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< 地震・石綿・マスク支援プロジェクト
地震・石綿・マスク支援プロジェクト
阪神・淡路大震災から30年
災害とアスベストを考えるシンポジウムを開催
2025/01/17
30年前の神戸・阪神間の被災地を思い出す。ビル・マンションが倒壊して道路に横たわり、あちこちで重機がうなりを上げ解体撤去作業が続く。もうもうとした、ほこりまみれの街を歩く人たち。作業員、会社員、商店主、主婦…、通学の子供たちもいた。そのほこりの中にアスベスト(石綿)が含まれていたのだ。私たちは石綿疾患を発症するリスクと向き合い、惨禍を後世にどう伝えていけばいいのか。阪神・淡路大震災から30年を前にした1月12日、神戸市中央区の三宮研修センターで「阪神・淡路大震災から30年-災害とアスベストを考えるシンポジウム」が開かれた。
市民や研究者らでつくる「災害とアスベスト-阪神淡路30年プロジェクト」が1年以上の準備を重ね、「第1部 検証-阪神・淡路大震災とアスベスト」「第2部 語り継ぐ震災とアスベスト」の2部構成で企画。150人で埋まった会場は熱気に包まれていた。
プロジェクト共同代表の一人、伊藤明子弁護士が「今後、20年、30年後のアスベスト問題を考えられる機会にしたい」と語り、開幕した。
◆第1部 検証-阪神・淡路大震災とアスベスト
第一部の最初に登壇したのはNPO法人ストップ・ザ・アスベスト代表の上田進久さん。「阪神・淡路大震災におけるアスベスト飛散の実態」と題し、震災アスベストの問題点として、曝露リスクが評価されていないこと、被害者の実態が認定されていないことを指摘した。
「震災時のアスベスト濃度測定値が重要だが、測定値がゆがめられている。発がん性の高い青石綿の曝露地域でも白石綿でしか調査されていない。本当のリスクが明らかにされないまま、放置されている」とし、30年前の調査が不十分だったことを厳しく追及した。また、石綿労災ばかりが注目されており、労災の対象とはなっていない人の被害が明確でないことを取り上げ、「被害者の全体像、被害規模の大きさが伝わってこない。実態調査がまとまった形で行われていない。メディアによる報道の仕方に問題がないのか問いたい」と問題提起。上田さんが所属する兵庫県保険医協会が実施したアンケート結果を紹介。医療関係者の約4割が今後、石綿被害者が増加することを予想していた。
続いて登壇した立命館大学政策科学部の南慎二郎さんは「被災地で活動するボランティアとアスベスト」と題し、ボランティアに実施したアンケートの概要を報告した。アンケートは2024年7月~12月末にオンラインで受け付け、活動時のがれき処理作業の有無、がれき置き場や解体作業現場近くでの活動経験などについて聞き、105人から回答を得た。ボランティア経験の内訳は、「阪神・淡路」34%、「東日本大震災」43%、「能登半島地震」39%(複数回答あり)だった。
この中でがれき処理は31%に取り扱い経験があり、がれき仮置き場や解体工事近くでの活動も41%あり、曝露リスクがあることを示唆。しかしながら、活動参加時の装備に防じんマスクを持参していたかどうかを聞くと、「常に持参」は19%にすぎず、「持参したことなし」は58%に達していた。将来の健康不安については、「強く不安」「少し不安」を合わせ44%だった。
南さんは、ボランティアが万一、石綿疾病を発症したときに備え、ボランティア従事者についての記録を公的・一元的にデータベース化し、長期的に保存する制度の創設を求めた。
一部の締めくくりは、熊本学園大学社会福祉学部教授の中地重晴さん。中地さんは、阪神・淡路が発生した直後、神戸の被災地に入り、ビルなどの解体現場を調査した。鉄骨に吹き付けられた、毒性の強い青石綿を随所で確認したほか、解体現場付近で大気1リットル中石綿繊維を160~250本確認するなど、杜撰な解体工事を目の当たりにした。中地さんは、写真で震災直後の様子を見せ、行政の動きも解説し、「健康被害はこれから」と指摘した。
