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< 地震・石綿・マスク支援プロジェクト
地震・石綿・マスク支援プロジェクト
熊本地震 被災地におけるアスベスト調査報告
2016/07/20
◆はじめに
2016
年
4
月
14
日と
16
日の
2
度にわたり震度
7
を記録した熊本地震では、多くの人的被害と共に住宅被害は
15
万
5
千棟に及んでいます。
4
月以降も余震は続いており、避難している人の震災関連死も発生しています。
被災した建物にはアスベストを含む建材が使用されていることが多く、被災地では地震による直接の被害とその後の解体・撤去作業によりアスベストが飛散する可能性が高まっています。今回、
6
月
19
日から
21
日までの
3
日間、東京労働安全衛生センターの皆さん方と一緒に、被災地熊本におけるアスベスト飛散調査を取り組みました。兵庫からは
4
名が参加しました。
◆熊本市ごみ処分施設での調査
被災地においては、被害を受けた建物の取り壊しや撤去作業が本格化する時期を迎えています。阪神淡路と東日本大震災を経験した私たちは、こうした作業においてアスベストが飛散する危険性が高まっていることがわかります。
明石市においては、
21
年前の阪神淡路大震災の際にがれきの撤去や処理業務に携わった清掃労働者が、中皮腫を発症し
2013
年
10
月に死亡する事案が発生しており、現在、公務災害の認定闘争に取り組んでいるところです。住民や作業関係者の健康被害を末然に防止し、より適切な作業環境を整備する観点から、作業に従事する労働者により近い場所でのアスベスト濃度の測定を行うため、明石市職員労働組合を通じて熊本市職員組合に協力を依頼しました。そうしたところ、快く引き受けていただき、熊本市の扇田環境センターと東部環境工場における調査が実現しました。
初日の
19
日(日)は、熊本市役所において職員組合の皆さんと行動日程について打ち合わせを行いました。
◆扇田環境センターの調査
6
月
20
日(月)は朝から小雨の降る天候でしたが、熊本市職員組合の方に案内していただき、震災ゴミの集積所でのアスベスト含有建材の調査を行いました。
初めに熊本市西部の扇田環境センターの処理場を調査しました。入ってくる車にはあらかじめ分別されたゴミが積まれており、ここに搬入されている物は、木材と不燃物でした。木材はチップ状に加工して再利用させるそうですが、現在はとりあえず積み上げられていました。その中には、木材以外の建材も混じっていました。
不燃物の埋め立て処分場へは、瓦やブロック塀などに混じって外壁用の窯業系サイディングなどのレベル
3
の建材も見られました。実際詳しく調べなければこれらの建材の中にアスベストが含有されているのかわかりませんが、あまりにも無造作に扱われていました。作業している人もマスクなど着用せず重機で粉砕するなど、全くアスベスト建材に対して意識がありません。
◆東部環境工場と仮置き場の調査
その後、戸島という地域にある震災ゴミの仮置き場で調査を行いました。東部環境工場の敷地にはガレキや生ごみが混じった震災ごみが山のように積まれていましたが、「一時よりは減った」との説明でした。今は分別をして可燃ごみは焼却処分をしているそうです。
戸島の仮置場も分別されないゴミがいくつもの大きな山になっていましたが、徐々に分別がすすめられており、関西の業者のマークの入ったコンテナに積込まれていました。これから三重県に運び処分すると言うことでした。
ここでもサイディングや石膏ボードなどレベル
3
の建材が混入していました。残念なのは、大雨避難警報が発令される状況のため、測定を実施出来なかったことです。罹災証明の発行が遅れているため、被災家屋の解体はこれから本格化します。倒壊家屋の解体・撤去作業において作業員に対する教育を十分に行い、アスベスト含有建材を適切に処分し、震災によるアスベスト被害が再び起こることが無いようにしなければいけません。
