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中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会

中皮腫の労災不支給続出問題 厚生労働大臣へ申し入れ

2013/09/20
2005年のクボタショック後、当時の尾辻厚生労働大臣は、アスベスト被害者の救済に向け迅速処理通達を発出し、新法制定に動いた。長期の潜伏期間の後に発症するという、石綿関連疾患の特異性を認識した対応であった。だが最近、「石綿ばく露作業歴が不明である」との理由で不支給となる事案が、地域センターが支援する事案のなかで増えており、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会として厚生労働大臣あてに要請を行った。


◆石綿被災者の救済に向けた尾辻大臣答弁

2005年のクボタショック後の国会審議において、当時の尾辻厚生労働大臣は、「長い時間が掛かっておるからその証明に、ばく露歴の証明に困難なことが多いということは十分に配慮して今後の対応はしなきゃならぬ」、「今まではアスベストにばく露されたということがいわば証明されないと労災認定しないということにいたしておりましたけれど、もうそういう作業に従事しておられたということでもってこれは認定の条件にしようというふうにいたしました。」との答弁を行った。

そして、クボタショック後、全国の労働基準監督署の監督官は、多くの相談・申請に対応しながらアスベスト被害者を救済するため奮闘したのであった。そのことは、クボタショックを境に、石綿関連疾患の労災認定者数が飛躍的増加している事実からも明らかである。だが、最近の労基署の現場では、対応がどうも違ってきている。


◆相次ぐ不支給決定

今回の申入れを行うきっかけとなった案件は、以下の4件である。

1件目は、大阪中央署のTさんの案件。Tさんは、1年余りビルの解体廃材を運搬する作業に従事したことにより中皮腫を発症したとして、労災を申請。雇用主はそうした作業に従事させていないと申し立てたため、大阪中央署は、石綿ばく露に疑義が有るとして本省協議に付した事案である。クボタショック後に発出された、いわゆる迅速処理通達に則れば、解体業周辺における作業ということが推認できる。しかし、大阪中央署は、判断を行わず本省協議としたのである。

2件目は、北大阪労基署のNさんの案件。Nさんは、呉造船所の日本アスベスト内のM組において、保温・断熱作業に従事した。Nさんは肺がんを発症し、労災申請をおこなったのであるが、明らかな多数の胸膜プラークがあり健康管理手帳も取得しているにもかかわらず、「石綿ばく露歴が確認できない」との理由で不支給と決定されたのである。

3件目は、長崎労基署のTさんの案件。三菱重工長崎造船所の孫請けであるK親方の下で、約2年間船内作業に従事したTさん。悪性胸膜中皮腫を発症し、労災申請を行ったのであるが、K親方の存在を確認することができないことと、請求人以外に石綿ばく露作業を裏付ける客観的根拠がないとの理由で不支給と決定されたのである。この案件は、審査請求中である。

4件目は、大阪・淀川署のYさんの案件。Yさんは、F工業で車のフロントガラスに使用するため、板ガラスを電気炉で曲げ加工する作業に約1年間従事。その後は営業の仕事に代わった。悪性胸膜中皮腫を発症したYさんは労災申請を行ったのであるが、会社関係者が「電気炉やその周辺に石綿は使用していなかった」と申し立てたため、「石綿ばく露作業に従事したとう事実は認められない」との理由で不支給となったのである。
この案件も審査請求中である。


◆「ばく露認定に関する評価の違い」?

参議院の田村智子議員に協力していただき、92日に参議院議員会館にて申し入れと意見交換を行った。出席者は、患者と家族の会の古川会長と斎藤さん、関西センターの片岡さんと愛媛センターの白石さん、そしてひょうごセンター西山の5名。厚労省からは、職業病認定対策室から3名が出席。

国側からは、「アスベスト問題については重く考えている。尾辻大臣の国会答弁も引き継いでいる」との見解が示された。その後、申し入れを行うきっかけとなった4件の案件について、順番に説明を行い国側の見解を求めたが、「個別案件に関する見解は…」と具体的な回答は示されなかったが、「ばく露認定に関する評価の違い」という言葉が何度も繰り返された。そして、「審査請求となっている2件については、審査官によく資料を見るようにと伝えることはできる。」との回答があった。

最後に、国側から「適正にやります」との回答があった。ただ、行政としての「適正」という表現と、尾辻元厚労大臣の答弁とは、どうもニュアンスが違う。被災者を救済するということを第一に考えることが行政として問われていると思う。今回の4件以外にも、中皮腫の不支給案件に関する相談が続いている。労災認定に向け、さらに全力をあげる決意である。

 

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