中地さんは能登半島地震の調査も続けており、公費解体の現状や災害廃棄物の処理状況を解説。能登の被災建築物の解体は今後加速化するとみられており、「アスベスト飛散をどう減らしていくのか、業者任せにせず、行政の関与が必要」と訴えた。
◆第2部 語り継ぐ震災とアスベスト
第二部は、大阪市立大学名誉教授の宮本憲一さんが「終わりなきアスベスト災害 阪神・淡路大震災の教訓」と題してスピーチ。2005年、尼崎市にある機械メーカー「クボタ」の元石綿工場周辺で市民の健康被害が相次いで発覚したクボタ・ショックに言及し、「それ以降石綿対策が進められたが、震災対策に改善はない。建材を中心に石綿製品が使われており、今世紀の終わりまで被害が続くであろう」と警鐘を鳴らした。
かつて、石綿による健康被害に詳しい米国のセリコフ教授から「日本でも石綿で毎年数千人の死亡者が出ているのではないか。なぜ、対策が進まないのか、調べて活動してほしい」と言われたエピソードを明かした。
宮本さんは「史上最大の社会的災害と言われた石綿被害対策がなぜ進まなかったのか」と問いかけ、「石綿被害の市民教育が不十分で自覚されていない。…公衆衛生学の研究は戦前から石綿被害が明らかになっていたのに、建築基準法では石綿の使用を認め、使用することが奨励されていた」などと話した。
また、石綿対策の行政施策、労災の認定状況、石綿疾病である中皮腫の死亡や救済のデータを示しながら、問題点を浮き彫りに。石綿の使用が禁止されているが、石綿含有建材が多く残っているため、「地方公共団体は災害対策を総点検し、対処療法になるが、石綿建材が含まれていると推定できる建築物などの配置図を災害対策としてつくるべき」とし、「石綿の総合対策の調査研究を進めなければならない」と呼びかけた。
続いて神戸大学大学院人文学研究科准教授の原口剛さんが「阪神・淡路大震災時のガレキ処理と労働者」をテーマに発表した。学生とともに震災のがれき処理を担った当時の労働者から聞き取り調査。当時者から学び、当時の再構成を試み、具体的に自分たちの課題とすることをテーマにし、がれきの発生、どういうふうに流通したかを追った。
震災後、神戸ポートアイランドに震災廃棄物の仮置き場が設けられたほか、仮設住宅も建設されており、原口さんと学生らは労働者、住民らから丹念に話を聞きとって、その一部を報告。「ポーアイのがれき処理場は、全体がほこりに覆われた状態…キリル炉から50メートル離れた場所に事務所があったが、戸は閉まっているけども、昼に食堂行って、テーブルの上に座ったら、真っ白。ほこりで」といった労働者の生々しい言葉を紹介。また、仮設住宅は焼却炉のすぐそばにあり、「どんどん煙は上がるし、がれきは運ばれて来て。そんな目の前に、高齢者の避難先があった。どこもいくことがない、最後の、避難者ですからね、あの仮説の人たちは」といった、悲壮感漂う住民の言葉も報告した。原口さんは自身の研究テーマである大阪・釜ヶ崎からの視点でも発言した。
会場にはアスベスト疾患の患者も参加しており、中皮腫で闘病中の尾上一郎さん(西宮市)が発言。尾上さんは内装工事に携わったほか、阪神・淡路では被災建物の調査に従事したという。中皮腫と診断されたときは尾上さん自身も家族も大きなショックを受け、奈落の底だったという。
その後、化学療法に取り組んだが、倦怠感、発熱…が続き、治療も甲斐もなく、腫瘍は小さくならなかった。新薬で、肺の腫瘍は小さくなったが、副作用にも苦しめられた生活を語った。
「自分が発注していた建材が、アスベスト含有だと知ったのは数年前。鉄骨の吹き付け材が悪いということは、うすうす聞かされていたが、建材がそんなに悪いとは知らなかった。メーカーの担当者に聞いていたことがあるが、『建材は白石綿なので問題ないです』」と言われていたが、それは人を死においやる建材だった」と悔しさをにじませた。