◆益城町における調査
20
日は戸島の仮置き場調査のあと、近くの益城町の中心部へ向かいました。報道により被害の大きさを知っていましたが、やはり直接目の前にすると言葉がありません。この日は朝から雨が降り続き次第に降りも強くなってきたために、車の中から被災地を見て回りました。避難所になっている益城町総合体育館では、今なお多くの人が駐車場など屋外で夜を過ごしているようでした。近くの瓦礫仮置場にも向かいましたが、まだあまりガレキは集まっていませんでした。全壊家屋が多いため本格的な解体作業はこれからという様子でした。
翌
21
日の午後に天候が回復したため、もう一度益城町へ向かい町役場の周辺の家屋の調査を行いました。古い木造家屋が多いので吹き付け材は多くはありませんでしたが、一部の鉄骨造の建物では確認しました。詳しい調査が必要ですがアスベストが含まれている可能性が高いものです。その他スレート系の屋根材やボード類など石綿含有が疑われる建材は多くあります。これからの本格的な解体作業で適切な処理が望まれます。
◆熊本市内における調査
21
日の午前中は、事前調査を取組んだ東京センターの外山さんやアスベストセンターの永倉さんの案内で、熊本市内を歩きながら被災した建物の調査を行いました。継続的に発生した地震の影響は熊本市内にも様々な傷跡を残しており、市内中心部の商店街でも改築工事が行われている店舗も多く、外壁が剥がれ落ちた建物も目立ちました。
視察調査を行っていると、天井に吹き付け材がある建物の内装工事の現場に遭遇しました。アスベスト含有の有無は直ぐには分かりませんが、作業員の方がマスクを着用せずに作業をしており、手持ちの簡易マスクを提供しアスベストの危険性について説明を行いました。また、改修を行っているのに、アスベストの有無に関する調査表示がない工事現場もありました。
熊本市内を歩くと、近くに熊本城が見えるのですが、崩れた石垣や倒れた塀から揺れの強さと被害の大きさを改めて実感しました。さらに、
6
月に降り続いた大雨のために、石垣の崩壊が拡大しているそうです。熊本のシンボルの一日も早い復興が望まれます。
◆緊急シンポジウム「震災とアスベスト」
21
日の夜は、熊本県民交流館において、「震災とアスベスト」をテーマに緊急シンポジウムを開催しました。阪神淡路大震災と東日本大震災におけるアスベスト対策の経験を基に、今回の熊本地震における課題を考える企画です
シンポジウムは、最初に永倉冬史氏(中皮腫・じん肺・アスベストセンター)から「アスベストについて」と題して、アスベスト関連疾患や使用状況に関する解説がありました。
次に、熊本学園大学の中地重晴氏から、阪神淡路大震災と熊本地霰を経験した報告が行われました。外山尚紀氏(東京労働安全衛生センター)からは「東日本大震災でのアスベスト対策」と題して、この間の東北での調査状況と課題について報告が有りました。最後に、立命館大学の南慎二郎氏から「二つの震災から学ぶアスベスト対策」について報告があり、平時からの保護具の備蓄や行政の管理体制の必要性が訴えられました。
シンポジウムには、熊本県と熊本市の担当者の参加があり、アスベスト対策の現状について報告がありました。これから倒壊家屋の解体や撤去作業が本格化する中で、行政との連携も求められており、問題意識の共有という点でも今回のシンポジウムは有意義な取り組みとなりました。
◆さいごに
被害の大きい益城町を歩きながら倒壊した家屋を目の当たりにし、阪神淡路大震災の被災地の状況が蘇りました。道が大きくたわみ、倒壊し傾いた建物群の中に居ると平衡感覚を失う状況でした。避難所や自宅の庭にテントを張り暮らしている方々の姿も多くありました。一日も早く、以前の生活に近づくよう願うしかありません。
しかし、復興を急ぐあまりにアスベストを飛散させる事態が生じてはいけません。大震災を経験し、アスベスト被害を経験した私たちだからこそ、熊本の人たちに伝える課題があります。今回は大雨のため実施することが出来なかったアスベスト飛散調査を、改めて早急に取り組み、被災地の皆さんに伝えたいと考えています。
