NPO法人 ひょうご労働安全衛生センター

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公務災害

全国労働安全センターが公務災害補償基金と交渉

2019/03/20
全国労働安全衛生センター連絡会議(以下、「全国センター」という)は、201925日に地方公務員災害補償基金(以下、「基金本部」という)との交渉を行いました。全国センターとしては2011年と2012年にも交渉を行いましたが、その後は暫く途絶えていました。

咋年秋の全国センター宇都宮総会において、神奈川労災職業病センターの川本氏より、公務災害補償を巡る間題点と基金本部との交渉の必要性が訴えられました。それを受け、全国センターとして基金本部との交渉が準備されてきたのです。


◆遅くて認定されにくい公務災害

公務員の災害補償は、民間の労災保険と違い、申請から決定が出るまでに長期間を要し、さらに認定されにくいという認識が拡がっています。民間の労災保険では認定される事例でも、公務災害では待たせるだけ待たせて公務外ということも少なくありません。

現在訴訟となっている明石市職員の腹膜中皮腫発症事案についても、1年ばく露が推認できるにも関わらず「高濃度ばく露が確認できない」として公務外の決定が出されました。一方、震災時に約1ヵ月間だけ街頭での警備作業に従事した警察官が発症した胸膜中皮腫事案については、公務上の決定が出されています。

それ以外にも不可解な判断が続いています。そもそも公務災害の根本的な問題は、労働基準監督署の担当官と違い、人事や総務にたまたま配属された職員が調査や決定に携わっている点です。そのため肝心な事実確認の調査は事務的になる傾向にあります。


◆請求書の様式に変更

今回提出した要請書の内容は、全般的事項として6項目、精神障害について2項目、石綿疾患について1項目、腰痛について1項目、そして個別事例に関して問うものでした。残念ながら交渉を通じて具体的に前進した項目は、ほぼありませんでした。ただ、新たにわかったこともあります。それは、請求書の様式に関する改正が平成2911月に行われていた点です。具体的には、請求書の「注意事項」欄に、「『所属部局の長の証明』欄の証明が困難である場合の取扱いは、地方公務員災害補償基金に相談すること。」との記載が追加されたことです。

公務災害の請求書には、請求者が「災害発生の状況」を記載する欄があります。そして「所属部局の長の証明」欄があり、そこに所長や市長が署名・捺印することとなっているのです。例えば、いじめやパワハラによって精神疾患を発症したとして請求を行おうとしても、所属長がそうした事実が確認できなかったとして請求書に証明しなければ、請求そのものをあきらめざるを得ないというケースが発生するのです。

請求書の様式の変更ではありますが、所属部局の長の証明がなくても、申請をあきらめなくても良くなったのです。民間の労災保険では当たり前の手続きですが、改正された意義は大きく、私たちも知らなかったことですが、もっと周知をしていく必要があります。


◆公開されている情報の活用を

基金本部はホームページ等を通じて徐々に情報を公開するようになっていますが、貴重な情報を職員や被災者が活用するには、まだまだ隠されている点が多くあります。

基金本部のホームページには、「基金の業務」というトップメニューが設けられています。そこには「認定・補償実績」のページがあり、年度ごとの統計データーが掲載されています。具体的に認定事例も紹介されています。また、「石綿による健康被害について」のページもあり、年度ごとの申請・認定状況や認定事例の紹介も掲載されています。他にも、過労死等防止対策推進法の制定により、毎年、過労死白書が発行されるようになり、「公務災害の補償状況」についても報告されるようになっています。その元データーについても、基金本部のホームページに掲載されており、「基金の業務」の「認定・補償実績」のページで、最下部までスクロールすると「過労死等の公務災害補償状況について」が出てきます。ただ探すのに、大変苦労する場所に置いてあります。

交渉では、「基金専門医の名簿を開示すること」を求めましたが、拒否されました。また、ホームページの「認定・補償実績」について、年度途中の状況について基金本部に間い合わせを行いましたが、「年に一度の公表なので、途中経過については答えられない」と木で鼻を括ったような回答でした。

◆日常的な検討と継続が必要

昨年の全国センター総会では、川本氏から「公務災害対策委員会」の結成についても提案がありました。公務災害基金に関する間題点は山積しています。日常的な相談事例の検討や情報交換が必要だと考えます。問題点の集約と整理を進めながら、基金本部との毎年の交渉の積み上げが必要と考えます。