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新型コロナウイルス問題で兵庫労働局と交渉

2020/08/06
◆新型コロナウイルス問題に絞った交渉

ひょうご地域労働運動連絡会、ひょうご労働法律センター、ひょうごユニオン、ひょうご労働安全衛生センターの4団体は、8月6日に兵庫労働局との交渉を実施した。
例年、兵庫労働局との交渉を行っているが、本年は新型コロナウイルス感染症拡大に伴う休業要請、外出・移動自粛要請等、全国の労働現場に大きな影響を与えており、新型コロナウイルス問題に絞った11項目について交渉を行った。

今回は、安全衛生面の「新型コロナウイルスによるハラスメント問題」、「新型コロナウイルス感染症による労災補償問題」について意見交換をおこなった内容を報告する。


◆新型コロナウイルスによるハラスメント

新型コロナウイルス感染症の流行が継続しており、人々の不安は大きい。従来通りに業務も生活も行えないことからストレスが蓄積され、職場においてパワーハラスメントが起こりやすい状況にある。また、今年の6月1日からは、いわゆる「パワハラ防止法」が施行され、大企業において防止措置が義務付けられたことから、「企業に対して、パワーハラスメント防止を徹底するよう指導すること」と要望した。

労働局回答:「大企業には企業指導を、中小企業は努力義務であるものの取り組みは求められると伝え問題解決に取り組んでいる。その他、セミナーの実施、広報誌への掲載依頼、防止カードの配布、指導員による企業訪問においても周知している」

この回答に対して、新型コロナウイルスの感染等に関連した具体的な相談事例を紹介しながら、「一般的なハラスメント防止の周知はもちろんのこと、新型コロナウイルス感染症に関して個の侵害が横行しており、違った周知や企業へのアプローチが必要になってくる。その際の周知にはどのように取り組むのか」と質問した。

労働局回答:「労働局や監督署に新型コロナウイルスに関する相談はあるが、労働局が介入する前に個別で対応したい相談者が多く、企業指導に至っているケースはない。企業訪問を行う中で新型コロナウイルスに関するハラスメントの周知も併せて行っていく」


◆新型コロナウイルスの労災請求

厚生労働省が公表する「新型コロナウイルス感染症に関する労災請求件数等」では、感染者の総数に対し請求件数、支給決定件数はわずかである。また、厚生労働省幹部が、労災認定について「不特定多数と接する仕事の人が新型コロナウイルスに感染した際は、具体的な感染経路がはっきりと分からなくても、柔軟に労働災害と認定していく」と発言したと報じられている。

このことから、「新型コロナウイルス感染症による労災請求について、県内の労働基準監督署が受理した請求件数及び支給決定件数について明らかにすること」「医療職等以外の職場においても、労災請求事案については、迅速に幅広く補償すること」と要望した。

労働局回答:「監督署が受理した請求件数と決定件数については、各労働局によって多寡があり、請求の少ない労働局においては、個人が特定される恐れがあることから個別の労働局の件数については公表できない。医療等以外の職場でも迅速に幅広く補償する。調査により感染経路が特定されなくても業務に起因したと認められる場合には、労災保険給付の対象として処理している」

この回答に対し、労災件数公表によって更なる労災申請につながるのではないかと訴えたが、兵庫労働局としては、「本省から各労働局に公表しないという指示があり、現時点では要望として本省に報告することしかできない」という回答であった。

そこで、厚生労働省が公開している労災認定事例は少なく、請求件数・決定件数・感染経路について、本省で全件の事例を公表するよう強く要望した。


◆新型コロナに関する死傷病報告

労働災害が発生した場合、遅滞なく労働基準監督署に死傷病報告書を提出する必要がある。感染者の労災補償に繋げるためにも、マスコミ等を通じ、業務上の感染が疑われる報道がされた事業場に対し、死傷病報告の提出や労災申請の勧奨を積極的に行う必要がある。

このことから「新型コロナウイルスに関して、県内の事業場から労働者死傷病報告が提出されている件数また、そのうち労災請求がなされている件数を明らかにすること」と要望した。

労働局回答:「労働者死傷病報告においても、個人や事業場の特定の恐れがあり公表していない(当日、担当の健康課は出席しておらず代理回答)」

この回答に対し、事業所が死傷病報告を提出しなければ労災隠しが疑われるため、どの程度出ているか確認する必要がある。感染症が発生した事業所名についてはマスコミも報道しており、事業所に対して労災になる可能性はないかの説明と、死傷病報告を出す必要がある旨の問い合わせを行って欲しいと要望した。

この件については、後日回答があり「事業所に対し確認を行っている」とのことであった。


◆まとめ

今回の交渉において、要望に対する踏み込んだ回答は残念ながら得られなかった。新型コロナウイルス感染症による労災請求は徐々に増えていると思うが、圧倒的に少なく進んでいない。今回、労災請求件数、支給決定件数、死傷病報告提出件数ともに公表していないという回答であったが、請求件数、事業所、感染経路も含め類似事例等の内容が公表されることによって、新たな労災請求を促進させる目的もあると感じている。
今回の回答内容を検討し、今後も継続的な交渉を行っていきたい。

 

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