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2016年4月14日と16日の2度にわたり震度7を記録した熊本地震では、多くの人的被害と共に住宅被害は15万5千棟に及んでいます。4月以降も余震は続いており、避難している人の震災関連死も発生しています。
被災した建物にはアスベストを含む建材が使用されていることが多く、被災地では地震による直接の被害とその後の解体・撤去作業によりアスベストが飛散する可能性が高まっています。今回、6月19日から21日までの3日間、東京労働安全衛生センターの皆さん方と一緒に、被災地熊本におけるアスベスト飛散調査を取り組みました。兵庫からは4名が参加しました。
◆熊本市ごみ処分施設での調査
被災地においては、被害を受けた建物の取り壊しや撤去作業が本格化する時期を迎えています。阪神淡路と東日本大震災を経験した私たちは、こうした作業においてアスベストが飛散する危険性が高まっていることがわかります。
明石市においては、21年前の阪神淡路大震災の際にがれきの撤去や処理業務に携わった清掃労働者が、中皮腫を発症し2013年10月に死亡する事案が発生しており、現在、公務災害の認定闘争に取り組んでいるところです。住民や作業関係者の健康被害を末然に防止し、より適切な作業環境を整備する観点から、作業に従事する労働者により近い場所でのアスベスト濃度の測定を行うため、明石市職員労働組合を通じて熊本市職員組合に協力を依頼しました。そうしたところ、快く引き受けていただき、熊本市の扇田環境センターと東部環境工場における調査が実現しました。
初日の19日(日)は、熊本市役所において職員組合の皆さんと行動日程について打ち合わせを行いました。
◆扇田環境センターの調査
6月20日(月)は朝から小雨の降る天候でしたが、熊本市職員組合の方に案内していただき、震災ゴミの集積所でのアスベスト含有建材の調査を行いました。
初めに熊本市西部の扇田環境センターの処理場を調査しました。入ってくる車にはあらかじめ分別されたゴミが積まれており、ここに搬入されている物は、木材と不燃物でした。木材はチップ状に加工して再利用させるそうですが、現在はとりあえず積み上げられていました。その中には、木材以外の建材も混じっていました。
不燃物の埋め立て処分場へは、瓦やブロック塀などに混じって外壁用の窯業系サイディングなどのレベル3の建材も見られました。実際詳しく調べなければこれらの建材の中にアスベストが含有されているのかわかりませんが、あまりにも無造作に扱われていました。作業している人もマスクなど着用せず重機で粉砕するなど、全くアスベスト建材に対して意識がありません。
◆東部環境工場と仮置き場の調査
その後、戸島という地域にある震災ゴミの仮置き場で調査を行いました。東部環境工場の敷地にはガレキや生ごみが混じった震災ごみが山のように積まれていましたが、「一時よりは減った」との説明でした。今は分別をして可燃ごみは焼却処分をしているそうです。
戸島の仮置場も分別されないゴミがいくつもの大きな山になっていましたが、徐々に分別がすすめられており、関西の業者のマークの入ったコンテナに積込まれていました。これから三重県に運び処分すると言うことでした。
ここでもサイディングや石膏ボードなどレベル3の建材が混入していました。残念なのは、大雨避難警報が発令される状況のため、測定を実施出来なかったことです。罹災証明の発行が遅れているため、被災家屋の解体はこれから本格化します。倒壊家屋の解体・撤去作業において作業員に対する教育を十分に行い、アスベスト含有建材を適切に処分し、震災によるアスベスト被害が再び起こることが無いようにしなければいけません。
◆益城町における調査