震災時についても「神戸市はほこりがもうもうとしていた。ほこりの中を作業員ががれきの処理をしていた。その横を普通の通勤・通学の人たちがいた」と振り返り、「地震や災害のとき、アスベストが問題となる。過去のことではなく、進行中のこと。私や家族の苦しみは他の人にしてほしくない、対策を徹底してほしい」と強く訴えていた。
原口さんとともにアスベスト調査に取り組んだ神戸大学の学生、白石英里香さんと末廣晃さんもマイクを握った。
白石さんは「阪神・淡路よりも後に生まれた。患者さんらの話を聞く中で意識が変わっていった。私たちにこの問題を継承してほしいと言われ、主体的に伝えていかなければならない世代だと感じた。さまざまな知識を得て、大学の内外に活動を広げたい。」と語り、末廣さんも「過去の問題ではなく、アスベストは今も建物の中に眠っている。今の経済発展の裏側にある、この問題を見て見ぬふりをすることはできないと感じた。きょうの話を聞いて危機感をもってくださったみなさん、一緒に取り組みましょう」と呼びかけた。
◆アスベスト飛散による健康被害を抑制するために
最後に阪神淡路30年プロジェクトの永倉冬史さん(中皮腫・じん肺・アスベストセンター)が声明案「災害被災地の飛散アスベストによる健康被害を抑止するために」を読み上げ、大きな拍手で会場の賛同を得た。
声明は次のような内容を国、兵庫県、地方自治体に求めており、「今後、関係機関に届ける」ことを明らかにした。
■国は災害時のアスベスト飛散の危険性、対策の必要性を周知し、国民自らの命・健康を守る「市民力」の向上を図る
■国は「阪神・淡路大震災によるアスベストばく露」を考慮した労災・公務災害認定に取り組む
■国は石綿健康被害救済制度に「災害時のばく露」を位置付け、アスベスト被害者の救済・補償制度の拡充を行う
■国は平時の備えとしてアスベスト建材の安全な除去の促進に取り組む
■国は建物解体時における労働者・周辺ばく露の防止のための公的措置の徹底に取り組む
■国はアスベスト廃棄に伴う中間・最終処分処理段階での労働者・周辺ばく露の防止のための公的措置の徹底に取り組む
■国は災害時のアスベスト飛散と健康被害についての研究促進に取り組む
■国及び自治体は阪神・淡路大震災当時、解体作業等の復興事業に携わった労働者・公務員・ボランティアを対象とした健康モニタリング調査を実施する
■国及び自治体は行政等の防災計画に「アスベスト対策」を明記し、巨大地震に備え、避難所・防災資機材倉庫での防じんマスクの備蓄を行う
■国及び自治体は平時の備えとしてアスベスト含有建材の調査・公表に取り組む
■兵庫県は阪神・淡路大震災当時の被災地に居住歴があり、悪性中皮種等のアスベスト関連疾患を発症した人の追跡調査を実施する
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プロジェクト共同代表の一人、伊藤明子弁護士が「今後、20年、30年後のアスベスト問題を考えられる機会にしたい」と語り、開幕した。
◆第1部 検証-阪神・淡路大震災とアスベスト
第一部の最初に登壇したのはNPO法人ストップ・ザ・アスベスト代表の上田進久さん。「阪神・淡路大震災におけるアスベスト飛散の実態」と題し、震災アスベストの問題点として、曝露リスクが評価されていないこと、被害者の実態が認定されていないことを指摘した。
「震災時のアスベスト濃度測定値が重要だが、測定値がゆがめられている。発がん性の高い青石綿の曝露地域でも白石綿でしか調査されていない。本当のリスクが明らかにされないまま、放置されている」とし、30年前の調査が不十分だったことを厳しく追及した。また、石綿労災ばかりが注目されており、労災の対象とはなっていない人の被害が明確でないことを取り上げ、「被害者の全体像、被害規模の大きさが伝わってこない。実態調査がまとまった形で行われていない。メディアによる報道の仕方に問題がないのか問いたい」と問題提起。上田さんが所属する兵庫県保険医協会が実施したアンケート結果を紹介。医療関係者の約4割が今後、石綿被害者が増加することを予想していた。
