・運輸機構に確認すると、「本人(被災者)からの申請がない…」「支払った実績がなく、内規に触れる」との理解できない回答であった。亡くなった被災者からは働く意思があったことを確認できないから支給しないというのである。
これまで鉄道・運輸機構においては、石綿に起因する業務災害が
460
名を超えるが、請求者が療養中の場合は本人の意思を確認したうえで休業補償を支払い、既に被災者が亡くなり遺族が請求を行った場合は、休業補償の支給実績が無かったのである。そこで、国労本部に協力を依頼し、国労と鉄道・運輸機構との交渉が複数回行われることになった。しかし、鉄道・運輸機構は、「個別の事案であり、個別に判断する」との回答に終始した。
◆交渉を通じ初の支給実績
労働組合に対しては正式な回答を避けたが、
A
さんには休業補償と療養補償の請求があれば個別に判断するとの対応であった。そこで、病院の証明を取り、治療費を国保に返還した領収書を添付し請求を行ったところ、休業補償の約
1
年分と自己負担分の療養費の支払いが行われたのであった。業務災害認定の通知が届いてから、約
1
年が経過していた。
460
名を超える業務上の認定実績がありながら、遺族に対する休業補償と療養補償の支給は
A
さんが初めてである。ということは、本来給付を受ける権利がありながらも、補償を受けていない遺族が数多く存在しているのである。
鉄道・運輸機構は労働組合に対して「個別事案」との見解を崩さなかったが、こうした姿勢からも、本来補償を受けることができた遺族に対する遡及支給は実現していないと思われる。
さらに引き続き、労働組合や被災者団体との連携を強めながら、補償制度の不備を改善させると共に、本来補償を受けることができる遺族全員に対する遡及支給を実現させる必要がある。
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元国鉄職員であった方が発症した石綿による疾病は、国鉄の権利義務を承継している独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下、「鉄道・運輸機構」という)が補償に関する対応を行っている。国鉄職員は労災保険の適用外となっていたため、国鉄では独自の業務災害補償制度を設けていた。そのため、国鉄当時の業務災害等に起因する補償業務については鉄道・運輸機構が行っているのである。
鉄道・運輸機構のホームページには、「元国鉄職員に対する石綿(アスベスト)を起因とする業務災害補償等認定実績」が紹介されている。現在(2017年9月10日)は、平成29(2017)年3月31日時点の実績が掲載されている。以前に比べて申請者及び認定者の数が減っていることが影響しているのか、「認定実績」の更新はかなり不定期となっている。「認定実績」によると、平成29(2017)年3月末時点での認定者数は464名にも上り、うち救済新法に係る者は125名となっている。
また、被災者の勤務場所についても公表されており、工場を中心に被害の多発が確認できるが、被害が全国各地に拡がっていることも明らかとなっている。こうした数字等からも、国鉄は日本一石綿による健康被害が発生している事業場といえる。
◆Aさんに係る申請と認定決定から
2015年11月、国労米子地本の主催によるアスベスト学習会とOBらを対象とした相談会が開催され、私も相談員の一人として参加した。その際に相談に来られたのが米子市のAさんであった。
Aさんのお父さんは、1956(昭和31)年7月から1978(昭和53)年3月まで、国鉄後藤工場の旋盤職場で部品等の製造作業に従事し、2010(平成22)年7月に肺がんを発症された。治療し療養されていたのだが、2015(平成27)年1月に亡くなられた。相談会に来られたAさんからは、「国鉄時代の石綿が死亡原因ではないだろか」と相談があった。
そこで病院からカルテと胸部画像を入手し、医師に確認したところ胸膜プラークの所見が認められた。また、国労米子地本の協力により、同僚らから作業内容を確認することもできた。そこで2016(平成28)年2月23日に鉄道・運輸機構に業務災害認定申請を行い、翌月の3月28日にはAさんの元に業務災害認定の通知が届いた。
◆元国鉄職員への補償制度
