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労災事故・障害補償・審査請求
石綿肺がん ばく露作業歴7年を理由に審査請求棄却
2017/04/20
◆概要
被災者の
K
さんは、岡山市にある石綿含有建材の製造工場において、昭和
47
年
4
月から
54
年
4
月までの
85
ヵ月間、機械技術者として工場内に設置されたあらゆる機械装置の点検作業に従事した。その後、住宅販売会社に就職し、平成
24
年
3
月末まで営業担当者として勤務した。
K
さんは、平成
25
年に人間ドックで肺の異常を指摘され、経過観察を行っていたところ平成
26
年
8
月に肺がんと診断された。兵庫県立がんセンターにおいて左肺上葉の切除術を施行したが、順調に回復し同年
10
月以降は就労を行っている。
K
さんに喫煙歴はなく、主治医から「肺がんの原因として石綿の可能性が考えられる」との説明を受け、岡山労働基準監督署に労災申請を行ったのであった。
◆業務外の判断
平成
27
年
12
月、
K
さんの元に届いたハガキは「不支給決定通知」で、「本件は、石綿による疾病の認定基準における肺がんの認定要件を満たしていないため」と書かれていた。納得できない
K
さんは審査請求を行ったが、平成
28
年
5
月に「本件審査請求を棄却する」との決定書が届いた。
決定書を見ると、審査官は①石綿含有製品の製造作業周辺等において
7
年
1
ヵ月の間、石綿への間接的なばく露を受ける作業に従事したことが認められる、②胸膜プラークは認めるが、その広がりは四分の一以上のものには該当しない、③石綿小体は
519
本、石綿繊維
5
μ
m
超は
15
万本、石綿繊維
l
μ
m
超は
54
万本の本数であった、④石綿肺の所見とびまん性胸膜肥厚の発症は認められない、と判断した。
つまり、石綿ばく露歴については
7
年
1
ヵ月を認め、原発性肺がんを発症したことも認め、胸膜プラークも認めるが、石綿ばく露作業への従事期間が
10
年末満であり、石綿小体や繊維の数が認定基準を
下回っているため、労災とは認められないと判断したのであった。
◆原処分庁の調査不備
アスベストセンターを経由し、
K
さんから当センターに相談の電話が入ったのは昨年の
6
月であった。お話を伺い、当センターが代理人となり再審査請求を取り組むこととなった。
まず気になった点は、岡山の工場における石綿ばく露の実態であった。平成
24
年
3
月に石綿による疾病の認定基準が改訂され、①石綿糸・石綿布等の石綿紡績製品、②石綿セメント又はこれを原料として製造される石綿スレート・石綿高圧管・石綿円筒等のセメント製品、の製造若しくは石綿の吹付け作業の場合は、ばく露期間が
5
年とされた。
K
さんが従事した機械装置の点検作業と、建材を製造している労働者とのばく露内容がどの様に違うのかという点である。
また、約
30
年間勤務した住宅販売会社において、住宅の建設現場に立ち入ることは無かったのかという点である。
◆Kさんの石綿粉じんばく露作業の実態
K
さんの仕事は工場内の機械のメンテナンス作業であるが、その大前提として工場内の機械装置に不具合が起こらないよう、装置が止まらないように日常的に機械装置の具合を点検することであった。そのため、工具袋と聴音棒を持ち工場内のあちこちを巡回していたのである。つまり、建材を製造している作業員と同じ環境の中で一日を過ごしていたのである。
工場内には、石綿と液体を撹拌させる機械や、建材を乾燥させる装置、建材を裁断する措置等々、無数の機械装置が備え付けてある。それらの動力源となるモーターは数え切れないほど設置されていた。これらの機械装置は、日常的に清掃される場所には設置されていないため、常に埃を被った状態にあった。そのため
K
さんは、マスクもせず、建材を製造している作業員以上に粉じんを吸引する状態で作業を行っていたといえる。
住宅販売会社での作業内容についても確認すると、顧客との現場打ち合わせや上棟打合せの際に建設中の作業現場に立ちることが有り、また進捗状況を顧客に説明するため現場に立ち入り写真撮影を行ったり、近隣住民からのクレーム対応のため作業現場で作業人に指示を出すこともあった。
K
さんの手帳を基に計算したところ、現場に足を運んだ回数が延べ
963
回で、滞在時間を通算すると最低でも
2
年
6
ヵ月間の間接的な石綿ばく露期間があったと主張した。
◆審査会の判断
3
月末に裁決書が届いた。審査会の判断は、岡山の工場での作業内容に関して「製造作業に従事した労働者と同等のものであったとみることはできない」等と、たった
5
行で切り捨てた。建設現場への立ち入りについても「請求人が主張する
2
年
6
ヵ月の間、石綿にばく露したとしても、合わせて
9
年
7
ヵ月であり、
10