続いて登壇した立命館大学政策科学部の南慎二郎さんは「被災地で活動するボランティアとアスベスト」と題し、ボランティアに実施したアンケートの概要を報告した。アンケートは2024年7月~12月末にオンラインで受け付け、活動時のがれき処理作業の有無、がれき置き場や解体作業現場近くでの活動経験などについて聞き、105人から回答を得た。ボランティア経験の内訳は、「阪神・淡路」34%、「東日本大震災」43%、「能登半島地震」39%(複数回答あり)だった。
この中でがれき処理は31%に取り扱い経験があり、がれき仮置き場や解体工事近くでの活動も41%あり、曝露リスクがあることを示唆。しかしながら、活動参加時の装備に防じんマスクを持参していたかどうかを聞くと、「常に持参」は19%にすぎず、「持参したことなし」は58%に達していた。将来の健康不安については、「強く不安」「少し不安」を合わせ44%だった。
南さんは、ボランティアが万一、石綿疾病を発症したときに備え、ボランティア従事者についての記録を公的・一元的にデータベース化し、長期的に保存する制度の創設を求めた。
一部の締めくくりは、熊本学園大学社会福祉学部教授の中地重晴さん。中地さんは、阪神・淡路が発生した直後、神戸の被災地に入り、ビルなどの解体現場を調査した。鉄骨に吹き付けられた、毒性の強い青石綿を随所で確認したほか、解体現場付近で大気1リットル中石綿繊維を160~250本確認するなど、杜撰な解体工事を目の当たりにした。中地さんは、写真で震災直後の様子を見せ、行政の動きも解説し、「健康被害はこれから」と指摘した。
中地さんは能登半島地震の調査も続けており、公費解体の現状や災害廃棄物の処理状況を解説。能登の被災建築物の解体は今後加速化するとみられており、「アスベスト飛散をどう減らしていくのか、業者任せにせず、行政の関与が必要」と訴えた。
◆第2部 語り継ぐ震災とアスベスト
第二部は、大阪市立大学名誉教授の宮本憲一さんが「終わりなきアスベスト災害 阪神・淡路大震災の教訓」と題してスピーチ。2005年、尼崎市にある機械メーカー「クボタ」の元石綿工場周辺で市民の健康被害が相次いで発覚したクボタ・ショックに言及し、「それ以降石綿対策が進められたが、震災対策に改善はない。建材を中心に石綿製品が使われており、今世紀の終わりまで被害が続くであろう」と警鐘を鳴らした。
かつて、石綿による健康被害に詳しい米国のセリコフ教授から「日本でも石綿で毎年数千人の死亡者が出ているのではないか。なぜ、対策が進まないのか、調べて活動してほしい」と言われたエピソードを明かした。
宮本さんは「史上最大の社会的災害と言われた石綿被害対策がなぜ進まなかったのか」と問いかけ、「石綿被害の市民教育が不十分で自覚されていない。…公衆衛生学の研究は戦前から石綿被害が明らかになっていたのに、建築基準法では石綿の使用を認め、使用することが奨励されていた」などと話した。
また、石綿対策の行政施策、労災の認定状況、石綿疾病である中皮腫の死亡や救済のデータを示しながら、問題点を浮き彫りに。石綿の使用が禁止されているが、石綿含有建材が多く残っているため、「地方公共団体は災害対策を総点検し、対処療法になるが、石綿建材が含まれていると推定できる建築物などの配置図を災害対策としてつくるべき」とし、「石綿の総合対策の調査研究を進めなければならない」と呼びかけた。
続いて神戸大学大学院人文学研究科准教授の原口剛さんが「阪神・淡路大震災時のガレキ処理と労働者」をテーマに発表した。学生とともに震災のがれき処理を担った当時の労働者から聞き取り調査。当時者から学び、当時の再構成を試み、具体的に自分たちの課題とすることをテーマにし、がれきの発生、どういうふうに流通したかを追った。