鉄道・運輸機構に認定請求を行った場合、国鉄当時の業務に起因する災害に該当するか調査が行われ、「業務災害認定」が行われる。その後、請求者が受けられる補償の支給手続きが進められ、補償内容については次のような説明がされる。
遺族補償:業務災害により亡くなられた場合、ご遺族(配偶者が健在のみ)に対して殉職年金(4年後)及び遺族補償一時金を支給
葬祭料:業務災害により亡くなられた場合、葬祭される方に支給
休業補償:療養のため勤務することが出来ず、給与を受けない時に補償
療養補償:治癒するまでの間の療養費を補償
交通費:療養の病院に行くための交通費(領収書が必要) 等々
また、補償水準については次のようになっている。療養補償、「全額補償」。休業補償、「基準内賃金(基本給、扶養手当及び都市手当の合計額)」。葬祭料、「平均賃金、標準報酬の80日分」。遺族一時金、「平均賃金、標準報酬の1,700日分」。遺族年金、「1人・153日分(但し、妻が55歳以上か障害がある場合は175日分)、2人・201日分、3人・223日分、4人以上・245日分+遺族特別支給金300万円」。労災保険の補償水準を上回る項目もあるが、これは旧国鉄における労働運動の取り組みを反映しているのではないだろうか。
さて、問題はここからである。業務災害と認定された被災者には、休業補償に関する通知がなされる。そこには、「昭和62年3月31日以前に係る業務災害補償等規定第26条で、『職員が業務上負傷し、又は疾病にかかり、療養のため勤務に服することができない場合において給与を受けない時は、休業補償を行う。』と規定されております。よって、業務災害認定者が休業補償の請求する意思がある場合は別紙にて請求する方はお願いします。」と記され、さらに「休業補償を希望される場合は(別紙1)を不要の場合は(別紙2)を現在他の法律で何らかの手当を支給されている方は(別紙3)でお知らせください。」とされ、各別紙が渡される。つまり、休業補償の請求を行うか否かの意思確認が行われるのである。
◆休業・療養補償は遺族に支給実績なし
Aさんの場合(既にお母さんも亡くなっておられる)、業務災害の認定を受け、鉄道・運輸機構から遺族一時金と葬祭料の請求手続きを行うよう書類が送付された。ところが、休業補償と療養補償に関する請求手続きについては何ら説明がなかった。
労災保険の休業補償は、療養のため労働することができず賃金を受けない日ごとに請求権が発生し、その翌日から2年を経過すると時効により請求権が消滅する。Aさんの事例でも、認定請求時において約1年間分の請求権が残っていた。また、療養補償に関する請求権は認定日から2年であり、Aさんの場合でも請求権は残っている。ところが、鉄道・運輸機構に確認すると、「本人(被災者)からの申請がない…」「支払った実績がなく、内規に触れる」との理解できない回答であった。亡くなった被災者からは働く意思があったことを確認できないから支給しないというのである。
これまで鉄道・運輸機構においては、石綿に起因する業務災害が460名を超えるが、請求者が療養中の場合は本人の意思を確認したうえで休業補償を支払い、既に被災者が亡くなり遺族が請求を行った場合は、休業補償の支給実績が無かったのである。そこで、国労本部に協力を依頼し、国労と鉄道・運輸機構との交渉が複数回行われることになった。しかし、鉄道・運輸機構は、「個別の事案であり、個別に判断する」との回答に終始した。
◆交渉を通じ初の支給実績
労働組合に対しては正式な回答を避けたが、Aさんには休業補償と療養補償の請求があれば個別に判断するとの対応であった。そこで、病院の証明を取り、治療費を国保に返還した領収書を添付し請求を行ったところ、休業補償の約1年分と自己負担分の療養費の支払いが行われたのであった。業務災害認定の通知が届いてから、約1年が経過していた。460名を超える業務上の認定実績がありながら、遺族に対する休業補償と療養補償の支給はAさんが初めてである。ということは、本来給付を受ける権利がありながらも、補償を受けていない遺族が数多く存在しているのである。
鉄道・運輸機構は労働組合に対して「個別事案」との見解を崩さなかったが、こうした姿勢からも、本来補償を受けることができた遺族に対する遡及支給は実現していないと思われる。
さらに引き続き、労働組合や被災者団体との連携を強めながら、補償制度の不備を改善させると共に、本来補償を受けることができる遺族全員に対する遡及支給を実現させる必要がある。