20日は戸島の仮置き場調査のあと、近くの益城町の中心部へ向かいました。報道により被害の大きさを知っていましたが、やはり直接目の前にすると言葉がありません。この日は朝から雨が降り続き次第に降りも強くなってきたために、車の中から被災地を見て回りました。避難所になっている益城町総合体育館では、今なお多くの人が駐車場など屋外で夜を過ごしているようでした。近くの瓦礫仮置場にも向かいましたが、まだあまりガレキは集まっていませんでした。全壊家屋が多いため本格的な解体作業はこれからという様子でした。
翌21日の午後に天候が回復したため、もう一度益城町へ向かい町役場の周辺の家屋の調査を行いました。古い木造家屋が多いので吹き付け材は多くはありませんでしたが、一部の鉄骨造の建物では確認しました。詳しい調査が必要ですがアスベストが含まれている可能性が高いものです。その他スレート系の屋根材やボード類など石綿含有が疑われる建材は多くあります。これからの本格的な解体作業で適切な処理が望まれます。
◆熊本市内における調査
21日の午前中は、事前調査を取組んだ東京センターの外山さんやアスベストセンターの永倉さんの案内で、熊本市内を歩きながら被災した建物の調査を行いました。継続的に発生した地震の影響は熊本市内にも様々な傷跡を残しており、市内中心部の商店街でも改築工事が行われている店舗も多く、外壁が剥がれ落ちた建物も目立ちました。
視察調査を行っていると、天井に吹き付け材がある建物の内装工事の現場に遭遇しました。アスベスト含有の有無は直ぐには分かりませんが、作業員の方がマスクを着用せずに作業をしており、手持ちの簡易マスクを提供しアスベストの危険性について説明を行いました。また、改修を行っているのに、アスベストの有無に関する調査表示がない工事現場もありました。
熊本市内を歩くと、近くに熊本城が見えるのですが、崩れた石垣や倒れた塀から揺れの強さと被害の大きさを改めて実感しました。さらに、6月に降り続いた大雨のために、石垣の崩壊が拡大しているそうです。熊本のシンボルの一日も早い復興が望まれます。
◆緊急シンポジウム「震災とアスベスト」
21日の夜は、熊本県民交流館において、「震災とアスベスト」をテーマに緊急シンポジウムを開催しました。阪神淡路大震災と東日本大震災におけるアスベスト対策の経験を基に、今回の熊本地震における課題を考える企画です
シンポジウムは、最初に永倉冬史氏(中皮腫・じん肺・アスベストセンター)から「アスベストについて」と題して、アスベスト関連疾患や使用状況に関する解説がありました。
次に、熊本学園大学の中地重晴氏から、阪神淡路大震災と熊本地霰を経験した報告が行われました。外山尚紀氏(東京労働安全衛生センター)からは「東日本大震災でのアスベスト対策」と題して、この間の東北での調査状況と課題について報告が有りました。最後に、立命館大学の南慎二郎氏から「二つの震災から学ぶアスベスト対策」について報告があり、平時からの保護具の備蓄や行政の管理体制の必要性が訴えられました。
シンポジウムには、熊本県と熊本市の担当者の参加があり、アスベスト対策の現状について報告がありました。これから倒壊家屋の解体や撤去作業が本格化する中で、行政との連携も求められており、問題意識の共有という点でも今回のシンポジウムは有意義な取り組みとなりました。
◆さいごに
被害の大きい益城町を歩きながら倒壊した家屋を目の当たりにし、阪神淡路大震災の被災地の状況が蘇りました。道が大きくたわみ、倒壊し傾いた建物群の中に居ると平衡感覚を失う状況でした。避難所や自宅の庭にテントを張り暮らしている方々の姿も多くありました。一日も早く、以前の生活に近づくよう願うしかありません。
しかし、復興を急ぐあまりにアスベストを飛散させる事態が生じてはいけません。大震災を経験し、アスベスト被害を経験した私たちだからこそ、熊本の人たちに伝える課題があります。今回は大雨のため実施することが出来なかったアスベスト飛散調査を、改めて早急に取り組み、被災地の皆さんに伝えたいと考えています。