震災後、神戸ポートアイランドに震災廃棄物の仮置き場が設けられたほか、仮設住宅も建設されており、原口さんと学生らは労働者、住民らから丹念に話を聞きとって、その一部を報告。「ポーアイのがれき処理場は、全体がほこりに覆われた状態…キリル炉から50メートル離れた場所に事務所があったが、戸は閉まっているけども、昼に食堂行って、テーブルの上に座ったら、真っ白。ほこりで」といった労働者の生々しい言葉を紹介。また、仮設住宅は焼却炉のすぐそばにあり、「どんどん煙は上がるし、がれきは運ばれて来て。そんな目の前に、高齢者の避難先があった。どこもいくことがない、最後の、避難者ですからね、あの仮説の人たちは」といった、悲壮感漂う住民の言葉も報告した。原口さんは自身の研究テーマである大阪・釜ヶ崎からの視点でも発言した。
会場にはアスベスト疾患の患者も参加しており、中皮腫で闘病中の尾上一郎さん(西宮市)が発言。尾上さんは内装工事に携わったほか、阪神・淡路では被災建物の調査に従事したという。中皮腫と診断されたときは尾上さん自身も家族も大きなショックを受け、奈落の底だったという。
その後、化学療法に取り組んだが、倦怠感、発熱…が続き、治療も甲斐もなく、腫瘍は小さくならなかった。新薬で、肺の腫瘍は小さくなったが、副作用にも苦しめられた生活を語った。
「自分が発注していた建材が、アスベスト含有だと知ったのは数年前。鉄骨の吹き付け材が悪いということは、うすうす聞かされていたが、建材がそんなに悪いとは知らなかった。メーカーの担当者に聞いていたことがあるが、『建材は白石綿なので問題ないです』」と言われていたが、それは人を死においやる建材だった」と悔しさをにじませた。
震災時についても「神戸市はほこりがもうもうとしていた。ほこりの中を作業員ががれきの処理をしていた。その横を普通の通勤・通学の人たちがいた」と振り返り、「地震や災害のとき、アスベストが問題となる。過去のことではなく、進行中のこと。私や家族の苦しみは他の人にしてほしくない、対策を徹底してほしい」と強く訴えていた。
原口さんとともにアスベスト調査に取り組んだ神戸大学の学生、白石英里香さんと末廣晃さんもマイクを握った。
白石さんは「阪神・淡路よりも後に生まれた。患者さんらの話を聞く中で意識が変わっていった。私たちにこの問題を継承してほしいと言われ、主体的に伝えていかなければならない世代だと感じた。さまざまな知識を得て、大学の内外に活動を広げたい。」と語り、末廣さんも「過去の問題ではなく、アスベストは今も建物の中に眠っている。今の経済発展の裏側にある、この問題を見て見ぬふりをすることはできないと感じた。きょうの話を聞いて危機感をもってくださったみなさん、一緒に取り組みましょう」と呼びかけた。
◆アスベスト飛散による健康被害を抑制するために
最後に阪神淡路30年プロジェクトの永倉冬史さん(中皮腫・じん肺・アスベストセンター)が声明案「災害被災地の飛散アスベストによる健康被害を抑止するために」を読み上げ、大きな拍手で会場の賛同を得た。
声明は次のような内容を国、兵庫県、地方自治体に求めており、「今後、関係機関に届ける」ことを明らかにした。
■国は災害時のアスベスト飛散の危険性、対策の必要性を周知し、国民自らの命・健康を守る「市民力」の向上を図る
■国は「阪神・淡路大震災によるアスベストばく露」を考慮した労災・公務災害認定に取り組む
■国は石綿健康被害救済制度に「災害時のばく露」を位置付け、アスベスト被害者の救済・補償制度の拡充を行う
■国は平時の備えとしてアスベスト建材の安全な除去の促進に取り組む
■国は建物解体時における労働者・周辺ばく露の防止のための公的措置の徹底に取り組む
■国はアスベスト廃棄に伴う中間・最終処分処理段階での労働者・周辺ばく露の防止のための公的措置の徹底に取り組む
■国は災害時のアスベスト飛散と健康被害についての研究促進に取り組む
■国及び自治体は阪神・淡路大震災当時、解体作業等の復興事業に携わった労働者・公務員・ボランティアを対象とした健康モニタリング調査を実施する
■国及び自治体は行政等の防災計画に「アスベスト対策」を明記し、巨大地震に備え、避難所・防災資機材倉庫での防じんマスクの備蓄を行う
■国及び自治体は平時の備えとしてアスベスト含有建材の調査・公表に取り組む
■兵庫県は阪神・淡路大震災当時の被災地に居住歴があり、悪性中皮種等のアスベスト関連疾患を発症した人の追跡調査を実施する