年以上のばく露期間は認められない。」と木で鼻を括った判断であった。そして、被災者がばく露した石綿がクリソタイルであったことも全く考慮していない。全く不当な裁決である。
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被災者のKさんは、岡山市にある石綿含有建材の製造工場において、昭和47年4月から54年4月までの85ヵ月間、機械技術者として工場内に設置されたあらゆる機械装置の点検作業に従事した。その後、住宅販売会社に就職し、平成24年3月末まで営業担当者として勤務した。
Kさんは、平成25年に人間ドックで肺の異常を指摘され、経過観察を行っていたところ平成26年8月に肺がんと診断された。兵庫県立がんセンターにおいて左肺上葉の切除術を施行したが、順調に回復し同年10月以降は就労を行っている。Kさんに喫煙歴はなく、主治医から「肺がんの原因として石綿の可能性が考えられる」との説明を受け、岡山労働基準監督署に労災申請を行ったのであった。
◆業務外の判断
平成27年12月、Kさんの元に届いたハガキは「不支給決定通知」で、「本件は、石綿による疾病の認定基準における肺がんの認定要件を満たしていないため」と書かれていた。納得できないKさんは審査請求を行ったが、平成28年5月に「本件審査請求を棄却する」との決定書が届いた。
決定書を見ると、審査官は①石綿含有製品の製造作業周辺等において7年1ヵ月の間、石綿への間接的なばく露を受ける作業に従事したことが認められる、②胸膜プラークは認めるが、その広がりは四分の一以上のものには該当しない、③石綿小体は519本、石綿繊維5μm超は15万本、石綿繊維lμm超は54万本の本数であった、④石綿肺の所見とびまん性胸膜肥厚の発症は認められない、と判断した。
つまり、石綿ばく露歴については7年1ヵ月を認め、原発性肺がんを発症したことも認め、胸膜プラークも認めるが、石綿ばく露作業への従事期間が10年末満であり、石綿小体や繊維の数が認定基準を下回っているため、労災とは認められないと判断したのであった。
◆原処分庁の調査不備
アスベストセンターを経由し、Kさんから当センターに相談の電話が入ったのは昨年の6月であった。お話を伺い、当センターが代理人となり再審査請求を取り組むこととなった。
まず気になった点は、岡山の工場における石綿ばく露の実態であった。平成24年3月に石綿による疾病の認定基準が改訂され、①石綿糸・石綿布等の石綿紡績製品、②石綿セメント又はこれを原料として製造される石綿スレート・石綿高圧管・石綿円筒等のセメント製品、の製造若しくは石綿の吹付け作業の場合は、ばく露期間が5年とされた。Kさんが従事した機械装置の点検作業と、建材を製造している労働者とのばく露内容がどの様に違うのかという点である。
また、約30年間勤務した住宅販売会社において、住宅の建設現場に立ち入ることは無かったのかという点である。
◆Kさんの石綿粉じんばく露作業の実態
Kさんの仕事は工場内の機械のメンテナンス作業であるが、その大前提として工場内の機械装置に不具合が起こらないよう、装置が止まらないように日常的に機械装置の具合を点検することであった。そのため、工具袋と聴音棒を持ち工場内のあちこちを巡回していたのである。つまり、建材を製造している作業員と同じ環境の中で一日を過ごしていたのである。
工場内には、石綿と液体を撹拌させる機械や、建材を乾燥させる装置、建材を裁断する措置等々、無数の機械装置が備え付けてある。それらの動力源となるモーターは数え切れないほど設置されていた。これらの機械装置は、日常的に清掃される場所には設置されていないため、常に埃を被った状態にあった。そのためKさんは、マスクもせず、建材を製造している作業員以上に粉じんを吸引する状態で作業を行っていたといえる。
住宅販売会社での作業内容についても確認すると、顧客との現場打ち合わせや上棟打合せの際に建設中の作業現場に立ちることが有り、また進捗状況を顧客に説明するため現場に立ち入り写真撮影を行ったり、近隣住民からのクレーム対応のため作業現場で作業人に指示を出すこともあった。Kさんの手帳を基に計算したところ、現場に足を運んだ回数が延べ963回で、滞在時間を通算すると最低でも2年6ヵ月間の間接的な石綿ばく露期間があったと主張した。
◆審査会の判断
3月末に裁決書が届いた。審査会の判断は、岡山の工場での作業内容に関して「製造作業に従事した労働者と同等のものであったとみることはできない」等と、たった5行で切り捨てた。建設現場への立ち入りについても「請求人が主張する2年6ヵ月の間、石綿にばく露したとしても、合わせて9年7ヵ月であり、10年以上のばく露期間は認められない。」と木で鼻を括った判断であった。そして、被災者がばく露した石綿がクリソタイルであったことも全く考慮していない。全く不当な裁決である。